さぐりがき

据置ゲーの情熱を取り戻したい男のブログ

火花散らす闘争の果てに確かな幸福をみた。『テイルズ オブ アライズ』レビュー

f:id:sinodakei:20210918052024j:plain ついに発売されました!前作ベルセリアから足かけ5年の歳月を経て誕生した新生テイルズオブ。これまでと大きく異なる路線変更で発表当時から話題でしたが一言でいうと面白かった。満足。久しぶりに腹一杯JRPG遊んで満たされたしトロコンもしやすかった。

ということで今回は『テイルズオブアライズ』をレビュー。販売はバンダイナムコでジャンル名は心の黎明を告げるRPG難易度セカンドでクリア時間は66時間23分。トロコンまでは83時間27分。

体験版の所感はこちら。今見ても割と愚痴っぽくて信用してない感が出てる。こうやって見返すの楽しいね。 sagurigaki.hatenablog.com

あらすじ

f:id:sinodakei:20210918064448j:plain f:id:sinodakei:20210918033910j:plain f:id:sinodakei:20210918033912j:plain 隣り合う惑星、ダナとレナ。ダナ人は300年前突如上空から侵攻してきたレナ人の圧倒的技術力の前に平伏すほかなく、大陸を治める5人の領将(スルド)が代々入れ替わりながら圧政を敷くことで今日まで奴隷として虐げられてきた。ダナ人はレナ人を光り目と、レナ人はダナ人を石付きと呼び罵るほどに互いの差別の根は深い。

f:id:sinodakei:20210918033925j:plain f:id:sinodakei:20210918033927j:plain 記憶と痛覚を無くした青年アルフェンは日々奴隷として働いていたが、ある日触れた者に激痛をもたらす茨のせいで他人と接することの出来ない女性シオンと出会う。二人はダナ人を圧政から解き放つため、そして同時にシオンの茨を消滅させるべく五領解放の旅へと出立する。

戦闘システム概要

f:id:sinodakei:20210918034745j:plain 戦闘が面白い!

本作の通常攻撃は初期設定だとR1に割り振られており移動とカメラを両手で操作しながら軽快に攻撃することが可能だ。

本作はAG(アーツゲージ)と呼ばれる各キャラごとに持つリソースを消費して術技を使用でき、戦闘中時間経過で無限に回復するのでガシガシ自由に攻撃を叩き込むことが可能。加えて回復術や補助技はAGと異なり時間経過で回復せずパーティ全体で共有するCP(キュアポイント)を使って行う。

この戦闘システムの特徴はAGとCPという攻撃と回復のリソースを分けた点にある。AGは実質無限に使えるのでガンガン継続した攻めを行えるのは気持ちがいいし、体力やCPと有限の回復アイテムを見比べながらリソース管理に気を使うのは地味に頭を悩ませる。雑魚敵であっても通常攻撃を一定以上与えなければ術技のダメージが通りにくくゴリ押しは不可能なので、立ち回りを意識してチクチク削りながら隙を見て技を叩きこむ動きが肝要だ。

f:id:sinodakei:20210920073333j:plain f:id:sinodakei:20210920073317j:plain 敵は飛行するものから術や突進といった多彩な攻撃を使ってくるものまで存在するのでそんな時はBA(ブーストアタック)の出番。ゲージが溜まった状態で方向キーをちょんと押せば仲間が瞬間移動し攻撃を繰り出してくれる。猪が突進してきたらキサラの盾で受け止め、飛行する蝙蝠ならシオンで撃ち落とし、硬い殻はロウに割ってもらい攻撃を通りやすくしたりと適切な攻撃を出すことで即座に敵をダウンさせられる。相手に応じた適切な使い分けが必須だが操作は簡単だし後の先で敵の有利を覆すのはシンプルに気持ちが良い。

AGは時間経過以外にもジャスト回避・ガードとBA発動で瞬時に一定量回復するので連携を深く考えずともとりあえずBA使ってAGを回復させ技を連発する雑な運用も可能。ジャスト回避で更に継続した攻めが行える仕様はリスクとリターンの釣り合いが取れており、連続で避けられた時には『俺上手いんじゃね!?』と軽く勘違いさせてくれるので図らずも戦闘にのめり込んでしまった。筆者が遊んだのはPS4版で戦闘の前後に4秒程度のロードを挟んだが連戦ボーナスのお陰でついつい夢中になった。

一度に行える通常攻撃回数には制限があるが地上と空中で別枠なので『地上で通常攻撃しつつ技で打ち上げ、更に空中で通常攻撃後に技を決める。』そんな空中コンボめいた戦い方が自然と身につく設計なのも嬉しい。見栄えの良い戦い方が簡単に出来るってのはそれだけでモチベが上がるもんです。

f:id:sinodakei:20210918022440j:plain f:id:sinodakei:20210918092600j:plain 敵を倒すにはHPを減らす以外にも、連携し続け敵の水色のゲージをMAXにして繰り出すブーストストライクも存在する。こちらは発動すれば残り体力に関係なく敵を倒せる2人1組のフィニッシュムーブだ。さながらタッグ秘奥義とでも呼びたくなるシロモノでカットシーン時間は最低限、初見こそ動きが分かりづらいが何百回と見ることになるのでその辺も気にならない。あとちょっとでブーストストライク出せそうだなって時に技やBAを連発して一気呵成に攻め立て発動するのがクセになる使いやすいシステムだ。

更にスキルを習得すればブーストストライクで敵を屠ったあと通常攻撃を押すだけで他の敵に瞬時にワープして攻めを継続できる。

この仕様のおかげでいちいち敵を追いかけ回さずとも光の速さで継続した攻めを行えるのが楽しい。なんで瞬間移動できるんだよなんて野暮なツッコミは言いっこなし!楽しけりゃいいのさ。

f:id:sinodakei:20210918092621j:plain f:id:sinodakei:20210918092618j:plain もちろんシリーズおなじみの秘奥義も存在するが威力はさておき2人協力して出すブーストストライクの方が演出としては派手なのでどうしても地味に見えるのはご愛嬌。せめて黒背景の謎亜空間でなければもっと映えたかもしれない。第二秘奥義も割と簡単に出せるのはありがたかった。

戦闘の全体的な感想

f:id:sinodakei:20210920105237j:plain f:id:sinodakei:20210920105345j:plain 筆者は難易度ノーマルでは雑魚敵が弱くコンボする前に死んでしまい少し物足りなかったのでチュートリアルボス後からひとつ上の難易度セカンドでプレイしてました。

難易度セカンドだと雑魚でも敵の攻撃が痛い痛い。とてもじゃないか回復アイテム温存なんてできないので常に全力。ダンジョンで残りCPが枯渇するとわざわざ町へ引き返して回復するのもしょっちゅうだった。ファストトラベルのおかげで戻る時は一瞬なので苦ではなかったが、また同じ道進まなきゃならんのはダルかった。多分ここまでプレイ時間が伸びたのは難易度セカンドのせいなのでノーマルならもっとサクサク進めたと思う。

PTメンバーそれぞれに個性があるが動かしてて楽しいのはやっぱりテュオハリムで雑にぐるぐる回ってコンボを重ねたり空中から棒をエイヤエイヤと投擲したり、リンウェルで後衛として戦場を広く見渡しながら戦うと安定感が増したり選択肢が豊富で楽しめた。でも唯一使わなかったのがシオンでメイン回復役としてAIに任せっきり。だってヒーラーってめんどそうですし。戦闘時の会話も豊富で楽しいのだが唯一気になった点としてシオンが死ぬとアルフェンが「ウアァー!」って錯乱に近い激昂してシオン以外では「よくも仲間を…!」って憤るんだけど、シオン以外が死んだ時も汎用ボイスじゃなく全員個別に名前を呼んでほしかった!名前呼んでくれないと距離を感じるし意外とこういうのって気になるもんです。

仲間のパーティ離脱は最低限なので物語進行で使いたいキャラが使えない事態に陥りづらいのは嬉しい点だ。桜庭統氏が描く猛る戦闘曲もテンション高く盛り上げてくれる。個人的にバテンカイトス好きなんだよね、バンナムいい加減リマスター出そうぜ。

f:id:sinodakei:20210918092746j:plain f:id:sinodakei:20210918092744j:plain 本作のボスは手強い。持てる回復のありったけを注ぎ込んでようやく勝てるレベルだ。どのボスも綺麗に1〜2回全滅させられるくらいには強く、たまに初見突破できると結構嬉しかったりする。敵が術を放って来た時に備えてリンウェルや強制ダウンさせられるアルフェンのBAを温存しておきつついざというタイミングを狙う駆け引きはジリジリした緊迫感があって楽しい。敵が青白く光ってスーパーアーマーになったらアルフェンのBAも効かないので待ちのターンなのは厄介だが途切れた隙を見計らって仕掛けるのもメリハリが効いている。

装備は常にその時点で最強のモノを、国を治める五領のボスには分かりやすい属性があるのでアクセサリーで属性軽減持つのは言わずもがな。幸いにも本作の獲得経験値はレベル差補正で倍率が掛かるのでダンジョンを徘徊すれば自然と目標レベル近くまで上がりやすいのは助かった。まぁ逆に言えばある一定のレベルに達すると獲得経験値が減少するのでレベル上げてゴリ押ししづらいのは難点とも言えるが、難易度自由に下げられるしお好みで。スキル解放は熟練度を早く上げるべく術技を優先して解放しつつ、AG・BAにまつわるスキルやジャスト回避緩和を率先して取っていったが特に不都合も無かった。

何を隠そう回復アイテムの値段が高いことが難易度を上げており蘇生に必要なライフボトルは1000ガルド、CP30%回復のオレンジグミは3000ガルドと序盤からそう易々とは買えない値段設定だ。高い。普通に高い。序盤は武器防具より高い。なのでつい不要な武器防具を売りたくなるが物語を進めると弱武器を素材にして強武器を作るはめになるので武器は取っておくのが吉。筆者は武器を100種以上入手というトロフィーとご丁寧に作成済みのマークが出る時点で色々察して一応取っておいたので助かった。それはさておき装備品が武器・防具・アクセの三種類しか付けられないのは拡張性に乏しく寂しくはある。せめてアクセは2つ装備したかった〜。

本作は戦闘で回復アイテムを使い切ってしまう関係上、意外と金策が大変で拾った回復アイテムだけでは到底足りない。素材を多少売ろうにも雀の涙、換金アイテムを落とす兵士は出現が限定的で出会えない場合も多い。

f:id:sinodakei:20210918092505j:plain f:id:sinodakei:20210918092527j:plain そんな時頼りになるのが物語中盤で解禁される釣りだ。魚は意外と金になる。

釣りはボタン早押しのシンプルなミニゲームだがテンポ良くそこそこ稼げる。正直な話、魚と格闘する釣り要素はオマケでキサラの背中と尻を眺めながら唸り声を聞くことが本編なのでとりあえず一度は遊んどけ。店での売却時には換金アイテムを自動で選んでくれる親切仕様なのでどんどん釣って売りまくろう。困ったらとりあえずピラルク釣っとけピラルク

そんなハイテンポな戦闘と金欠で色々工夫が迫られる楽しみがある本作だが欠点もある。序盤中盤の雑魚戦こそ難易度セカンドでも楽しいがストーリー終盤になるとややほつれを感じることが多かった。

f:id:sinodakei:20210920074040j:plain 敵味方が上級術を使うようになるとエフェクトが入り乱れ非常に視認性が悪い。敵味方どちらの術か分からないのは論外だし物理攻撃が見えず食らってしまい1、2発で昇天するのはストレスだ。終盤ダンジョンを闊歩する大型の雑魚は耐久力が高いうえ体力を最後まで削り切ってBA発動しなければ倒せないので面倒でせっかくのテンポの良さを殺している。

本作の作戦はFF12ガンビットめいた作りで回復補助限定ながら自由に優先設定を行えるが、蘇生術よりライフボトルを優先しても咄嗟に使ってくれなかったり仲間AIが攻撃連携に夢中で回復がワンテンポツーテンポ遅れたりとイライラする場面も多い。仲間の挙動自体もお粗末で雑魚一体にテュオハリムで連携してるとロウが棒立ちのシーンをよく見かけた。そもそも個別の作戦設定できないのが問題で集団戦で仲間に特定の敵を狙わせたければBA発動してヘイトを向けねばならず、一括で集中攻撃させられないのは使い勝手が悪い。こちらは演出の話だが人間の何十倍もの大きさのボスが現れても直接戦えず召喚してきた雑魚をチマチマ倒し続けるシチュエーションは盛り下がる。体験版で危惧した通り術技セット時に動画で動きを確認できないのは不便。

クリア後の裏ダンジョンにもなると敵の火力が増すのでライフボトルのHP800での復活では到底足りず生き返ったそばから攻撃を食らいまたすぐ昇天するので味方をアイテム介護すらできないのは酷い。全体完全復活のオメガエリクシールが非売品なのはともかく単体完全復活のエリクシールも非売品なのはやりすぎだろう。何度も何度も戦ってると単純にレベル差補正がキツいだけのゲームということが分かってくるし、敵の種類の少なさが目立ちBA連発も段々と作業感が増してくる。

f:id:sinodakei:20210920074233j:plain クリア後になってからその有用性に気付いたがアクセで属性攻撃力をガン積みしたリンウェルの雷陣連打で雑魚を蹴散らすのが楽だったり、ボスはアルフェンの覇道滅封で叩くのが主なダメージソースになるので単調。詠唱時間短縮をつけたテュオハリムとシオンが回復役に回るためキサラとロウは自動的にサブメンになってしまった。

動きの軽快さから来る楽しさを自ら帳消しにする調整が目立ったのはなんとも惜しい作りだ。なんだかんだ精一杯なのでこれ以上の難易度は別にいいかな、二周目推奨の作りでも無いし。まあ直近でヴェスペリアリマスターを遊んだ身からするとアライズセカンドよりヴェスペリアノーマルの方が同じボス相手に何度も死んだので向こうの方が調整としてはキツかったのだが。

とはいえ難易度セカンドで遊ぶクリア後のボスラッシュは正に総力戦といった感じで歯応えがあった。クリア後は難易度下げよう下げようと思いつつ結局下げなかったのはそれだけ魅力があったからなのだろう。ちなみに今回の最高レベルは200ではなく100なのは何か理由があるのだろうか……?

願わくばさらなる旅情を

f:id:sinodakei:20210918041038j:plain f:id:sinodakei:20210918041035j:plain グラフィックは写実的過ぎないイラストチックなテイストで基本的には綺麗だが、マップでたまに存在する見晴らしポイントからの景色が綺麗じゃないのが残念。霞がかった雲に阻まれ遠くを見渡す楽しみがなく遠影がモヤっとしているのはスケール感を感じられないこじんまりした印象を覚えた。次作ではもっと見晴らしをクッキリ良い感じにしてほしい。

f:id:sinodakei:20210918071717j:plain f:id:sinodakei:20210918071715j:plain シナリオ上は五つの国を探訪するという流れだが、ダンジョンを二つ三つ超えてしまえばすぐ隣国に辿り着いてしまうので旅という言葉を積極的に使いたくなるほどではない。単純に旅情としては薄めといえる。加えて最初からマップの全体像が表示されるので自分の足で踏破していく冒険感にも乏しい。せいぜい宝箱探しが関の山でギミックらしいギミックも存在しない。どれほどシンボルエンカウントが弱かろうと接触しただけでは倒せず戦闘に突入するのも割と面倒だし、戦闘を強制される通せんぼ配置が殆どなのも厄介だ。

f:id:sinodakei:20210918104109j:plain f:id:sinodakei:20210918104106j:plain マップ自体の作りもどことなく手狭な感じで、走り回ること自体は可能だが思わず不意に駆け回りたくなる衝動に駆られる感じではない。街の作りも外観こそ立派なものの設備は最低限なので窮屈だ。ダッシュは無限に走れるし落下ダメもないのでアホな犬みたいにむやみやたらに無駄に走り回りたかったしせめてこの倍の広さは欲しかった。

f:id:sinodakei:20210918041906j:plain f:id:sinodakei:20210920074458j:plain 道中には野営ポイントが存在しCP回復や料理を行え、仲間内で焚き火を見つめながらちょっとした掛け合いが披露されスキットも発生する。料理は必ず成功しステータスやドロップupなど確実に補正がかかるようになったのは嬉しい。食事のあとにはちょっとした個別イベを見ることも可能で正に戦いの合間の束の間の休息。そう言いたいのだが……。

画面右下の『序盤ブースト!スターターパック販売中!』の文字!!!

バンナムだあぁ〜〜〜!!!

初めて見たとき正直萎えたわ、雰囲気ブチ壊しだぜ!こんな文章表示すれば容易にプレイヤーは萎えるという事実に気付かなかったのか気づいて尚表示させたのかは定かじゃないが、もーちょい気を遣えなかったのかバンナムよ。頼むからもう少し売り方考えてくれ。

いや、バンナムDLCを売るのはいつもの話でヴェスペリアの頃からレベル売ってるのは筆者も知っている。無くても充分クリアできるし時短系やスキンを売るのは全然構わない。しかしDLCを購入して限定称号を取得しなければ一部覚えられない技があるというのは少々やり過ぎのように感じるのですがバンナムさんそこら辺どうなんでしょう?

加えて更に一点。薪がパチパチ燃える音がしないのも個人的にはマイナス。あれが無いと焚き火って感じがしない。

f:id:sinodakei:20210920074434j:plain ここからは完全に余談。焚き火を囲んだ野営に釣り、料理でパワーアップに戦闘での豊富な掛け合いといった要素を眺めつつ遊んでいるとどうしても自然とFF15を思い出してしまい没入感を削いだ。もちろんそれぞれの要素は古くから存在するものなのでパクリだなんだと言うつもりは毛頭ない。目指した方向性は異なるし相対評価はすべきでないと重々承知しつつも、どーしても個々の作り込みはあちらの方が上なので別に比較するつもりもないのに常に頭の片隅に浮かんでるのは我ながら邪魔臭かった。筆者はFF15をめちゃくちゃ楽しんだ人間なのに加えてあちらは仲間がフィールドを付かず離れず歩いたり写真のおかげで唯一性に満ちた旅情を感じられたので、それに比肩するほど大手を振って掲げられる本作独自の何かが欲しかったように思う。

終わりよければ

f:id:sinodakei:20210920092703j:plain 本作はアルフェンとシオンの出会いをきっかけにレナとダナの対立が描かれる。

300年もの長きに渡り支配する者とされる者の区分が抗いようもなく常態化した時、人はどのような決断を下すのか。最初の町ではレナ人によるダナ人への分かりやすい圧政が敷かれていたと思えば、次の町ではダナ人同士で密告し合う足の引っ張り合いが推奨されていたりと切り口の角度を変えつつも一貫して差別をテーマとした物語が展開されてゆく。

f:id:sinodakei:20210918120706j:plain 差別というのは何も一方向ばかりではない。差別されていた側のダナ人がレナ人より優位に立った時真っ先に考えられるのは報復であり、そんな憎しみの螺旋も本作では余すことなく描かれる。よくあるお約束として「復讐は何も生まないぞ」的なやり取りが割と序盤から交わされるのだが全然説教臭くない!不思議!!おそらくどのキャラも地に足がついた考え方の持ち主で比較的落ち着いてるおかげか割とすんなり言い分として受け入れられた。

序盤中盤はそこまで飛び抜けて卓越した描写がある訳ではないが、何故驚異的な技術力を持つレナ人がダナ人を効率悪くも使役するのかしっかりと設定が存在するなど説明が基本一歩一歩丁寧だ。差別という重いテーマながらグロさも過剰な悲惨さも無く決して暗くすぎない乾いた塩梅で進んでいくので差別って無益だなーと非常に受け止めやすかった。

f:id:sinodakei:20210920092155j:plain f:id:sinodakei:20210920101646j:plain f:id:sinodakei:20210920092159j:plain 主人公アルフェンは半分仮面を被った青年で厨二病なのかと思いきや底抜けの好青年。一直線な熱血漢でも無く過度に融和を説く訳でもなく、相手のことを深く思いやれる思慮深さを持った大人でありながら無邪気さがキラリと光る性格なので誰しも好感を持つことだろう。

ヒロインのシオンは気品あふれる所作が目を引くが属性としては分かりやすいツンデレ大食い。まあツンデレと言っても8:2くらいの割合で基本澄まし顔のクールビューティーだ。個人的にはデレデレしすぎないほうが好きなのでこれくらいで良きかな。

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ロウは猪突猛進な賑やかし。単なるアホと思いきやしっかり物事を考えるアホなのでちゃんと成長するし、リンウェルも元気ハツラツな魔法少女と思わせて序盤に見せる遠慮しいでトゲのある態度は背景に暗い影を想像させて意外だった。キサラはくっころ騎士でなく家庭的な柔和さが印象的だし、テュオハリムは縁側で日本茶でもすするのが似合ってそうな爺臭さが癖になる。

PTメンバーは序盤はどこか皆よそよそしく腹に一物抱えた呉越同舟感を醸し出しているが、ちゃんと2:2:2で綺麗にカップリングされていることからも分かる通り次第に仲を深めていく。割とテイルズってネット上で仲の良さを重視して語られることが多い気がして不思議だったんだけど、最終的には和気藹々というより擬似家族めいた温かみのある関係として描かれている本作のパーティを見るとこういうのもいいな〜と思ったり。基本女性陣が強くて男は尻に敷かれてるのがいいよね。

f:id:sinodakei:20210918100655j:plain f:id:sinodakei:20210918100827j:plain 各国を治める領将の面々は誰も彼も立派な悪役だ。戦闘で皆揃いも揃って強い上に誰がラスボス担当してもおかしくない豪華声優陣のおかげで悪役としての格は充分。筋肉ダルマに悪女に分かりやすい造形のオンパレードは一周回って安心感すらある。

街に存在するモブは一度話しかければ吹き出しの色が変わるのでついつい話しかけてしまい圧政に苦しむ様子が少なからず伝わってくる。このような既読か否か分かりやすい情報収集を自然と行わせる工夫は地味に効果的なのでありがたい。

f:id:sinodakei:20210920074717j:plain f:id:sinodakei:20210920074719j:plain f:id:sinodakei:20210920122850j:plain フェイシャルの技術は向上しカットシーンでは微細な表情まで描かれるようになった。しかし元がアニメ顔で黒目が大きいので微妙な視線の揺らぎが伝わりづらくそこまで直に感情が伝わってくるほどではない。目を引くのはせいぜい怒った時に三白眼になるくらいか。カットシーンの殺陣は戦闘でのキビキビした動きに比べるとモーションアクターの動きがあえて如実に感じられる生っぽい動きになってるのが割と面白い。前作ベルセリアでも終盤に剣戟シーンとかありましたし好きなんですかね?

ワイプから漫画的表現になったスキットも顔のアップが殆どなので演出としては控えめ。メインの会話もスキットで済まされてしまいカットシーンで描いてほしかったなと感じる会話も多々あったし、最新のコマ以外薄暗くなるのは見栄えが悪いのでもっと動きのあるコマを入れるなり一枚絵としても成立する魅せ方を追求してほしかった。カットシーンもスキットもフィールド上のショートチャットも量こそ多いが演出はそこまでなので寄り道がほしかった。

f:id:sinodakei:20210920043457j:plain 要所で挟まれるアニメムービーは出来が悪い。アルフェンが癖のないイケメンだからとも考えたがなんか各キャラ全体的に似てない。出来が悪いので野営で見返そうとも思わないしこれならイベントカットシーンを見返せたほうがよっぽどマシだ。

アニメを制作したユーフォといえばすっかり鬼滅型月のイメージだしこうした質の良くない物を出されると内心バンナム舐められてそうと誠に勝手ながら不憫さを覚えてしまい別の意味でも盛り下がった。ユーフォもプロなのでそんなことしないと思いますが。脱税はしたけど。

f:id:sinodakei:20210920092052j:plain 実は本作は物語的に前半後半で同等のボリュームが味わえるのかと思いきや、後半では物語の種明かしに多くの時間が費やされるのでちょっと期待と違ったもどかしさを覚えた。確かに種明かしそのものはオオッと唸る部分はあるものの、別にそういうアレは求めてなかったし一貫して無益な差別を描いたのだからおそらくこうなるよな〜と割と想定内の描き方でした。まぁ種明かしの中身はネタバレなので置いとくとしてもそもそもゲーム開始時何も知らずにメニューでプレイレコードを開いてみれば野営地がいくつ存在するか丸わかりで全体の進捗が予想できるのは大きく楽しみを奪っている。こういう公式ネタバレ本当にマジやめてくれ。総数はクリア後まで隠すとかいくらでもやり方あるでしょ。

『シオンが茨のせいで他人と触れ合えない』という設定を見せられるのが主にオープニングと要所要所の場面くらいなので、物語後半そのことに言及されてもどこか中途半端な薄味さを覚えてしまった。彼女が他人と触れ合えないと自覚的で基本人を避けて行動するせいで逆に描写が薄かった気がする。もしホントにそんな力があったら確かに孤独に生きるよなって行動原理は分かるけど、せっかくのキャッチーな設定だし普段から何かにつけしつこいくらいに触れ合えないことを押し出した方が後々効いただろうし丁度良かった気がする。他にもラストバトル周りの展開がワチャワチャッとしてたのは気になった、もっとシンプルストレートに書く方が勢いそのままに盛り上がったかも。

f:id:sinodakei:20210920092157j:plain そんなこんなで面白かった点やらなんやらありましたが最終的には満足です。だってその理由は終わり良ければなんとやら。

終わり良ければ!

終わり良ければ!!

終わり良ければ!!!

大事なことなので3回言いました!!!このエンディングなら満足だ!!!

最近は多様なメディアでヒロインの形も様々ですが本作はシオンが一貫してヒロインしてるのがポイント高い。アルフェンとシオンの関係性の機微と成長が刺さったというよりは率直に良かったという言葉が出てくる感じ。個人的にゼスティリアは未プレイだが、あのネットでの騒動を意識してめちゃくちゃ気を遣ってるなって容易に察せるレベルでヒロインしてるし、割とそうした汚名返上的なクドさを感じさせずに単品で物語を昇華して綺麗にまとまってたおかげで満足です。

確かに物語の細かい点を上げれば序盤からチラホラ気になる部分もあるものの別に揚げ足取りたくて遊んでる訳じゃないし、小さな違和感を潰したところで大幅に面白くなるとも思えない。だからこれでいいんです。

まとめ

f:id:sinodakei:20210920093721j:plain 振り返って見ると丁寧な出来栄え。物語はJRPGとして王道のツボを押さえつつちょっとしたサプライズ要素もあり、女性陣は皆美人だし男連中も好感が持てる。敵の行動を阻害して攻め続ける身軽な戦闘は爽快だし金策に常に頭を悩ませ続けるバランスもスパイスが効いてて面白い。

しかし欲を言えばもう少し各キャラ個人に突っ込んだエピソードがあっても良かっただろうし、終盤と特にクリア後で顕著になる自らの長所を殺すような戦闘の調整の甘さが惜しかった。この点は難易度セカンドでの感想なのでご了承を。

えー、なんといいましょうか。あくまで減点方式で考えるとミスが少ないだけというか、加点方式にしてもそこまで飛び抜けて秀でた部分が存在しない作り。過去作がネットで色々騒がれたので置きに行った造りになるのはある程度理解できるものの、構成要素の多くに他のゲームで見た要素の簡易めいた印象を受けそちらに思いを馳せることも多く、出来ればあと何か一品くらい小皿でいいから異なる要素があれば印象はだいぶ違ったと思う。オリジナリティ無くてもいいからもう一つくらいミニゲームに没頭したかったね、カジノとか。

とはいえ絶対評価で見ればテイルズオブシリーズの新たな門出として充分満足できる良作だ。楽しいと思わなきゃトロコンしないので存分に楽しめた。これから過去作のリマスターも予定されてるらしいですが一度これ味わっちゃったら過去作遊ぶ気しないよなーとシリーズほぼ未経験の筆者は思う。正直なところ最高レベルが100だったり諸々の描写から察するに一年後に新マップを追加した完全版が出てもなんら不思議ではないと感じるのだが、安かったら買ってもいいかもと好意的に思える出来ではあるのでさっさと拡張DLC出してくれてもいいんだぜ。

まあDLCはともかくまだまだ伸び代の余地は残されているのは事実なので次回作にも期待が持てる。しばらく前世代機とのマルチが続いてるので次こそ次世代機専用タイトルとして更なる飛躍と華麗な大輪を咲かせてくれることを望みたい。

f:id:sinodakei:20210918025343j:plain 以上、読んで頂きありがとうございました。