さぐりがき

据置ゲーの情熱を取り戻したい男のブログ

なぁ親父、俺今度こそ家出てくから。『HADES』レビュー

f:id:sinodakei:20211015191327j:plain なんか最近やたらローグライクが盛り上がってない?昔からこの手のジャンルに苦手意識がある筆者でもさすがに興味が湧きました。どのくらい苦手かと言うと昔シレン2で鬼ヶ島クリアして満足して辞めちゃったくらい。やり込みで真価を発揮するジャンルなのになんかモチベが続かないんだよね。

というわけで今回は厳密にはローグライトですが『ハデス』をレビュー。ジャンルはアクションで開発はSupergiant Games。

あらすじ

f:id:sinodakei:20211018043555j:plain ここは冥府奥深くに眠る迷宮。死者の怨念と悪魔が渦巻くこの伏魔殿から地上を目指すひとりの男がいた。彼こそ冥王ハデスの息子ザグレウスである。

彼はオリュンポスの神々の力を借りて家出を決意する。全てはとある悲願のために、その命を投げ打ってでも。

ゲーム概要

f:id:sinodakei:20211015191810j:plain 本作はクォータービューのローグライトアクションゲームだ。こう書くと横文字だらけで分かりづらいが、要は斜め見下ろし視点のアクションゲームでランダム生成されたダンジョンの敵を倒し続け踏破を目指す。

肝心の手触りは純粋にアクションゲームとして面白い!

剣の通常攻撃ならボタンを押した瞬間に武器を振り終えてるのでザクザク軽快に敵を切り刻めるし、特殊攻撃は自らを中心とした力強い範囲攻撃が繰り出せる。魔弾と呼ばれる遠距離攻撃は撃った敵を倒して弾を回収するか一定時間経過しないともう一度使えないが、遠距離からチクチク攻撃するだけの単調な戦闘に陥らないようリスクとリターンがよく考えられている。敵が攻撃する瞬間の白く光る溜めを見切ってダッシュでシュパッと回避するのも気持ちいい。どのアクションもレスポンスがとっても早い。

各操作はそれぞれのボタンに割り振られてるので同時押しで暴発する心配もない。シンプルだが磨き抜かれた操作性がやみつきになる。 f:id:sinodakei:20211015203025j:plain f:id:sinodakei:20211015203027j:plain f:id:sinodakei:20211015203022j:plain 戦闘後報酬としてオリュンポスの神々から貰える功徳と呼ばれるスキルは強力だ。アレスなら基本的なダメージ上昇、アテナなら遠距離攻撃を跳ね返すリフレクト、ディオニュソスなら酒でスリップダメージといったイメージ通りの特殊効果を攻撃に付けられる。さらにゼウスやポセイドンならダッシュに落雷や波を付与して移動までもが攻撃手段に変貌するのでただ動くだけで敵が死ぬのが気持ちいい。状態異常の詳しい説明や重複する効果にはしっかり注意書きが書かれるのも親切で分かりやすい。

一度に選べるスキルは3つのうち1つのみ。レア度が高いものを選ぶのが基本だが、汎用性を求めるなら通常攻撃を強化しておけばまず間違いない。 f:id:sinodakei:20211015203259j:plain これら軽快な操作性と神々から賜った功徳、この2つがあれば鬼に金棒どんな相手でも余裕だぜ〜とヒットアンドアウェイを駆使して意気揚々とマップを突き進んでいくのだが、しかし悲しいかなここは腐っても地獄。1匹ずつはただの雑魚でもワラワラ押し寄せるドクロに遠距離攻撃の数々、攻撃すると爆発するツボやトゲトラップなど嫌らしい仕掛けがてんこもり。次第に体力は削られジリ貧な戦いを強いられる。 f:id:sinodakei:20211015191314j:plain

そして案の定あえなくゲームオーバー。男ならいつか必ず倒れるときが来る。せめてその時くらい前のめりで死にたいもんだよね…。

f:id:sinodakei:20211015191348j:plain でも大丈夫!だってここは地獄だから!!何度だって生き返るんだぜ!!

これぞ本作のローグライト要素。こうしてプレイヤーはダンジョンで力尽きるたび拠点であるハデスの部屋に死に戻りまた1からダンジョンに赴くのだ。

冥府の神ハデスの部屋と言うからにはさぞ陰鬱で重苦しい場所と思いきや、意外にも雰囲気はアットホームだ。 f:id:sinodakei:20211015202505j:plain 真っ先に出迎えてくれるお調子者のヒュプノスは陽気な発言で励ましてくれるし、 f:id:sinodakei:20211015202710j:plain 冥府の番犬ケルベロスモフモフしたり… f:id:sinodakei:20211015202720j:plain 常にせわしなく動き回る雑用係のデューサはマスコットめいて可愛らしいし… f:id:sinodakei:20211018065123j:plain 何度も甦るガイコツ相手に武器の試し切りだって出来る。

冥府の底にしては随分と親しみやすい場所だ。そもそもハデス自身が亡者相手に延々事務作業してるってのもツッコミどころでドラゴンボール閻魔大王を思い出させる。どんな作品でもやたらと死後の世界は忙しいお決まりの描写になるのは一体なんでだろねコレ。 f:id:sinodakei:20211016111343j:plain f:id:sinodakei:20211016111341j:plain ローグライトなので死ねば探索中に得たスキルやお金は消滅、最大体力も元に戻ってしまう。しかしダンジョン内で入手した闇の結晶や宝珠に鍵といった素材は手元に残るのでそれらを使ってザグレウスの永続的な強化が可能だ。ダンジョンでの体力上昇とは別枠で最大体力を上げられるし、バックアタックの倍率を上げたりダッシュや魔弾の回数を増やして基本性能を上げるのはもちろん、死神騙しという能力は死んでもその場で復活するのでめちゃくちゃ強い!正直これを取得してからようやく本番といっていいほどの強さを誇る。

さらに宝珠を使って宮大工に回復の水場を作らせるなどダンジョンそのものを有利に造り替えることだって出来る。攻略には直接関係ない調度品で部屋を自由に着飾るのもゆとりがあって楽しい。

こうしてプレイヤーは死ぬたびにザグレウスを少しずつ強化してダンジョンの踏破を目指すのだ。

たまには死ぬのも悪くない

f:id:sinodakei:20211016124012j:plain f:id:sinodakei:20211017235524j:plain f:id:sinodakei:20211017235944j:plain 実は区画ごとに区切られたダンジョンは時として行先が別れており、戦闘後報酬の種類は扉のアイコンで確認が可能だ。

最大体力を優先するのか武器の基本性能を上げるのか、新しいスキルを増やすのか既存スキルのレベルを上げるのか、お金で何を購入するか。この今の自分に足りないものを補い常に一手先を読む選択の連続こそ本作の醍醐味だ。この選択自体はフィーリングでスパッと決められるので時間も取らないし、宝箱のために余分に戦闘したり体力を犠牲にしてカオスの功徳を貰ってハイリスクハイターンを狙うのも面白い。時として功徳を2つ貰えてラッキーと思いきや怒り出して戦闘になるのは気まぐれな神様らしい。 f:id:sinodakei:20211017233612j:plain 素材を使って解放すれば剣以外にも盾槍弓双拳銃と自分の好きな武器を扱える。中でも使いやすいのは盾・槍・弓の3種類。盾は無敵のついた突進に加えてブン投げて遠距離攻撃が可能で一般的な盾の持つ鈍重なイメージとはかけ離れた俊敏な動きが出来るし、槍は発生の速さと異常なまでのリーチの長さで雑魚を寄せ付ける前に完封できる。特にオススメなのが弓で戦う距離を選ばないのは言わずもがな強い。基本的に多くの武器が遠距離性能が高いので魔弾の影が薄くなりがちと思いきや、功徳でビームを放つ水晶に変わるなど全く別の性能になるので差別化は出来ている。

慣れない最初こそ雑魚戦で体力が減ってくると脇腹が地味にキュ〜ッと痛くなってくるような感覚を覚えるが、慣れれば功徳を盛りに盛った武器で雑魚を軽々倒す爽快感が上回る。さらにダンジョンで武器の性能を上げれば妖刀かまいたちよろしく攻撃を三方向に射出してちょっとチートじみた強さになるのでハナクソほじりながらでも余裕になる。 f:id:sinodakei:20211017233755j:plain f:id:sinodakei:20211017233753j:plain f:id:sinodakei:20211017233750j:plain 各階層に潜むボスは弾幕ゲーめいた作りで遠距離攻撃と範囲攻撃をバラまいてくる。雑魚とは異なり初見こそこんな奴に勝てんのかよと弱音がこぼれるものの「今はまだ攻撃パターン覚えてなくてちょっと無理っぽいけど、あと数回挑めばボス倒せるかもな。」と前向きになれる絶妙な難易度なのでつい何度も挑戦してしまう。前述したようにザグレウスを永続強化できるおかげでいつか倒せると非常にモチベが死にづらく、ローグライクのとっつきにくい理由のひとつである死んだら全てが無駄になる徒労感を極限まで薄めているのは大きな評価点だ。

死を恐れないってのは殆ど精神的に悟空だよね。死がペナルティでなく通過点なおかげで「でえじょうぶだ、ドラゴンボールで生き返れる。」ってサイコパスな台詞を胸に、死んで元々の気持ちで戦えるので大胆な動きがしやすいのも伸び伸びと遊べて好印象。スキルの引きが悪ければザグレウス強化の素材集めを優先して次回の探索に備える手堅いプレイも可能。ここらへんめちゃくちゃRPGっぽいというか、死んだらスキルは失うが基本的な能力は持ち越す調整のおかげで凄く遊びやすい印象に繋がっている。どれほど死んでも3歩進んで2歩下がる、着実に前進してると思わせてくれる。

とはいえ死ねば死ぬほど強くなると分かっていてもやっぱり死にたくない訳ですよ。同じボスに何度も負けたままだとやっぱり悔しいし、どうせなら少しでも先へ進みたい。そう思わせるのがクリアまでの強い原動力だ。 f:id:sinodakei:20211018005112j:plain f:id:sinodakei:20211018005109j:plain 出会うオリュンポスの神々は皆ザグレウスと顔見知り。死ねば死ぬほど新たな会話が見れるのもモチベ向上に一役買っている。鬱屈した雰囲気だとそれだけで前に進むのが億劫に感じてしまうものだが、軽い世間話レベルでザグレウスを応援してくれるので賑やかで自然と足が動いてしまう。神の霊薬ネクタルをプレゼントして仲良くなったり英語ボイスも洒落てて格好いい。 f:id:sinodakei:20211018055039j:plain f:id:sinodakei:20211018174449j:plain 実はザグレウスが家出するのはちゃんとした理由が存在し、まるっきり父に反抗するだけの放蕩ドラ息子って訳でもない。拗ねたり無視しないでちゃんと敬語使って反論する礼儀を忘れない青年なので、皮肉屋っぽい一面がありつつも嫌味ったらしさは感じない。親父も親父で息子を気遣ってるとしっかり伝わってくるのでシンプルながら幹の太い物語が楽しめる。 f:id:sinodakei:20211018005049j:plain そんなこんなで脱出試行回数24回目にしてようやく一周目クリア。スキルはこんな感じ。クリアタイムも30分ほどでサクッと遊べました。

本作は周回プレイ前提の作りで一周クリア後は自由に敵を強化できるハードモードが解禁される。正直ここらへんもう少し変化が欲しかったというか、さすがに何度も遊ぶと飽きるのでダンジョンの色合いだけでも変わってほしかった。2周目以降は完全にプレイヤーのやる気の問題だしやり込み要素も豊富とはいえ、せめて壁やマグマの色だけでもビジュアルが変化すればさらにハマれただろう。インディーなので見た目より密度に舵を切ったのは分かりますが。 f:id:sinodakei:20211018055231j:plain f:id:sinodakei:20211018055228j:plain とはいえ一度クリアすれば自分でも驚くほど慣れてボスが簡単に倒せるし、基本ダッシュでギャンギャン移動しつつ隙を見てガンガン攻撃をブチ込む高速戦闘が楽しめる。調子乗ってワンパターン繰り返してるといつの間にか体力減ってて超焦るし、難易度上げるとむしろ雑魚で事故りやすいのも気が抜けないバランス。現在3回脱出しましたが物語はまだ続くらしくとりあえず一休み。まだEDを見てないのでこれからも隙見てちょくちょく遊ぶつもりです。

まとめ

f:id:sinodakei:20211018044117j:plain 高難易度な死にゲーと思いきや軽快なアクションですこぶる遊びやすく馴染みやすい。確かに全体的な要素だけ見れば死にゲーだが、死すらも成長要素に組み込み息苦しさや徒労感を殆ど感じないので高難易度と呼ぶのもどこか的外れな気さえしてくる。それほど慣れると最初と印象が変わってくるゲームだ。

全体的に主人公の能力が強くクリアさせまいという意地悪な調整は殆ど感じられない。ゲーム全体に散りばめられたユーモアも手伝って開発者は絶対にクリアさせるつもりだなと常に感じながら遊べたのが何より良かった。ローグライクにちょっと苦手意識を感じている人ほどオススメだ! f:id:sinodakei:20211018055037j:plain 以上、読んで頂きありがとうございました。