さぐりがき

据置ゲーの情熱を取り戻したい男のブログ

真紅に染まる復讐の果てを描く傑作 『The Last of Us Part II』 レビュー

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あなたは、理不尽な仕打ちとも呼べる暴力を受けたことがあるだろうか。
あなたは、怒りで血が沸騰したことがあるだろうか。
あなたは、自らの無力さに打ちひしがれたことがあるだろうか。
あなたは、復讐したいと願ったことはあるだろうか。

誰しも一度や二度くらい体験したことはあるはずだ。願わくばどの感情も二度と思い出したくもないものばかりだろう。


本作はそんな体験したくない出来事が詰め込まれた暗く重く冷たいながらも確かに人の情の熱を感じる復讐劇だ。一人の少女の運命の一端を真正面から描き切った描写に筆者は驚嘆し打ちのめされた。これは紛うことなき傑作だ。
ということで今回はThe Last of Us Part II』をレビューしよう。開発はノーティドッグでジャンルはTPS。難易度ノーマル、クリアタイム26時間32分。ネタバレは無いが物語展開についてやや言及している。



※ 続編という性質上、本レビューに前作のネタバレが含まれているのは注意!プレイしているか否かで土台の感情そのものが大きく変わるため今作をプレイしたいなら前作は義務と言っていい。
ネタバレ文章や動画を見たくらいでプレイするのもおそらく辞めたほうがいい。もしそんなことをすればあなたは今作の良さを知る機会を永遠に失うし、きっと後悔すると思う。 とにかく前作未プレイの人は本レビューを読まず回れ右して今すぐラスアスリマスターを買ってこい!!!忠告はしたぞ、準備はいいね。

あらすじ

前作から5年後。新たな友人や恋人に恵まれたエリージョエルと共にジャクソンで平和な日常を享受していた。


しかし正体不明の集団により突如としてエリーの身に不幸が襲いかかる。


鬼と化したエリーは復讐を決意しジャクソンを旅立つ。ワシントン解放戦線と呼ばれる組織、通称WLFと自然を守る教えを是とするカルト教団セラファイトの二つの集団の小競り合いが続く土地、シアトルへと。

一段上がった表現力

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もはや実写。

グラフィックが驚異的。ここまで綺麗だとなんだが一足お先に次世代機を堪能したようなちょっとお得な気分。登場人物の表情も怒って息が上がれば顔が紅潮し血管が浮き出て鼻が膨らむ。涙で潤んだ瞳や泣きはらした目元などもリアルそのものだ。虹彩が光で透過しているのがはっきり確認できたりどうやらノーティドッグの技術力は留まることを知らないらしい。

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環境音にも力が注がれており、例えば水音ひとつとっても違う。川のせせらぎから雨音、上に溜まってジョロジョロと流れ落ちる音、浴槽でピチョンと滴る水滴まで全て異なり聴き分けることが可能だ。

ちなみにロープやケーブルを使った謎解きがあるのだが放り投げた際の紐の挙動が本物そのもの。紐を投げるだけで楽しいってどういうことだ⁉︎

戦闘

復讐の手段

戦闘システムは基本的に前作を踏襲しているが新たに回避と匍匐が加わった。

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かつてはジョエルの近接攻撃が猛威をふるったが今回は敵が攻撃をブロックしてくるため単なる攻撃ボタン連打は通用しない。が、敵が振りかぶった際にボタンを押せば容易に空振りを誘えるので頭を使うほどでもない。タイミング自体も受付猶予が長いので簡単だ。敵が攻撃する素振りを見せたら回避、単純な話だ。

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身を隠す草むらには背の高いものと低いものがあり、背の低い草むらや車の下に潜り込む場合は匍匐が有効。草むらに身を隠していても敵に接近されると見つかってしまうためこれまで以上に注意を払う必要がある。

回避と匍匐、どちらも新要素だが戦闘システムに取り立てて新風を吹き込んでいる訳でも戦略的という訳でもない。とりあえずのご紹介。むしろガラスを割ることで新たなルートも作り出せるのでいざって時に便利だから覚えておくと役に立つ。割れ方がリアルなことにも驚いた。


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特筆すべき点としてはナイフが挙げられる。エリーの持つ飛び出しナイフはなんとあの煩わしいクリッカーですらステルスキルなら一撃で倒せる!以前はナイフは消耗品だったおかげで緊張感と戦略性があったのだが、この仕様のおかげでクリッカーは完全にただの雑魚に成り下がったのがちょっとさみしい。油断してるとすぐ殺されるけど。

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敵の体に少しでも火がつけば倒せた火炎瓶は威力・効果範囲ともに弱体化。ランナーの体に火が付いても焼き殺せず鎮火する場合も多い。まぁ弱体化したとはいえ基本的に強力なことに変わりないので密集地帯にブン投げて丸コゲにしてやれ。

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製作できる新アイテムも地雷やサプレッサーなどステルスゲーではお馴染みのアイテムが登場。選択肢自体が広がったのは単純に嬉しい。アイテムが製作可能になると音とアイコンで知らせてくれるし、どのアイテムがどの素材を消費するのかも一目瞭然だ。

素材と製作できるアイテムの種類が増加したため製作バランスはいくらか整った。ただ探索を丁寧に行うと前作以上に持ちきれないほど素材が駄々余るくらいユルい調整で難易度ノーマルは基本的に誰でもクリアできるよう優しい作りなのは間違いない。今作はエリーの復讐劇がテーマのため前作のようなサバイバルめいた色合いを強く求めるならもっと上の難易度でもいいかもしれない。

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本作の一部のチャプターでは中規模のオープンフィールドが採用されており探索しがいがあるのだが通常の戦闘マップも前作に比べめちゃくちゃ広い。 敵に発見された位置から動かず照準を覗くとまずノータイムで反撃を食らうし、敵が豆粒にしか見えないほど遠くからピシピシ攻撃を喰らったり、崩壊した建物で高所から不意に複数の角度から狙われる。マップ全体には十数人の敵が徘徊しており倒しきる頃にはだいぶヘトヘト。感染者相手に暗いホラーなシチュエーションが長く続く場合もあり率直にいって緊張感の連続でめちゃくちゃ疲れる。
しかし難易度そのものは体感的に前作より優しく感じた。ゲーム全体のボリュームは2倍以上でおそらく前作以上に死んだと思う。しかしリトライにかかるロード時間は3秒程度でチェックポイントも豊富なのでノーストレス。なによりエリーのナイフの使い勝手の良さのおかげでクリッカーも怖くない!

一見矛盾するような感想だが、この難易度ノーマルの「戦闘の難易度そのものは緩めだがシチュエーションの緊迫感でヘトヘト」というのは終わってみれば良い塩梅だったように思う。疲れるといっても心地よい疲れだ。
マップ突入時に敵兵の会話を盗み聞きするよくある導入シーンでは会話を聞くのが焦ったく開幕一番火炎瓶投げ込んで即バレしたり、煙幕に乗じて突貫し近接武器でメッタ撃ち、ゲーム後半探索が面倒になり物資回収しなくても意外となんとかなったりと我ながらテキトーに好き勝手遊んでも全然ダイジョーブだったので懐自体は深いと言える。


復讐の障害物

本作にはおなじみの感染者以外に2つの組織が存在する。WLFセラファイトだ。
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数多く戦うことになる敵WLFは前作におけるファイアフライのような軍への対抗組織として生まれた。
発見されると統制された組織らしく「草むらへ隠れた!」「あそこの物陰にいるぞ!」と声で連携し複数の方向から射撃を加えてくるのは中々に厄介。そしてもっと厄介なのが軍用犬の存在でこちらの匂いを追尾するため姿を隠しても無意味。御犬様とはいえ殺すのを躊躇っていると顔面喰われるのでご注意を。

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同じく面倒なのが自然と共に生きることを選択したセラファイト。仲間同士で口笛で連携を取り襲撃してくる。自然に身を隠しながら巧みに矢を放ってくるのだが、エリーに刺さった矢は引き抜かないと継続ダメージを食らうのがまた面倒。


WLFと感染者が同時に存在する場合、WLFにビンを投げ音を立てることで感染者を襲わせることも出来る。このような敵NPCと感染者が戦うシチュエーションは前作ではDLCくらいでしか無かったと記憶しているが、今作では度々機会が訪れる。互いに潰し合ってくれれば物資も節約できるし儲け物で一石二鳥。積極的に漁夫りにいこう。

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もちろん感染者も登場するが前作初見のインパクトに比べるとどうしても印象は薄く語ることは少ない。グラフィックは強化され頭髪の抜け落ちたランナーはよりゾンビめいているし、女性クリッカーの体のラインに一瞬目を奪われたのはナイショ。新種の感染者もいるがネタバレのため伏せる。あえていうならブヨブヨでキモい。

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本作の敵兵は仲間や犬が殺されると名前を呼び死を嘆くような仕草を見せたり時には命乞いまでする。ステルスキルでナイフを首に突き刺すとピューピュー血が噴き出しゴポゴポ声にならない声で断末魔に溺れる姿を見せるなど前作以上に人間らしく描かれているのが生々しい。
こうした演出は何もただの悪趣味でやっている訳ではなく敵兵を一人の人間として感じてもらうためにやっているのだが、復讐鬼となったエリーの前では路傍の人間の命など些事でしかないのもまた事実。迫りくる障害は排除するのみ。


シナリオ

復讐の幕開け

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かつてエリーの命と世界を天秤にかけられ、エリーを救ったジョエル。前作から5年が経ちふたりが暮らすジャクソンはもはや村といっていいほどしっかりした活気ある街並みだ。文明崩壊から四半世紀ほど経過しても人間が人間らしくいるための営みは受け継がれており経済も循環している。規模自体は小さいため誰と誰が恋愛しただの下世話な噂が広まりやすいのがたまにキズ。


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そんな街で生活するなかで出来た恋人がディーナ。初見の印象は太眉でなんか芋っぽいと思ったのだがゲームを進めるうち「意外と美人じゃね」と思い直すに至った。友人のジェシーもサッパリした好漢でエリーにとって同年代の2人はとても大切な友人達だ。


そんな日常を謳歌していたエリーの下に思わぬ災禍が降りかかる。


本作がエリーの復讐譚を描くと聞いた時おおよその予想を立てた。おそらくは、こう、なるだろうと。そして実際にその予想はある程度当たっていた。



が、ここまでとは思わなかった。
想像の遙か先を行く生々しく真に迫る暴力。エリーの身と周りに起こる事態は理不尽そのものでその光景を目の当たりにした瞬間コントローラーを持つ両の手が熱くなった。エリーの頭蓋に響く耳鳴りがまるで自分のものの様に聞こえたほどだ。

ここまで過酷に、無慈悲に、凄惨に描く必要があったのか?なぜ前作EDのまま放っておいてくれなかったのかと疑念が頭を渦巻くほどの悲劇に胸が痛くなった。

しかしすぐに思い直した。この展開はだからこそ、前作あってこそエリーとプレイヤーの心情が深く重なるのだ。結果的にエリー同様復讐に燃える強い動機となったおかげで深く物語に入り込めた。前作EDはメリーバッドエンドやオープンエンディングなどと呼ばれる観る者にある程度解釈を委ねる造りであり、そこにプレイヤーの解釈を上塗りするような形で物語を描いたこと自体ひどく挑戦的ですらある。前作にのめり込んだ人ほど心に刺さり復讐を決意するはずだ。

本作は単なる2ではない。Part2なのだ。発売前からやや違和感のあったタイトルの正体は前作を第一部と位置付けるとするなら言わば第二部であり完全に地続きな物語であることを端的に示唆している。プレイするうち次第にその意味が分かるだろう。

復讐の旅路

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復讐の旅路は基本的に暗く、冷たく、重い展開の連続だ。生意気ながらも可愛らしかったエリーは常に眉間に皺を寄せ別人とも言える顔つきになり容赦なく凶器を突きつける。その変わりようは従軍前と後で大きく人相が変わった軍人の顔写真を思い出したほどだ。憎しみが人相を変えるのは本当なのだと確かに実感できる。

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しかし何もそればかりではない。エリーのピンチに必ず駆けつけてくれるジョエルは頼りになるしお馴染みのユーモアあふれるジョークも健在だ。ジョエルに教わったギターであの往年の名曲を原曲とはまるで異なる調子で奏でるエリーの歌声は耳に染みること間違いなし。時折挟まれる回想はそのどれもが前作と今作のこれまでを繋ぐ大切な思い出であり、ゲームを進めるほどにより深く物語を味わえるはずだ。

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先程紹介したディーナとジェシーも旅に同行しエリーに負けず劣らずの戦闘力を見せつけてくれる。特にディーナはエリーにとって大切な恋人で心に寄り添うシーンも多くより深く二人の絆が感じられるはずだ。
詳しくは語らないがこれ以外にも様々な人間同士の慈愛が感じられる展開が紡がれる。これは憎しみに満ちた復讐劇ではない。その根底に流れるのは間違いなく愛情そのものだ。


余談だが本作には人種・性別・肌の色・性的嗜好において様々な属性を持つ人間が登場する。前作DLCで主人公のエリーが同性愛者であることが描かれたが本作ではそれ以上。こうしたポリコレ的配慮を見て「またか…。」と辟易し精髄反射めいた拒絶反応を示すものがいるかもしれないがちょっと待ってほしい。これにはちゃんとした理由がある。
人類そのものが大きく数を減らしたラスアスの世界において敵と味方それぞれに多様な属性の人々が含まれているからこそ、そうした個人の属性は大して意味をなさないことが浮き彫りになる描かれ方がされているのだ。一見ポリコレ的であるようで実質カウンターに近いとさえ言える。これはゲームをプレイすればすぐ気付くだろう。


復讐の先へ

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中盤でとある真実がつまびらかにされる。その種明かし自体はゲームを進めるうちに段々と予想がついてくるためどんでん返しめいた驚きは少なめ。しかし一種の物語的なピークである点には変わりなく、真実が明かされた段階で前作と同程度なボリュームのためふつうのゲームならそのままEDに突入してしまってもおかしくないのだが、そこから先がまた長い!

理解し納得できる構成であるため蛇足というほどではないとはいえ、最初は少々戸惑ったし間延び感がつきまとったのは事実。しかし実はこれこそ本作の肝と言うべき構成で前半と後半を等しく描かなければ本作のテーマは成立しないのだ。

ゲームが進むにつれ暴力は連鎖し過激さを増す。発売前に開発者自身がラスアス1以上に賛否分かれるものになると公言していた通り、明らかに意図して描いているのは明白だ。「生半可なものを描くつもりはない。僕らは僕らの信じるものを描く。」そんな開発者の声が聞こえて来そうな怒涛の展開の連続に遊んでいて胸がすくような気持ちだった。今作と自分自身の感性がピタリと当て嵌まったことに純粋な喜び、誇らしさすら感じるのだ。

今から本作をプレイするあなたがどのような感想を持つかは分からない。共感か拒絶か、歓喜か憤怒か。しかしこれだけは確かに感じるだろう、しっかりとそびえ立つ信念を。


アクセシビリティ

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最後にこれだけは書きたい。豊富なアクセシビリティの存在だ。字幕の大きさや連打を長押しに変更するのはもちろん、キャラクターを色分けして見やすくしたり文章読み上げ機能、ゲームバランスを崩すほど遊びやすくする設定まである。これほどまでに配慮したゲームを他に知らない。染色体の関係で色覚異常は男性の方が多いらしく、今は自分に関係なくてもそのうち何かしら活用するかも分からない。こういうのって単純にありがたいよね。

普段は全然意識しないけどゲームって結構求められるものが多いじゃないですか。視覚聴覚触覚はもちろんある程度の反射神経と十指の機敏な動きが求められ、据置機ならモニターの前で長時間首や体を固定する筋肉も必要で。そもそもゲームをやらない人からしてみたら手元を見ずに適切なボタンを押す行為自体奇妙に映る訳で。結局何が言いたいかっていうとこうした豊富なアクセシビリティは全ゲームに広まってほしい。それだけ。

気になった部分

倒した死体が消えることがある。これほど生の重みを感じてもらう工夫を凝らしているのに消えるとゲーム的な都合を強く感じてしまい冷める。

PS4のマシンパワーをフルに使っているせいかタイトル画面で既に本体がうるさい。

前作にあったはずのシアターモードが見当たらない。前作と比較してもムービーの量が格段に多く見返したい場面も多いので早くアプデ頼む。なんか最近レビューで同じことばっかり言ってる気がするぞ。

おそらくクリアデータがシステム保存でないのがややこしい。


まとめ

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一月ほど前に前作をプレイした時、ジョエルは感染者を徒手空拳でボコボコにしたり装甲車を倒すなど過剰とも呼べる強靭な戦闘能力・生命力が目立っていた。言わば主人公補正とも言うべきゲーム的な都合に後押しされるおかげで、プレイするうちにどこかヒロイックな気分になり自らの行いに正当性を感じながらプレイしていたのを強く覚えている。結果としてエリーを救う結末に何の疑念も持つことなく受け入れることが出来た。

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しかして助けられた当事者エリーの心情はどうだったか。自らの免疫で薬が作れると信じそのためだけに長らく旅を続けてきたのに気付けば車の中、麻酔で眠らされている間に何も知ることなく全ては終わっていたのだ。前作のネタバレ感想内でも書いたが、その命に世界を救う可能性を秘めていたゆえに強いサバイバーズギルドに苛まれ暗い咎を背負った。ジョエルの嘘に気付きながらも"誓って"と強要したまっすぐな瞳から5年。大きく成長した彼女は降りかかった災禍を前に復讐を決意する。

創作でよく使われる言葉に「正義の反対はまた別の正義」「復讐は新たな復讐を生むだけ」そんな使い古されたフレーズがある。本作をプレイすればそうした言葉を実感として重く受け止めることが出来るだろう。己の正義や義憤で人はたやすく白にも黒にも染まり、あなたは白のつもりでも他の者からみれば黒という事態が容易に巻き起こる。立場の違いそのものが争いを引き起こすという当たり前の事実がそこにあるのだ。無益かつ終わらない戦禍を見続けるうち人間には闘争そのものを求める愚かな遺伝子が組み込まれているのではないかと邪推せずにはいられない。「もし立場が入れ替われば結末は逆だったかもしれない」そう思わざるを得ない演出が随所に散りばめられており、クリアした人同士で感想を言い合うのが面白いゲームであることは間違いない。

めちゃくちゃネタバレに配慮しているため全然書けてねぇという気持ちが強いのだが、それは裏返せば物語の核心にこそ人の琴線に触れる演出が詰まっている証でもある。ぜひ登場人物達に心を重ねてほしい。近いうちにネタバレ版レビューも書くのでどうかよろしく。


今年はまだゴーストオブツシマやサイバーパンク2077など名だたる大作が控えておりGOTYの賞レースは熾烈を極めると思われるが…

もうこれラスアス2がコールド勝ちGOTY決定でいいだろ!!!

ノーティドッグよ、良き物語をどうもありがとう。

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以上、読んで頂きありがとうございました。