さぐりがき

据置ゲーの情熱を取り戻したい男のブログ

悪魔的彼女の悪魔的ひらめき。『Bloodstained: Ritual of the Night』レビュー

f:id:sinodakei:20211025012418j:plain なんか最近やたらメトロイドヴァニアが盛り上がってない?昔から存在するゲームジャンルで筆者も過去に悪魔城ドラキュラ奪われた刻印を女性主人公という理由だけで手に取った時期もあったんですが、2Dゲーはなんだかなーと序盤ですぐ飽きて辞めた経緯があって個人的に割と遠慮してたんですよね。そもそも悪魔城って名前からして難しそうで近寄りがたいイメージがあるというか、メトロイドもアザーエムをクリアしたくらいですし。とはいえこれだけ多様なメトロイドヴァニアが話題になってくると遊ばない訳にはいかんでしょう。

という訳で前置きが長くなりましたが今回は『ブラッドステインド:リチュアル・オブ・ザ・ナイト 』をレビュー。本作は悪魔城シリーズを製作した五十嵐孝司氏が独立し製作したキックスターター発のゲームでジャンルはアクションRPG。難易度ノーマルでクリア時間は28時間52分。プラチナトロフィー取得まで37時間48分。

あらすじ

f:id:sinodakei:20211025012456j:plain f:id:sinodakei:20211025012458j:plain 十八世紀イギリスで十年もの長き眠りから目覚めた少女ミリアム錬金術で体が結晶化する呪いを受けた彼女は旧友ジーベルを正気に戻すため数多の悪魔がはびこる悪魔城の探索を決意する。その身に宿した呪いを糧に敵である悪魔の力を借りながら──。

その悪魔の力を借りて

f:id:sinodakei:20211025012549j:plain まず最初に本作を触った時の第一印象を一言でいってしまおう。

なんか遅くない?

率直にそう感じた。だって走る時はトットットッって感じのちょっと小走りめいた動きだし、ジャンプモーションは足を伸ばしたままフワッと浮き上がるので今ひとつ力強さを感じられなかった。一番オーソドックスな武器であろう剣の攻撃モーションもそこまで発生が早くないし、どう贔屓目に見てもグラフィックの綺麗さは中の中で特に見応えがあるわけでもない。良くも悪くもどこか物足りなさを感じたのは事実だった。

でも俺は知ってるぜ!この調整はあえて弱くしてるからだってな!

しかしそこはすぐに思い直した。なぜなら本作は言わずと知れたメトロイドヴァニアと呼ばれるゲームジャンル。探索と戦闘を繰り返し徐々に強くなっていくので序盤の性能が物足りないのは当たり前だ。

というわけで比較的ゆっくりめのゲームスピードにもすぐに慣れました。まあ遅いと感じたのは事実ですがあくまでなんか遅くない?と軽く聞きたくなる程度の話で決してモッサリはしてないのでこんなものだろうと早々に納得できたし、むしろこの不自由さは後の自由度に繋がる布石なのだと純粋にワクワクする気持ちの方が大きかった。二段ジャンプや高速移動がいつ出来るのか期待感を煽られている姿はまるでお預けを食らった犬みたいだと自分自身苦笑しつつ、その時を今か今かとヨダレ垂らして待ち構えてました。 f:id:sinodakei:20211025012623j:plain 何より実際に慣れてくるとこのゲームスピードはどこか心地良い。本作は序盤からそこそこ多めの敵が襲ってくるのだが、雑魚敵の代表格であるコウモリはぐるっと弧を描きながら連続して襲ってくるので慣れないうちは中々狙いがつけづらい。最初こそなんでこんな雑魚敵が鬱陶しいのか理解できず面倒臭い印象しか無かったが、初めて連続してズバズバズバッと綺麗に倒せた時『このテンポ感を生み出すためにあえて配置したんだな』と気付いた時の納得感は意外と嬉しいものがあった。個人的にゲームを遊んでいて楽しい瞬間って爽快なアクションの手触りやパラメータの強化はもちろんだけど、それとは異なる部分でそれまで理解できなかったものを気付けた瞬間の妙はやはり別格だ。

武器の種類は剣大剣短剣槍鞭銃などなど豊富に存在し自分の好みに合ったモーションが選べるし、同じ剣でも刀身が透明だったり属性持ちだったりバリエーション豊か。個人的なお気に入りは大剣ほど遅くなくダメージをそこそこ与えられるメイス系と剣を空中に飛ばして攻撃する特殊剣リモ・ダートの2種類。特に後者は剣が手元に返る際翻って多段ヒットするのが小気味良くて中盤までよく使ってました。開始数時間もすれば敵との間合いを図って攻撃するシンプルな行為にナチュラルな面白さを見出せた。 f:id:sinodakei:20211026003222j:plain f:id:sinodakei:20211026003219j:plain f:id:sinodakei:20211026003225j:plain そして敵を倒せばシャードと呼ばれる装備アイテムをドロップする。シャードとは言わば悪魔の力が宿った魔法の結晶。ファイアボールや竜巻を起こしたり悪魔を使役したりパラメータを上げたりと性能は大幅に異なり数は数十種類にも及ぶ。これらを五つ同時に装備して戦うことが可能だ。

本作ではこのシャードをボス雑魚敵問わずほぼ全ての敵がドロップする。二段ジャンプなどの探索の幅を広げるシャードこそボスを撃破しないと得られないが、敵を攻撃するシャードはそこらの雑魚から頻繁にドロップするので戦闘の幅を大きく広げることに貢献している。メトロイドヴァニアと言えばボス敵を倒して新たな能力を開花するのが常だが雑魚敵を倒すことでドンドン能力が開花して小刻みなパワーアップが続くのはプレイヤーにマンネリを感じさせない見事なシステムと言っていいだろう。設定的にも悪魔の力を借りて悪魔を討つってのはカッコイイしね。

「どうせ強力なシャードは終盤にならないと手に入らないんでしょ?」と思ったそこのアナタ。う〜んちょっと違います!シャードは素材を投入して効果時間や範囲を拡げるランクと同じシャードを複数集めて威力を上げるグレードの二つの強化が可能で、初期に手に入れたシャードの使い道が無くなるなんてことはありません!序盤から手に入るコウモリを飛ばすシャードは割とすぐ実用的なレベルまで強化が可能だし、敵を貫通して一直線に飛んでいくので長い直線廊下で使えばコウモリを盾にする形で敵を次々と殲滅できるステキな性能。さっきまで雑魚敵に鬱陶しさを感じてたのは何だったのって拍子抜けするレベルで活躍してくれます。好きなシャードを用いた自分なりの戦法こそ醍醐味なのできっと誰しも自分好みのシャードが見つかるはずだ。自分の好きな戦い方こそ正解なので詳細は伏せますが、他のシャードで言えば筆者は壁や床にバウンドして多段ヒットするものが特にお気に入り。正直沢山ありすぎて全部試すのがめんどくさいレベルなので装備画面で性能と動きを動画で確認出来ればよかったかも。ステータスアップ系のシャードを最大強化するとバフが常時発動するのは分かってるな! f:id:sinodakei:20211026021748j:plain f:id:sinodakei:20211026021746j:plain こうして悪魔から奪ったシャードの力を利用してミリアムは次々と悪魔城を探索していく。MPを回復させる燭台は至る所に配置され出し惜しみせずガンガンシャードを使えるし、そもそも暇つぶしがてら燭台をバリンバリン壊すのすら気持ちいい。一見するとなんの変哲もない壁なのにマップを見てみると穴が空いており、こりゃ怪しいぞと攻撃してみれば壁が崩れて新たな道の出来上がり。マップの壁に穴が無くともやけに空虚な壁を叩けばステータスアップアイテムが顔を出す怪しい場所には必ずなにか存在する期待を裏切らない作りは丁寧だ。

報酬が貰えるのはもちろん嬉しいけど俺もしかして勘冴えてるんじゃねって上手く気分を乗せてくれるのが最高だ。宝箱を方向キー上で開けられるのも便利だし、悪魔城を彩る良質なBGMもしっかりと耳に残りつつ探索の邪魔をしない塩梅で長時間聴き続けられる。 f:id:sinodakei:20211026041236j:plain ただ長々探索していると目に付く点としてファストトラベルと回復兼セーブポイントが異なる場所に存在しオートセーブ非対応なのは正直不便だ。城内のセーブポイントは探索に夢中だとまた見つけたぜ〜と言いたくなるレベルで豊富に存在するのでありがたいが、拠点に戻ればどうせ回復するのだからファストトラベルとセーブポイントは一緒で構わないし、セーブ部屋に入った時点でオートセーブしてほしい。拠点内にファストトラベルが存在しないのも地味に面倒。

本作は探索を進めば進めるほどオートマッピングされる仕様だが、マップ自体は単純な3色の色分け程度で非常に簡素。慣れてくると自然と場所を覚えるとはいえオートマッピングはそのままにプレイヤー自身がマップを色分けできたりアイコンを置いてカスタマイズしたかったので続編では更に利便性を高めてほしい。 f:id:sinodakei:20211026004906j:plain f:id:sinodakei:20211026004918j:plain f:id:sinodakei:20211026005007j:plain アクションRPGなのでレベルを上げる楽しみや拠点でたらふく回復アイテムを買い込んだり武器防具を新調する楽しさも健在だ。特にアクセを2つ付けられるのが◎!シンプルに防御を硬くしたり状態異常防止で固めたり人によって幅が出るのは嬉しいっすね。まぁ結局はドロップup系複数持ちが一番効率的なんですけどそれを見透かしたようにすぐ手に入るしドロップ重視したい人間の欲望を熟知してるのは助かります。

装備にはサンタ帽にガスマスクや変声器などユーモアに満ちたアイテムが存在し、序盤は装備の数が少ないため意図せずヘンテコな見た目になる。普段の筆者なら見た目をデフォルトで固定する機能くらい欲しいと感じるものだが、横スクロールゲーでそれほど見栄えを気にするゲームじゃ無いので今回ばかりは変な見た目のまま楽しんだ。拠点にいるクエス依頼人食欲に支配されたお婆さん悪魔を憎みすぎるおばさんなど変人ばかりで、本作は世界観こそゴシックホラーと銘打たれているが全体的にあえてユーモアを残した作りになっている。おそらく昔懐かしのゲームのような隙をあえて目指したのかもしれない。 f:id:sinodakei:20211026003825j:plain f:id:sinodakei:20211026020608j:plain しかし一度作成した料理はショップで購入が可能になるが回復効果量が不明で値段で推測するしかないのは不便だ。一度作ったものとはいえいちいち効果量なんて覚えてないし、全般的に丁寧さが光る本作にしては珍しくストレートなポカをやらかした印象がある。まあステーキからいちごスパまで「おいひぃ〜」と頬張るミリアムは表情が変わらないのになんだか可愛く見えてくるし、髪型を変えて自由にコーディネートする楽しさの前では多少の荒さも吹き飛んでしまう。こうした見た目変更って大抵デフォルトが一番可愛い結論に落ち着くとはいえ意外と気分転換になるのでコロコロ変えて楽しんでました。

城の主のやるべきこと

f:id:sinodakei:20211026002350j:plain f:id:sinodakei:20211026002348j:plain さて、城内を探索したら自然と出くわすのがボス戦だ。正直本作のボスは基本的にそこまで強くない。一部苦戦するボスもいるが回復アイテムを大量に持ち込むなりレベルを上げるなりで対処可能だし、戦闘中にシャードを付け替えられるので有効な戦法を思いついたらとりあえず試してみればいい。シチュエーションも豊富で飽きさせない。 f:id:sinodakei:20211026012411j:plain f:id:sinodakei:20211026234603j:plain それよりもボスをクリアすることで得られる探索を広げるシャードの数々が嬉しい!重いものを馬鹿でかい手でどかしたり、二段ジャンプで華麗に舞って新たな道を見つけたりオープニングから待ち望んでいたアレやソレが使える喜びに加えて「え、そんなことまで出来ちゃうの?」という予想だにしなかった能力の発現。これこそ醍醐味ってもんだろう。まあずっと欲しかった二段ジャンプがなんか思ってたのと違うのには面食らったが、時限式の足場をテンポよく跳び続け宝箱をゲットしたりトゲトラップを回避したり『そういえば最近こういうゲームらしいギミック遊ぶの久しぶりだな』と童心に帰るような楽しさがあった。

そうして手に入れた新たな能力を駆使して次々とギミックを攻略していくのだが一部の謎解きは手強くどうしても煮詰まる時が来る。 f:id:sinodakei:20211027000240j:plain 見当たらない……。 f:id:sinodakei:20211027000237j:plain 見当たらない…………。 f:id:sinodakei:20211027000242j:plain 見当たらない………………でもネコ可愛い。

マジで10時間探した。

マジでバグで進行不能なんじゃないかって疑うくらい探した。実は本作にはちょっとしたプレイヤーのひらめきを要求するものがあり、これがどうしても思いつかず延々探してしまった。こういうのは煮詰まると良くないんだよなとあえて休憩なんかして。正直探してる最中は何度も何度も攻略サイトを見ようかと悪魔の囁きが脳裏を渦巻いたが、せめてクリアまでは決して諦めず自力で解こうという想いが強かった。なぜならそれまでの謎解きが丁寧で今悩んでいるこの謎にもきっと明確な答えがあるという信頼感に満ちていたからだ。ここで全てをふいにすればメトロイドヴァニアというジャンルに顔向け出来ないという意地もあった。

そしてついに天啓来たるっ…!!!

ある瞬間ふと思いついた圧倒的閃きっ……!!!漫画の福本作品なら悪魔を殺す悪魔的奇手っ…!とでも形容しそうなものだが実際には疲れてヘロヘロ。謎が解けた高揚感より先に安堵感が勝るってのはなんともリアルな感情だ。しかも解いてしまえばなんだそんなことかよと言いたくなる程単純なもので勘のいい人ならすぐ解けるレベル。Eカードで利根川カイジに諭した『自力で辿り着いたアイデアは大した考えでなくとも本人にとっては特別』という台詞が刺さる刺さる。とはいえ自力で解いた事実が覆ることはないしホント諦めないでよかったなという思いに尽きる。まさしく悪魔的ひらめきと言っても過言じゃないだろう。迷ってる最中もレベルは上がるし素材も手に入るので時間を無駄にしたとは思わせない作りも上手い! f:id:sinodakei:20211026024754j:plain そしてゲーム終盤にもなると二段ジャンプと共に欲しかった高速移動が手に入る。まるで悪魔城の城主になって自らの庭の如く城内を飛び回るのは爽快で意味もなくスティックをグルグル回して飛び回るくらいには気持ちいい。とはいえ延々謎解きを悩みに悩んだせいか行けるところはほぼ行き尽くした後だし、終盤手に入ることもあってか正直今更こんなもんいらねーよと反抗期めいた気持ちが強かった。しかしこのなんで今更この能力が手に入るのかという疑問は早々に明かされることになる。 f:id:sinodakei:20211026023829j:plain f:id:sinodakei:20211026020157j:plain f:id:sinodakei:20211026020200j:plain f:id:sinodakei:20211029152029j:plain 決まってるだろアイテム集めだよ!!!

そう、この高速移動はアイテム収集で大活躍するのだ。本作にはご丁寧にもドロップ率が記載された悪魔図鑑やアイテム図鑑が用意され『アイテムコレクターの皆様どうぞお召し上がり下さい』と言わんばかり。おそらくこれが五十嵐氏が過去に製作した悪魔城シリーズの楽しみ方のひとつなのだろうと想像できるくらいには整備された作りだ。

いわゆる最強武器は低確率の素材を使用し錬成する仕様で直ドロップしないのは少々物足りないが、中々落ちないシャードがポロっと落ちた時は素直にテンションが上がる。作製した強武器と攻撃速度アップのシャードを装備して昔とは見違えるほど速く強くなったミリアムのおかげで様々な武器で戦いたくなってくるし、部屋を出入りするたび復活するボスは慣れれば一戦10秒足らずで瞬殺可能なのでもしかしてめちゃくちゃ効率良い戦法見つけちゃった!?と完全な自己満足の悦に浸れる気持ちよさが脳を焼く!図鑑の隙間をコツコツ埋める作業が何とも中毒性が高く気付けばプラチナトロフィー取ってました。かつてドラクエなんかで狩りに没頭した人なら絶対楽しめるはずだ。

実は本作には特定の武器と格ゲーコマンドで出せる奥義が存在し通常攻撃やシャードとは異なる操作が味わえる。マップに散らばる本を読むことでコマンドが判明するんですが、咄嗟のコマンドが苦手なので序盤は使いませんでした。しかし本を読む前にたまたま偶然出せちゃった一部の技があって使ってみたら強いし出しやすいし気持ちよくて終盤はよく技を繰り出してました。図鑑集めには直接関係ないですがとりあえずコンプしとこうと熟練度上げ作業も意外と面白かったし、シャードに負けず劣らずの便利さなのでアイテム収集がてら奥義で雑魚をボコボコにするのもオススメです。

まとめ

f:id:sinodakei:20211026023804j:plain 傑作。探索を進めば進むほど出来ることが増え強くなり次第に深みにハマっていく。間口の広いRPG要素で誰でも遊びやすいし多彩なシャードのおかげで戦闘の自由度が高く慣れれば自分の考えた戦法でボスを蹂躙できるのが何より良かった。一部現代にそぐわない古めかしさは感じるものの全体を見渡せば積み上げられた丁寧な面白さが光る。プレイヤーのひらめきを問う謎解きに原始的欲求を呼び覚ますアイテムコレクション要素の数々はまさしく悪魔に魅入られたかのように夢中になれたし、現在準備中の続編も発売されたら素直に買いますと言うくらいには楽しめた。 f:id:sinodakei:20211025231219j:plain 以上、読んで頂きありがとうございました。