さぐりがき

据置ゲーの情熱を取り戻したい男のブログ

修羅が駆けるは風光明媚な対馬の大地、中世侍幻想譚。『Ghost of Tsushima』レビュー

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さて今回は『Ghost of Tsushima』をレビューしよう。ジャンルはACTADVで開発はサッカーパンチプロダクションズ、SIEワールドワイドスタジオのひとつだ。難易度ノーマルでプレイ時間はおそらく30時間ほど。ネタバレ無しですが展開についての言及はあります。

同社が製作したタイトルは過去に『inFAMOUS Second Son』しかプレイしたことがありませんでしたが実はPS4と同時購入した個人的に思い出深いタイトルでした。PS4が発売してすぐのタイトルだったためか全体のボリューム的にはそこそこで、中規模ながら自由なオープンフィールドで描かれる映像美と破壊表現、丁寧な人物描写などプラチナ取得までしっかり楽しんだものの良くも悪くも手堅く纏まっている印象が強かったです。そのため本作への期待値はまぁ無難に8割といった感じ。商業レビューも手堅い感じでしたし。

しかしフタを開けてみれば大きくボリュームアップした中身や爽快な戦闘、何よりゲーム全体を取り巻く開発者の和を愛する心がひしひしと伝わってくるような丁寧な出来栄えでツシマは予想以上に面白かったです。ラスアス2のレビューでまだツシマ発売前だけどこりゃGOTY確定かもななんて書きましたが訂正します、もしかするとW受賞あるかもしれません。

前置きが長くなりました。それではレビューをどうぞ。

あらすじ

蒙古、襲来。
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舞台は13世紀後半の日本。モンゴル軍の将コトゥン・ハーンは本土征服の足掛かりとすべく大勢を率い対馬を強襲。小茂田に集結した武士達はこれを迎え撃つもあまりに多勢に無勢、なす術なく壊滅し大将である志村は囚われの身となった。
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もはや侵略は時間の問題かと思われた矢先、小茂田の浜辺近くでひとり目を覚ました武士がいた。男の名は境井仁。志村の甥にあたり若き頃より仕える武士だ。
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野盗であるゆなに介抱され戦を生き延びた仁はコトゥン・ハーンに一騎討ちを仕掛けるがまたも敗北。一人では蒙古達に太刀打ちできないと知るや島を奔走し各地に散らばる手練れ達に助力を請う。そして自らも武人としての挟持を捨て暗殺術に長けた冥人(くろうど)として生きることを決意する。
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蒙古軍から虐げられる対馬の民を、そして叔父である志村を救うため仁は修羅と化す。

フィールド 舞台は風光明媚な対馬

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本作の特長はなんといっても風光明媚で広大な大自然だろう。青空と草原の緑の鮮やかなコントラストの中を自由に駆け回ったり、風にかしぐ美しい竹林や銀杏の葉、視界を埋め尽くすほどの紅葉、彼岸花の赤やススキの白、菊に紫陽花蛍の光など情緒溢れる和の美しい風景を思う存分堪能できる。日本の四季の持つ美がこれでもかと詰め込まれた大地はどこへ行っても壮観で見惚れてしまった。
モノクロでプレイできる『クロサワモード』もあるが、個人的にこの色彩豊かな景色を白黒にするのが惜しくて結局クリア後までほとんど使わなかった。

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煙る朝靄や黄昏時に差すピンクがかった陽光など同じ場所でも時間や天候によって様変わりする景色は見応えがあり雰囲気たっぷり。電気などない夜の闇は本当に見づらく正直ライトが欲しくなるほどの暗さなのだが、これがまた鎌倉時代を思わせる絶妙な暗さで映える月明かりが美しい。クエスト進行中も不穏な空気が漂えば強風が吹き荒れ決闘時には嵐に変わるなどその場にふさわしい天候に徐々に移り変わる手の込んだ演出が盛り上げてくれる。適度に誇張し美化されつつも説得力ある日本の原風景は見るからに幻想的で誰しも息を呑むことだろう。

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ランドマークの数も豊富で気力を鍛える稽古場や体力増加の秘湯、何故かやたら僻地にあるアトラクションめいた神社参りで冒険に役立つ護符を手に入れたりと多種多様。まだ行ったことないランドマークが近くにあれば金色の鳥が導いてくれたり雰囲気を壊すことなく自然な誘導をしてくれる。

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狐の巣に立ち寄れば狐が人間とじゃれあうように社に導いてくれ護符を手に入れられる。このキュイキュイ鳴きながら駆け回るモフモフの狐がまたなんとも可愛らしい。本作一の癒し要素だ。

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ゲーム攻略に直接関係するものばかりでなく、和歌を詠み鉢巻を手に入れたり刀をお洒落に着飾る刀装具などファッションに気をつかえる収集要素が意外と多いのもポイント。余力が出てくるゲーム中盤以降はどの防具を選んでもさほど変わりないため普段は軽装の牢人、大きな合戦ではガッチガチの鎧武者とロールプレイしてました。好きなお侍様の格好してスクショ撮るのって結構大事。

洗練されたUI

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本作では目的地までのナビゲーションは風が誘導してくれる。方位形によるアイコンや矢印、ミニマップが無い極限までUIを減らした工夫のおかげで余計なものに視線を奪われることなく探索を楽しむことができ、ススキの穂や草木が風で自然と導く違和感のないアートと利便性が融合した作りは見事というほかない。

周囲を調べるためのインタラクトボタンはR2に設定されているおかげで両方のスティックから手を離すことなく探索できるのも気が利いており、こうしたストレスフリーな設計は全てのゲームで実装してもらいたいくらいだ。タッチパッド上で風を起こし、左で尺八を吹いて天候変化、下でお辞儀などファーストタイトルだからこそ実現できたタッチパッドのユニークな使いこなしも便利。一番多く使うだろう馬の呼び出しは十字キー左でコントローラーの外側にあり覚えやすかったりと全体的な配慮が見て取れる。

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特にフォトモードは十字キーですぐ起動できる。多くのゲームでは両スティック押し込みというやや押しづらい操作で扱いにくいのが難点だったが、この大胆なキーアサインにしたおかげで瞬時に移行でき狙った瞬間を逃さない。「この美麗な自然を前にお前らフォトモード使いたいだろ?だから使いやすくしてやったぜ!」と開発者の心の声が聞こえてくるような仕様にはもはや感謝しかない。ゲーム内のどこを切り取ってもそれらしい写真が撮れるため、鮮やかな原野から人々の何気ない日常まで撮るのに夢中で気づけばゲームが全然進まず嬉しい悲鳴をあげたほどだ。なので今回はいつにも増して画像多め、俺の渾身の対馬フォトグラフを是非見ていってくれよな!

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そして最大の特長はロード時間が皆無なこと。
行ったことのあるランドマークは全てファストトラベルが可能でなんとロードに3秒かからない。このファストトラベルの速さが驚異的でロード時間が無いとここまでオープンワールドは快適なのかと改めて思い知らされた。ゲームの要であるロード時間がここまで短いからこそ他の全ての要素も輝きを増しているのは言うまでもない。

戦闘 清濁併せ呑む戦道

仁の戦い方は正面突破もステルスも自由な陽と陰のハイブリッド型。正々堂々斬り合うも闇討ちするも自由、咄嗟の危険にはクナイや煙玉で対処したりと出来ることは幅広い。どのような非道な戦い方をしても民から評判が下がったりなんらかの不利益を被ることはないため、ゲームシステム的な縛りを受けることなく自在に侍か冥人かロールプレイできるのは純粋に喜ばしい。

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仁の持つ刀は一本のみで二刀流などは不可能だが蒙古兵を斬り伏せるモーションはメリハリが効いておりズバッと斬ってブシュウッと噴き出す血飛沫は見た目にも気持ちいい。三回ほど斬りつけるだけで雑魚敵は容易に沈むので日本刀の切れ味の鋭さを身を持って実感できるのがまた楽しく、斬り伏せた敵がガクンと膝から崩れ落ちる様は時代劇そのものだ!

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本作にはロックオンが存在しないのだが、複数の敵相手にスティックを傾けるだけで標的を次々と変え流動的かつ華麗な動きが可能。盾や槍など敵の持つ獲物に併せ柔軟に型を変えることで爽快感を損なうことなくバッタバッタと斬り伏せて大立ち回りを演じられる。他にも射れば面白いように敵が吹っ飛ぶ長弓とりもち吹き矢など様々な武器が揃っている。
もちろん敵の攻撃モーションに合わせてガードすることで簡単に受け流し(パリィ)も可能で、敵の攻撃を見切って狙う静と動のはっきりした戦いが楽しめる。
回復薬は存在せず気力で回復する仕様もいちいち街に戻る必要がないので探索と戦闘をし続けられゲームのテンポの良さに寄与している。

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他にも敵を見つけると一騎討ちと称して敵のモーションを見切って放つボタン早押し(離し)の居合い斬りや障子越しのステルスキルなど思わず「そうだよコレコレ!これがやりたかったんだよ!」と唸ってしまう数々の時代劇めいた演出が盛り沢山だ。上手く敵の正面から闇討ちできるとシュポンと首チョンパ出来たり人体欠損描写も妥協していない。

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特に納刀・抜刀タッチパッドを右にシュッと払うことで可能でこの動作が刀に付着した血を払う仁の所作と重なる動きでシンクロした気分になれるためよく上手いこと考えたなと感心した。武術家の動きを実際にモーションキャプチャーしたという開発者の侍へのこだわりと情熱は伊達ではなく、もはや日本人である私よりも遥かに詳しいのだろうなと率直に感じてしまったほどだ。

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ゲーム中盤から使用可能となる冥人の型は敵の攻撃を一切受けず七人倒すことで発動できる鬼神の如き技。発動することで画面がモノクロに変わり黒帯が表示され敵を斬るたび画面が真っ赤に染まる。血に濡れた仁を体現するかのような演出と一刀で敵を屠る強力な性能が印象的な必殺技だ。ノーダメージで七人倒すと聞くと難易度が高いように聞こえるかもしれないが、闇討ちや暗器を使えば思いのほか楽に達成できる。しかし斬り合いの中でいちから達成しようとすると意外と難しく良い塩梅の調整に仕上がっている。

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イベント戦となる正面きっての決闘は暗器は使えずただただガチンコの斬り合いだ。戦う前に二人向かい合い静かに鯉口を切る際立った演出が挟まれ場を盛り上げてくれる。

このように本作の戦闘は他に類を見ないほど日本愛あふれる時代劇的な演出と爽快さが楽しめる。気力管理に気を使うのは序盤だけ、赤く光るガード不可の攻撃を避けて叩き込むという近接戦闘のシステムは終始変わらないし、最終的に弓で遠距離からチクチク数を減らすのが効率的になってしまうきらいはあるが個人的にはこれくらいの難易度のほうが遊びやすくて面白かった。ゲーム中盤以降に手に入る混乱させる吹き矢を高台に立つ弓兵に使い同士討ちさせ、高台を登ってきた敵を次々と矢で射るおよそ侍にあるまじきド外道プレイを楽しんだり、ラスボス戦で格好良い写真が撮れないかフォトモードで粘ったりと懐の広さのおかげで存分に楽しめたと思う。

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こういう格好いい写真がいっぱい撮れるんだよマジで。

シナリオ 男が辿る時代劇

本作はローカライズにも手を抜いていない。主人公である境井仁役には剣士キャラといえばもはやおなじみ中井和哉氏が務め、対馬の地頭であり仁の父代わりでもある志村役には大塚明夫氏、蒙古軍を束ねる悪虐非道な長であるコトゥン・ハーン役は磯部勉氏などベテラン揃い。サブキャラクターも石川先生役に千葉繁氏や、ゆなの弟であり鍛冶職人のたか役に山口勝平氏などなど隙のない布陣が揃っている。リップシンクがやや微妙、というより元より合わせる気がないほどズレてる点は少し残念だが、サッカーパンチはアメリカの会社だししょうがないと割り切れる範囲だ。

本作には大きく分けて3つのクエストがある。メインクエストの仁之道、サイドクエストの浮世草、琵琶法師が語る特殊クエストの伝承だ。それではひとつずつ紹介していこう。

仁之道

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メインシナリオは境井仁が蒙古襲来を跳ね除け対馬奪還という単純明快な目標の中で対馬の民のため己の武士道に背き冥人に身をやつす仁の姿が描かれる。最初こそ仁に護られた民達が口を揃えて「お侍様の戦いじゃない…。」と恐れおののくシーンこそあるものの噂が広まるにつれ民から尊敬を集める王道あふれる仕上がりだ。
特にシナリオの節目で描かれる時代劇の醍醐味である大規模な合戦シーンは昂ること間違いなし!!!
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昨今のトレンドである親子ものとしてのテイストも色濃い。志村は豪胆さと優しさを持ち合わせた武士道を重んじる強き侍で、戦で父を亡くした仁にとっては父代わりの存在でもある。幼少から武士道を叩き込まれたからこそ生じる仁の冥人に堕ちる苦悩、それを知った志村の失望や修羅と呼ばれるほど非道に手を染めた故の展開などどの描写も丁寧で感情移入しやすい。
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腕の立つ竜三や心優しき鍛治職人たか、堺井家に仕える百合など仁を支えるサブキャラクター達も魅力的。
特に侵略者であるコトゥン・ハーンは殺しを愉しむ明確な極悪人として描かれているため一切の妥協無しに立ち向かえて最後まで純粋に物語にのめり込めた。

余談だが、諸説あるとはいえ現実の鎌倉武士は蛮族そのものだったらしいことは自分もプレイ前から理解していた。しかしそれとは異なる民草のために剣となり盾となる良きお侍様である境井仁の姿に違和感を覚えることはなかった。なぜなら仁義を捨ててでもモンゴル軍に立ち向かうという構図が確率しているからこそリアリティラインを気にせずどっぷり浸れる傑作時代劇に仕上がっていたからだ。こうしたフィクションとして割り切った作りにしてくれたことを素直にありがたく思う。

浮世草

メインクエストだけでも十分面白いがやはりオープンワールドと言えば豊富なサイドクエストが魅力だ。本作では大きく分けてふたつあり、単発のものと連続する仁の仲間キャラクターのエピソードが存在する。

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モブとの会話シーンは他のゲームではあまり見かけないロングショットのカメラワークが多用され静けさや風情といった侘び寂びをより印象深いものにしている。ゲーム序盤こそ困窮した民をお侍様が救うというありきたりなものでやや地味な印象を受けたが、ゲームを進めるうち勧善懲悪には行かない展開や祟りに河童など古来の妖怪の仕業と思わせるようなバリエーションに富んだクエストも増え面白くなってきた。古風な言葉遣いもかえって新鮮でテンポの良い会話が続く。仁も時として殺すしか能がないのだろうとつつかれたり、薬師から殺しを楽しんでるのではと核心を突くような台詞を言われたり見ているこちらがドキリとするものが多い。
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仲間達も個性が強く、メインシナリオでも出番の多いヒロインゆなの荒んだ過去は生きるだけで精一杯な鎌倉時代の荒々しさを強く感じとれた。
一族を皆殺しにされた恨みで復讐を誓う政子は高齢ながら犯人を突き止めようと憎しみを糧に突き進む姿が鬼婆と呼ぶにふさわしい。怒り狂い過ぎてて正直ちょっとシュールな笑いを引き起こすほど憎しみに満ちておりある種ネタキャラめいているとさえ言えるがその物語の終わりは虚しいものだ。
裏切った弟子を罰するため旅立つ弓取の石川先生は老練で例えるなら権謀術数に長けた戦国武将のようでもあり癖の強い海千山千の古強者に仕上がっている。
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仏を守るために戦う僧兵典雄は丸っこい図体につぶらな瞳で本作屈指の癒し系とも言うべき風体だが彼の行く末は本作随一で惨い展開が用意されていたり、お調子者の商人堅二はなんとも憎めない人柄だったりと仲間達のエピソードはどれも印象的なものが揃っている。

全体的に重苦しくダークな展開が多いものの不思議と気分が沈むことはなかった。一貫して諸行無常の世である乾いた雰囲気に満ちていながらも主人公である仁の静かで深い思いやりが光るおかげかもしれない。ロードが殆ど無かったおかげで話の続きが追いやすくキャラクターエピソードを全部遊んだ上でEDを見ることができたのでクリア後の達成感もひとしおだった。

伝承

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伝承と呼ばれるサイドクエストは琵琶法師の語りによって始まる。演じるのは大ベテランの羽佐間道夫氏。墨絵と三味線の心掻き乱すような音色と共に伝承が語られ、 時に荒々しく時におどろおどろしく奮われる五七のリズムに乗せた軽妙洒脱な前口上はこれがまたなんとも聞くだけで心地よい。正直この語りを聞けただけで本作を買ったお釣りが来るというか、ある意味神がかり的とさえ言えるクエストへの期待が爆上がりする演出だ。
エストの中身も通常のサイドクエストとはまた一風異なる凝った中身なのも特徴で、絵巻を頼りに秘蔵の武器や鎧を探したり時に天狗と戦ったりと面白いものばかりで終わるのが惜しいと思ってしまう程に楽しめた。

シナリオ まとめ

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本作のクエストはアイコンの浮かぶ人物に話しかければ受ける/受けないといった選択肢が表示されずにすぐさま話が進むためテンポが良い。受けないという選択肢が無いのは侍が民のために尽くすのは当然だからだろう。
仁は大人びた落ち着き払った侍で常に冷静沈着、思慮深く口数は少なめだがその無骨さこそが魅力的。民を救う大義の元に邪道を突き進む葛藤の描写こそあるが必要最低限で日和ることなく割り切り修羅へと化ける覚悟が強調されているため共感しやすい。正直もう少し砕けた一面も見てみたかったが理想の侍の体現者であると考えれば納得の人物像だ。

しかし本作のシナリオにもひとつだけ欠点がある。女性キャラがブサイクな点だ。老婆である政子は抜きにしてもヒロインポジションであるゆなは骨格がゴツくてお世辞にも可愛いとは呼べず、フィクションなのだからせめてもう少し可愛くしてあげても…と感じずにはいられない。他にも楓や巴など大和撫子を連想させる雅な名前に期待を胸に膨らませているとユニークな顔立ちのおなごばかり出てくるのが割と残念だった。

マルチエンディング

本作の話の筋は一本道であり、どのような戦い方をしようが二択の質問のどちらを答えようが物語になんら影響を及ぼさずルート分岐はしない。しかし最後にひとつだけ大きな二者択一を迫られる場面がある。それがマルチエンディングだ。

誉れを受け入れるか、誉れに背くか。

これまで武士の誉れを捨て冥人として生きた仁にとって最後にこれまで以上に極めて重い決断が迫られる。確固たるひとつの物語を体験させつつも最後のみ二択を設けたおかげでプレイヤーが自らを振り返り重みが出る見事な構成だと感じた。
正直こうしたマルチエンディングにしてしまうと人によって大きくシナリオが変わってしまうため直接の続編が作りづらくなる弊害を心配してしまったものの、選択したあと他のプレイヤーがどちらを選んだか%を表示してほしくなったほど人によって好みの分かれる選択肢だ。ちなみに私は誉れに背く道を選んだ。あなたはどちらを選ぶだろうか。

気になった点

敵の弓兵が矢を射る際の掛け声が空耳でドーシヨードーシヨー言ってるようにしか聞こえず笑ってしまう。

瀕死の敵にとどめを刺すことで気力が回復するので「お主だけは生かしておいてやろう…」みたいなロールプレイをしようとすると効率が悪い。

サイドクエストの足跡が見づらく追跡するのが面倒くさい。

キャラのあとをついていく場面で障子をピシャッと閉められると拒絶されたようで地味にイラッとする。そこは開けたままにしてくれ。

崖登りで行きたい方向にしっかりとまっすぐ入力しないと時折反応しない。行きたい方向に何度もグリグリ動かすことで解決したので、もしかしたら自分のコントローラーの調子が悪いのかもしれないが。

笠を被るとイベントシーンで顔が見づらくなってしまう。もう少し顔を見やすいように被ってほしかった。

雄大な自然が舞台だからこそ有名な鳥キジバトホホッホホーホーの鳴き声が朝方に聞こえないのは少し寂しい。

フォトモードの黒帯とスタンプの種類を増やしてほしい。

まとめ

発売前の期待はさほど高くなかったがその予想は良い意味で裏切られた。全体として侘び寂びを強く感じさせる世界観と王道の物語、爽快な戦闘や日本の四季の色彩美などを見事に描ききっておりプレイするうち鎌倉時代にタイムスリップしたかのような感覚を覚えた。便利なUIや無いも同然のロード時間など快適性にも優れ、特に優秀なフォトモードで写真を撮るのが何よりも楽しい。

こうした純粋な和を基調とした作品こそ日本のゲームメーカーから出してほしかったという意見も中にはあるだろうが、個人的にはそうは思わない。なぜならプレイしている最中に開発者の「日本の自然美と侍を真正面から魅力的かつ娯楽として描く」 という信念のもと、日本文化に対する深い愛と尊敬に溢れる想いがひしひしと伝わってきたからだ。それを無視して日本が舞台だから日本のメーカーが作ればよかったと軽く口にするのはその気が無くとも浅慮だと思う。

時代劇でも珍しい元寇を舞台に心ゆくまでチャンバラ活劇を楽しめた本作。その驚異的な作り込みは圧巻で誰にとっても楽しめる紛れもない傑作と言えるだろう。

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以上、読んで頂きありがとうございました。


オマケ 対馬写真集

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