さぐりがき

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正義の反対は別の正義なのは分かったからとりあえず殴り合おうか。『テイルズ オブ ヴェスペリア REMASTER』レビュー

今回はテイルズオブヴェスペリアをレビュー。販売はバンダイナムコでジャンル名は「正義」を貫き通すRPG元360民だけどオリジナル版は未プレイ。難易度ノーマルでプレイ時間は51時間15分。筆者のテイルズオブ歴はGCシンフォニア、ハーツR、ベルセリアくらいだけど新作控えてるのでプレイ。

戦闘

本作は◯ボタンとスティックの組み合わせで通常攻撃の撃ち分けが可能だが、どのキャラも全体的に動きがモッサリしている。主人公ユーリの◯ボタン連打はトントントンといった一拍ずつのテンポ感で発生が遅めで爽快感に欠け、慣れてくればこんなものかと納得できるものの少なくとも動かして楽しいとは呼べないレベル。◯ボタン連打で一途に同じモーションで剣を振り降ろし続けるのも昨今のゲームに慣れているとちゃちな印象を受ける。まあこの点は10年以上前のゲームなのでしょうがないのだが。

しかし攻撃を食らった際の硬直が長い、連続攻撃を食らっている最中はガードで割り込めないので被弾しっぱなしという二点は特に遊びづらさを覚えた。結果として手数で押すより律儀にガードを駆使するターン制のような戦い方を要求されるが、基本ザコ戦は乱戦なので一方的なタコ殴りを受けることもしばしば。コンボを出した後すぐガードしても出が幾分遅いせいか確定反撃めいた攻撃を食らうことも多く、被弾して攻撃モーションそのものを潰され相手のターンが長く続くのはゲンナリ。3Dマップを真横から見たシステム上敵が視界の邪魔になる、時として軸ズレを起こすなど痒いところに手が届かない部分も多く、特に起き上がり中の敵に無敵時間表示が無いためどう見たって攻撃当たってるはずなのに空振るのはなんとかしてほしかった。敵が起き上がるのを待たなきゃいけないのは戦闘のテンポを害している。

総じてプレイヤーの反応にレスポンスが追いついてない印象。もっとキビキビ動いてほしかった。

武器熟練度を上げスキルを獲得することで戦術の幅が広がるが元の動きの悪さを払拭する程ではない。元々の性能の低さも相まって徐々に強くなるというより成長してようやく人並みな動きが可能になる印象だ。というか一周クリアしただけではまだまだ未修得のスキルが多く発展途上の性能でしかなく、このようなスキルを全取得してようやくスタートラインに立てる調整はやめてほしかった。秘奥義ですらスキルセットしないと使えないのは流石にやりすぎだろう。オーバーリミッツを解放すればTP消費無しでガンガン攻撃を叩き込めるのはある程度爽快感があるものの、それ前提の調整で普段の動きを鈍くしたのでは本末転倒だ。

そもそも武器からスキル修得するシステム自体、スキル修得済みの武器しか所持してないと熟練度を損した気分になるプレイヤー心理に考えが及んでいないので困りもの。普通に取得したポイントを割り振るだけではダメだったのか。メインシナリオ攻略中に気に入った仲間キャラの操作を極めようと思ってもパーティ離脱が激しいので結局ユーリばかり使うことになりがちなのも雑な設計だ。せっかくのリマスター版なのだから合成用の素材も楽に購入くらい出来てもよかったかもしれない。

戦闘の難易度は特にボス戦が難しくチュートリアルですら何度も全滅したほどだ。しかし緻密な設計の上での難易度の高さではなく前述した操作性の悪さに起因する難易度の高さなので少々理不尽めいており、仲間AIは割とアホでライフボトルより術を優先したり勝手に割り込んでコンボを途切れさせたりと頼りない。物語後半ともなれば雑な範囲攻撃と体力回復を繰り出すボス相手にプレイヤーはアイテム介護に勤しむ羽目になるので地味にアクションに集中出来ず単純に面倒。この難易度ならせめてボス戦にリトライ機能くらい欲しかった。一対一のイベント戦になるとフリーランとアイテムを駆使した鬼ごっこが延々続くのはどこかアホっぽい。

これは本作全体の印象の話になるが、ボタン連打で勝ててしまう単調な雑魚戦にグッと歯応えのあるボス戦という一連のサイクルを割と頻繁に繰り返すことになるためゲームプレイの波が単調な印象を受けた。サブイベントは豊富だが進行の自由度は低く、目立ったレベル上げの狩場も無ければ装備して如実に強さを実感できる武器も無いのでゲームそのものが凄い淡白。なので新しいダンジョンに入るたび「また単調な雑魚と手強いボスの繰り返しかぁ〜」とやや閉口した。個人的にはたまにめちゃくちゃ強いボスが出るくらいの方が返って印象も強くなるしRPGとしてメリハリ効いてて楽しいと思う派なので、もっと歪でいいから抑揚がほしかった。

二周目からが本番といえば聞こえはいいが、硬直短縮やモーションキャンセルといったアクションの手触りに直結する多くのものをRPGの成長要素に組み込んだのは明らかに締め付けが強すぎる。おそらくやり込めば新たな景色が広がっているのだろうがそこまでやる気もないし、今時稼ぎプレイを繰り返す作業はしんどい。多分ジュディスの空中コンボとか極めれば楽しいのかもと想像しつつも実際に遊ぼうと思い立つほどでは無かった。

最後になったがシンボルエンカウント制で戦闘に入る際4秒弱のロードが入るのはテンポが悪い。

シナリオ

主人公である元騎士のユーリは忍び込んだ城の中でエステルと出会い世界各地を探訪し帝国の腐敗を目の当たりにするなかで、自らの正義と向き合い世界の核心に迫っていく……というのが本作のシナリオ。

結論からいえばテイルズだな〜という感想。

全然シリーズ遊んだことないのにテイルズだ〜と感じるのは我ながら矛盾してるが率直にそう感じた。ゲーム開始3時間足らずで5人目が仲間になるのはテンポが良く、ダンジョンもそこまで広くないので悩むことなく進める。各キャラの目的がバラバラで遠い距離感だったのが長く旅を続けるうち仲が深まっていく描写は丁寧だ。

しかし展開の早さゆえか長らく盛り上がりに欠けたまま低空飛行で物語は進行し、序盤から諸々忙しないシーンの連続ではあるもののどこか淡々とした乗り切れないやりとりが続く。割とフライング気味に物語が進むのでどこか置いてけぼりで、エステルが型に嵌った天然お嬢様で序盤は魅力を感じづらいのも理由かもしれない。トゥーン調のグラフィックも見栄えこそ良いがキャラの心情の機微が十分表現されてるとは言い難い。

中盤以降もエステルの自分探しというわりかしフワフワした薄い動機で旅を続けるのはいまいち腑に落ちない。いきなり出てきたよく分からん巨大生物に世界の毒と呼ばれたことをそのまま鵜呑みにして旅するのは動機としてはちと弱い。そんな訳分からん発言鵜呑みにすんなよと思ってしまう筆者が狭量なのか?まぁJPPGはこんなもんだしょと軽く捉えられるレベルの話ではあるのだが、もう少し芯食った動機を用意してほしかったかも。

結局シナリオが面白いと感じるようになったのは物語後半。達観したユーリに代わってエステルやカロルといったキャラの成長が感じられるのは純粋に応援したくなるし、ジュディに対して本音を剥き出しにしたリタの叫びはしっかりとした信頼関係が築けていると分かるのでテンションが上がる。ここら辺の描写はプレイ開始20時間過ぎてからなのでもう少し早くからこの手の盛り上がりが欲しかったと思う。

ただ2回も3回も短期間で裏切りの展開が続くのは流石にやり過ぎ。全然過去作をプレイしたことない筆者でもテイルズには「政治・差別・裏切り」くらいのイメージを持ってるので興醒めすることは無くなるほどなーと相槌を打つほどの感想に留まったが、こーゆーのは決め打ちだから面白いのであって乱発されても微妙だし、脇役レベルと思ってたキャラが急にしゃしゃり出てきても正直反応に困る。こういう裏切り連発ってお約束とか予定調和通り越してギャグに両足突っ込んでると思うんだけどシリーズファンの人はどう思ってるのか知りたい。

他にも台詞で話し言葉を多用するのは親近感が湧くものの、人名地名といった固有名詞を一切省略せず喋るのは違和感を覚えるし、そんな名前の奴いたっけと疑問符が浮かぶことも多く自分でも驚くほど頭に入ってこなかった。ブラスティアやらエンテレケイアやらの造語は多分100回以上耳にタコが出来るほど聞いたと思う。指示語を使わないせいで逆に理解が難しくなってるのはもう少しなんとかならなかったのか。肝心な場面で吹き出しが邪魔だったり会話バックログが無かったり雑な面もチラホラ。スキットで台詞送りが出来ないのでいちいち手を止めざるを得ないのはイカンでしょう。

キャラクター

ゲーム開始前にダークヒーローめいた第一印象だった主人公ユーリは蓋を開ければわりかし気の良いあんちゃんで好感度が高い。

確かに「ギルドの掟を大事にする割に身内に甘くない?」とか「ラスボスを阻止するためとはいえ全世界の生活基盤をぶっ壊すのは独善的すぎない?」とか色々思うところはあるのだが、だってJPPGだし主人公だしで割り切れる範囲なので不快感はなかった。ゲーム序盤の耳が痛くなるほど皮肉屋な感じも思い返せば懐かしい。

何かにつけ上から目線の説教が多くてめんどくさいヤローだな〜とは思うんだけど、基本的には気のいいあんちゃん。

エステルは天然だが芯の強い王道ヒロインといった素直な印象。まぁメインヒロインてのはクセのなさが災いして魅力を感じづらいものだしユーリとの対比で清廉キャラになるのも分かるのだが、もう少し人間臭い人となりが見えてもバチは当たらなかったろう。ユーリが決断する強さを持った人ならエステルは悩み続ける強さを持った人なので順当な成長を遂げたのはしっかりと伝わるのだが。余談だが一昨日来やがれって慣用句を知らないのは天然通り越して馬鹿だと思う。

リタはシンプルツンデレだが出会った際の活動的な外ハネヘアーなのにダウナー科学者という意外性ある第一印象も忘れがたい。自他ともに認める天才でチート級の超有能だがご都合主義ぽさは感じなかった。おそらく常に相対する危機と真剣に向き合ってた印象が強いおかげかもしれない。まあ細かいこと抜きにして可愛けりゃなんでもアリだしね。あぐら掻いて考え込んでるモーション結構好き。

お色気枠でクールビューティーなジュディスは期待通り。序盤のユーリとのカマの掛け合いみたいな応酬が結構よかった。でも10代は嘘。絶対嘘。ミステリアスお姉さんが一番輝いてるのってミステリアスである序盤だし正体が明らかになるとやや影が薄くなったのはしょうがないか。リタと意外な関係だったのは驚いたけど。イベントで見せた魚眼めいたカメラワークとか地味にオッて思わせる構図でよかったね。

カロルは達観したユーリの代わりに弟分としてしっかりとした成長を見せてくれたし、喰らえ恋心おじさんことレイヴンはコメディリリーフとして必要不可欠。やたらジジ臭い後見人ぽさを醸し出してくるのはやりすぎ感あるけどこの面子なら役割的にそうだろうなって感じ。PTメンバーの男女比や年齢分布は全体的にバランス良く収まってた。

パティは1番可愛かった!ゲームプレイ前は金髪ロリ三つ編みデコ海賊という妙ちきりんな属性てんこもりでヒロインレース最下位独走かと懸念していたが思いの外可愛かった。あんまりデコキャラって好きじゃないんだけど好きになった。

感情表現豊かで元気、戦闘で繰り出すトリッキーな技は眺めるだけでも楽しいしフィールドでぴこぴこ走るモーションも可愛い。時に覗かせる真剣な眼差しと含蓄ある台詞のおかげでただの賑やかしに留まらない幹の太いキャラに仕上がってた。

フレンは描写が少ねぇ!いやー、物語的にユーリとの対立軸を全面に押し出してくるのかと思ったらそんなことはなかったね。うーん。

基本PTメンバーとは別行動なので描写が薄い。親友兼ライバルとしてお約束の殴り合いは熱いがブロマンス的な友情を魅せるにはそれだけだと弱い。普通にプレイしても50時間超えなのだからせめて多少なりとも二人の幼少期の描写でもあれば印象は違ったはずだ。

PT加入する理由が割と雑でポケモンみたいな加入の仕方するのはさすがに笑ってしまった。いくらなんでも雑だろ〜。

もっと理想で殴り合ってくれ

で、ここからはシナリオの核心の話。なんやかんや異なる正義のユーリフレンが序中盤は対立したり葛藤したりする訳だけど。結局そんなやり取りを超えて共通の悪人が出てきたり、最終的には全てを滅ぼす超存在の出現でJPPG的な世界を救うオチに着陸してしまった。

正直この世界を救うオチ自体は予想済みだったので取り立てて不満は無いがもう少し正義とは何か煮詰めたやりとりが見たかった。割とフレンが物分かりの良い優男なので理想の対立としてはやや弱く浅瀬でやり合っているように感じてしまった。別に結論は出さなくていいからせめてどっちにも一理あると思わせるくらいの質量は欲しいし、血の滲むほど深入りした論破し合う展開を絞り出してくれればもっと素直に入り込めただろう。正義の反対は別の正義って有名な台詞がありますが結局は何をどう見せるかが大切なのは言わずもがな。孤児院に援助する一概に悪と言い切れない敵がいたかと思えばユーリが裁いた人間は記号的な悪役の描写に留まっており正義を深掘りしたいのか時代劇的な痛快さを演出したいのか今ひとつ中途半端なのも気にかかる。中盤で世界の複雑さを説いた割に後半いきなりマクロな視点に切り替わり安易な結論に逃げてしまったので全体的に薄味なのは否めない。個人的に悪役が正論吐いて主人公側が答えに窮して結局武力で解決するみたいなツッコミどころありつつもシナリオライターの意思が透けて見えるシーンとか結構好きなんだけど、本作のラスボスの手段は分かりやすい悪として描かれているのでキャラを魅せる以上のメッセージが伝わってこない。

まぁここら辺がJPPG的な限界なのかな〜と思ったり。いっそのこと最初からユーリを悪人として描いた方がスッキリしてたかもしれない。報いを受けてほしいとは思わないけど、裁いた奴の子供が出てきて罪悪感に苛まれるシーンとかほしいよね。一見ピカレスクめいているがとどのつまりやってることは善って物語の流れに不満は無いけど、入り組んだ助走でバテてラストスパートを駆け上がれなかった惜しさは感じる。

ユーリは一見大人びて達観した印象を受けるけど暴力で全てを解決する男と考えたらまだまだ幼く割と低い次元で結論出してるようにも感じてしまう。せめて周囲に一人くらい彼のことを「なんでも暴力で解決するのか」って諌めるキャラがいてもよかったとは思うし、この調子だとエンディング後また何かあれば同じ手段で解決するとも限らない。まだまだ自分は未熟だったと反芻するシーンでもあれば、大人びた第一印象と比較して意外性が出て深みが出たろうし成長も感じられたと思う。正義って互いに殴り合って育てていくことに妙があると思ってるので、キャラに思想を語らせるだけではなく思想でキャラを食い殺すくらい血の通ったエゴイズム全開な展開が見たかった。別にユーリも悪い奴じゃないんだけどどうしてもね。

なんというか二言目にはテイルズだししょうがないかぁ〜みたいな感想が出てくることが自分自身嫌でしょうがないんだけど、そんな慰めの言葉がつい出てしまう。明確な不満ではなく溜息に近い愚痴なのでこの感想自体とっ散らかってて整理する気力も無いけど許して。

まとめ

普通。普通に面白いではなく普通。シリーズ最高傑作との呼び声高い作品だけに相応の期待をしていたが10年以上前のゲームだししょうがないと割り切って遊ぶ部分が多かった。発売当時遊んでいたらとたらればの話するのは無意味なので却下。トゥーンめいたグラも発売から10年以上経過してなお他と差別化できてるのは凄いとはいえ扱うテーマの重さにそぐわない気がする。

戦闘は物語を見るためのコストと割り切って淡々と遊んでいた印象。飽きて投げ出すほどつまらない訳じゃないが面と向かって楽しいと呼ぶシロモノでもない。おそらくやり込めば違う感想を持つのだろうがそこまでモチベが湧くほどでもない。手触りさえなめらかなら愛着も湧いたが最後の最後まで慣れなかった。というか慣れることを諦めて惰性で遊んでた節すらある。

物語的には王道的な描き方から半歩だけ外に出ているとはいえ勧善懲悪の域に収まっている。善悪を知るRPGではなく正義を貫くRPGなので登場人物の行動には色んなやり方があっていいのだろうが、正義の解釈を突き詰めると思われた矢先終盤急に解像度が粗くなり無難な落とし所にまとめたことで全体像がボヤけてしまった。キャラの魅力は相応にあるので最後まで感情を軸に描いていればもっと盛り上がれたと思う。

以上、読んで頂きありがとうございました。