さぐりがき

据置ゲーの情熱を取り戻したい男のブログ

今再び蘇る星の運命と一筋の光 『FINAL FANTASY Ⅶ REMAKE』 レビュー

FF7Rがついに発売されました!

クリア時間は29時間。難易度は序盤はノーマルで遊んでいたのですが中盤あたりからイージーでサクッとクリアしました。
原作のFF7は昔1度プレイ済。本作をプレイするにあたり改めて再プレイなどは行なっていません。

いやーグラブルの水古戦場終わってからプレイし始めたんですけど、前回の記事からそこそこ時間空いちゃいましたね。まぁこのブログは速度重視じゃなく気分重視なのであしからず。

sagurigaki.hatenablog.com


昔書いた体験版の感想はこちら。本作に対する僕の期待の程と方向性が分かります。よければ読んでね。



目次

リアルスケールで描かれるミッドガ

RPGにおいて最も有名な街のひとつであるといっても過言ではないミッドガが現代のグラフィックで生まれ変わりました。




上層部は高層ビルが立ち並ぶ現代的な街が広がり、下層はスラム街の二重構造。そんなミッドガルを舞台にクラウドなんでも屋として数々のクエストをこなしていきます。
スラム街には猥雑なネオンやストリートアート、地面に落ちたタバコの吸殻などいかにも治安の悪そうな雰囲気が随所に見られ、それでいてどこかたくましさを感じさせる情緒がふんだんに盛り込まれています。





本作は発売前の告知通りミッドガル脱出までを描いているためワールドマップは存在しません。しかし巨大なパイプや鉄骨が描かれた美麗な背景によって原作FF7の持つ独特なスチームパンクな世界観と、ミッドガルそのもののスケールの大きさを描くことに成功しています。



なにより特長的なこととして




モブがめっちゃ喋る!!!





ボタン押して話しかけてないのに好き勝手に喋る。何気ない日常の雑談から神羅に対する愚痴、子供の笑い声や男女の愛の囁きまで今まで遊んだどのゲームよりもモブが喋る。 しかもクエストの進行度により話す内容が変わる芸の細かさ。その種類・量ともに圧倒的です。ブルーレイ2枚組の容量の多くは音声データなのでは?と考えてしまうほどに喋ります。スクショじゃなにひとつ伝わらないのがもどかしい。


このモブの台詞の何が良いって、台詞が字幕で表示されないところです。設定変更で字幕を表示することもできますが、あくまでデフォルトでは字幕表示されません。それだけ聞くとなんで字幕表示しないのか疑問に思うかもしれませんが、僕はあえて字幕表示しないこの演出がめちゃくちゃお気に入りです。

なぜ字幕表示しないのが気に入ったのか、それはあくまでモブとクラウドとの対話ではなくモブ同士が喋る街の喧騒という表現に徹しているためです。この字幕が無いおかげでモブの話声に聞き耳を立てる行為がなんともプレイ中はそれらしくて、これ以上ないほどに実在感を持ってモブの息遣いを感じ取ることができました。




特にゲーム中盤で訪れることになるウォールマーケットは露天や出店が立ち並びアヤしさ満点!そんな人でごった返す夜の街は好き勝手繰り広げられる会話の数々があるからこそ輝いているといっても過言ではありません。





そんな街並み以外にもFF7といえばミニゲーム、そんなイメージ通りダーツやスクワット、音ゲーにバイクレースといった多彩なミニゲームが詰め込まれています。


ショップではアレンジナンバーを購入可能。この音楽に対するこだわりはゲーム全体を通して伝わってくるほど一貫しており、聴き馴染みあるアレソレがここぞという場面で使われているので必聴です。





が、そんな作り込まれたミッドガルにも残念な点が。


一本道。



ゲーム全体の進行を通して一本道な作り。厳密に言うと一本道ではありませんが、ストーリー進行に沿って移動するため後戻りは不可能です。この自由度の無さが極端なストレスで個人的にギブアップしかけました。

同行する仲間達と膨大な会話が繰り広げられるとはいえ移動そのものは基本的にほぼ徒歩で変わり映えがなく、裏読みロードのために強制的に歩かされる場面も多々あり長距離を延々と移動するのは単純に苦痛でした。距離が短いと会話中に目的地に到着してしまうため理解はできるものの、さすがにこの単調さは目に余ります。


イベントを無視して少しでも先へ行くとWARNINGの文字が出現し通せんぼ。時には街中でさえ移動を制限されるのはさすがにやりすぎでしょ。
道幅が極端に狭い、移動そのものに迷うことが少ない、時にシチュエーションの変化に乏しく実プレイ時間以上に体感時間が長い等々、複数の要因によって遊んでいる感覚より遊ばされている感を強く覚えてしまい、特に序盤は割とイライラしながら移動してました。




移動がつまらないと何が起こるって、あれだけ最初良いと思ってた街中でのモブの会話を一切無視して目的地に一直線に向かうようになるんですよ。めんどくさくて。巷では移動が楽しいゲームは名作の法則なんて言われますが、その法則からはだいぶ外れてましたね。活気あるモブの演出とは裏腹に、移動における圧倒的自由度の無さは見過ごせないほど退屈です。せっかくの綺麗な背景も延々無味乾燥な移動が続くと次第に色褪せハリボテのように感じられたのがさみしかった。
僕自身他のゲームでもめちゃくちゃ寄り道するのが好きなほうでもなく割と導線に沿って遊ぶ派なのですが、そんな僕でも本作のほぼ導線オンリーの作りは精神的にだいぶ堪えました。

最初本作がブルーレイ2枚組で作られると聞いた時何が楽しみだったかってミッドガルを自由に駆け回れることを期待してたんですよ。分作にした理由も「いくらミッドガル脱出までとはいえ、おそらく次回作ではミッドガルに戻れないから本作で堪能させる気なんだな」と勝手に予想していただけに探索要素が完全にオミットされていたのはとんだ期待外れでただただ残念。体験版の感想記事には探索についてさらっとしか触れていませんが、それはむしろ当たり前のように探索できると信じていたから書かなかった裏返しであり、余程期待が大きかったのだと自分で改めて思います。

この作り込みと自由度はトレードオフとはいえミッドガルを自由に行き来することでFF7の世界観に没頭したかった思いはクリア後の今も変わりません。


コマンドとアクションが融合したバトル

体験版の感想ではコマンド:アクションの割合が6:4と書きましたが、製品版を遊んでみてその割合は8:2に感じました。一見するとアクションぽい見た目ですが、その実だいぶコマンド寄りです。



たたかうや防御で溜めたATBゲージで攻撃するか回復するか。少ない手札をいかに切るか。正にターン制の如き味わいが楽しめます。弱点を突いてバーストさせないといつまで経ってもダメージが通らず、どれほどレベルが上がってもATBゲージの最大数は2のままなので一手一手を慎重に切る面白さは健在です。

敵の攻撃力が比較的高めに設定されているため、立ち回りに不足したつもりはないのに気がつくと瀕死に陥っている場面も多々ありました。移動が極端に制限された本作ではレベル上げをできる箇所も限定的であり常に開発者の想定する歯応えのあるゲームバランスで戦えます。 ゲームを進めると地面に毒を吐く敵や睡眠ブレスといった搦手を使う敵、物理と魔法を交互に反射する敵など一筋縄ではいかない敵が増えバリエーションも多彩です。



アクション要素の2としては位置取りとキャラ切り替えが挙げられます。クラウド・バレット・ティファ・エアリスの4人のうちいずれか3人でパーティを組むのですが、クラウドを使って大剣でなぎ倒すもよし、ティファで打撃を浴びせ続けるもよし、バレットやエアリスではMPを消費する魔法を使わずとも遠距離攻撃が可能でそれぞれ異なった操作感が味わえます。

お気に入りのひとりを使い続けるのではなく全員を適時切り替えながら戦うのでどのキャラもクセが無く扱いやすいものの敵は操作キャラを執拗に狙うため、場合によっては頻繁に切り替える必要があり忙しい。ドラクエで例えるなら全員を「めいれいさせろ」で常にコマンド選択してるプレイ感。非操作キャラがあまり目立った活躍をしてくれないのは少々物足りなかったかも。



初見の敵に対応するためみやぶるや盗む、弱点を突くために4属性のマテリアの装備は必須。割と頻繁にパーティメンバーが入れ替わるので必ず準備しておきましょう。戦闘中のマテリア付け替えは不可のため装備し忘れると泣きを見ます。


原作同様マテリアの成長要素以外に、戦闘で得たスキルポイントを使って武器もカスタマイズさせられます。ポイント振り直し自由、自動成長可能でそこまで難しく考えずとも取っつきやすいので楽。




目玉となるボス戦ではある程度HPを減らすと大仰な映像とともに2回ほどフォルムチェンジし、更に熾烈な攻撃を繰り出してきます。
このカットシーン、目まぐるしくカメラワークが変化しながらシームレスにバトル曲も遷移するので「なんかよく分からんけど凄いぞ」感をガンガン出してくるためテンションが上がるものの、その時間が地味に長い。 「ちょっとコントローラー置いちゃおっかな、でも戦闘中だしな…」と逡巡させられるくらいには長い。しかもカットシーン中は操作不能にも関わらず常時戦闘UIが表示されたままなのでどこか映像に集中しづらいのが割とストレス。せめて映像中はUIオフ、戦闘再開したらUIオンといった分かりやすいメリハリがほしかった。キャラ操作中に頻繁に映像が入って操作不能に陥るのは水を差された感覚が強かったです。


アクションとコマンドが融合した戦闘は面白く、最初は2回ほどゲームオーバーになりながらもノーマルで遊んでいましたが、退屈な長距離移動→硬い雑魚敵・演出過多なボス戦→後述する長時間のカットシーン、の3つのサイクルを延々繰り返すうち歯応えのあるバトルを続けるのが段々億劫になり、中盤に入るあたりでイージーに変更しました。欲を言えばどれかひとつでいいからもう少しコンパクトにまとめてほしかったですね。

緻密・細密・過密に描かれたシナリオ


カットシーンが長い。丁寧だが長い。




会話から仕草から細かい演出諸々を一から十まで余すところなく密に描かれた映像がこれまた長い。カットシーンが終わったらまたカットシーンが始まるなんてざらにある。おそらくプレイ時間の半分近くはモニターをただ眺めていたのではないかとすら思います。実際はそんなことないでしょうけど。


ここまでカットシーンが長いのもそれもそのはず、ほぼ時系列を飛ばすことなく、登場人物の目線や指先ひとつまで余すところなく描いているためであり、鑑賞中はそこに込められた感情がありありと伝わってきます。
ド派手なアクションシーンだけでなく、空気感も含めた上で日常会話も丹念に描く様は「こんなところまで描写するのか!」という驚きと興奮がありました。




あれだけ最初にクラウドを毛嫌いしていたバレットが時間をかけ徐々に信頼を寄せる様子や、幼なじみのティファとの子供時代の思い出、原作ではモブに過ぎなかったビッグス・ウェッジ・ジェシーとの新規エピソードも盛り込まれ、行く先々でセフィロスが登場するなど原作ではたった数時間だったミッドガル脱出までがトコトン再構築されています。




特にエアリスは可愛らしさとたくましさが同居する性格に描かれており、個人的に原作発売から23年越しにその魅力に気付いたといっても過言ではありません。
率直に言ってあざといのですが、たどる運命を知っているからこそ中和されている部分もあり良い塩梅に感じました。






ただキャラクターの魅力的な描き方は成功している一方やはりそのが多く、丁寧さに対しそっくりそのままやきもきする焦ったさを覚え「こんなところまで描写するのか…。」と辟易し思わずスマホに手が伸びることもありました。ダンジョン攻略中にもお構いなしにカットシーンを見せられ会話劇にとことん時間が費やされるのはさすがにゲームをプレイさせたいのか映像を観せたいだけなのか困惑します。一応スキップ機能も存在しますが、ここまで尺が長いとスキップしたら原作プレイ済でも訳が分からなくなりそうで使いませんでした。

リアリティラインを明らかに無視した見ているこちらがポッカーンと口を開けてしまう演出も散見され、明らかなギャグシーンでトボけたBGMが鳴りつつもイマイチ乗り切れない笑いどころも存在するなどどこか外れた演出もありました。ここらへんは自分でも線引きがよく分からない部分でもあるので完全な好みですが。



個人的に極度の移動制限によりゲームプレイの満足感を得られないまま延々と長尺のカットシーンを見せられたことで「いいから早く操作させろよ」と矛先がこちらに向いてしまった感は否めません。鑑賞中はマジで長ぇよ長ぇよずっと言ってた気がする。
特にゲーム全体に渡りいつどこで長々とした映像が始まるのか分からないのがプレイ意欲を減衰させる決まり手で、プレイを一旦辞め他のFPSやソシャゲ周回に逃げるほどでした。レビューが随分遅れたのはそのためです。


怒涛のED

そんなカットシーンに様々な感情を覚えつつも、ゲーム終盤はさすがに盛り上がりました。

EDには大きなサプライズが仕掛けてあります。本作の肝、要といっていい。
「運命を打ち破る」というテーマと共に現代にFF7が蘇る理由がここにある。


おそらくまだ未プレイの方の中には完結したら遊ぼうと思っている方もいると思うのですが今すぐプレイしてほしい。なんかこういう言い方すると返ってハードル上がって良くない面もあるのですが、もう1度言う。今すぐプレイしてほしい。期待外れだったらそれで構わん。今すぐプレイしてほしい。クラウドを信じろ。


なぜこれほど今プレイすることを推奨するのか、理由は単純。続編発売時に公式が本作の核心に触れるプロモーションを行う確率が高いから。コレです。コレしかない。そもそも公式がネタバレしなくても時間が経てば経つほどネタバレに遭う確率は上がりますし。マジで今すぐプレイしてほしい。
延々と退屈な移動に苦しめられた僕としては、このリニアなゲームデザインそのものが数年経つと他のゲームと比較して更に遊びづらいものになるだろうという予感もあります。まぁPS5ではロード時間の劇的な短縮によってゲームそのものが大きく変わると予告されているのでそのぶん続編にも期待が持てるってもんです。

いやね、完結してから遊びたいって考えも分かるのですが…だって既に5年待ったんだぜ⁉︎ その上さらに全何部作になるかも決まってないのに完結まで延々待つのは体に悪いよ。我慢すんな。今遊べ。
「あー、FF7R昔遊んだけどそういえば次もう発売したんだっけ?」そんな風にふと思い出すくらいのゆるゆるなスタンスで待つためにもプレイ推奨です。



まとめ

ストーリードリブンでガッチガチなムービーゲー兼リニアゲー。
登場人物を上手く魅力的に描いておりクラウドやティファ、エアリスといった見知ったキャラクターが23年の時を超え鮮やかに細やかに描かれる。クラウドといえばいつしかクールキャラ代表みたいなイメージが出来上がっていたものに人間味ある演出を加えたことでグッと親近感が湧きました。

しかし原作でたった数時間だったものを大きく膨らませた弊害でしょうか。ミッドガルを自由に行き来しての探索は不可能で、窮屈で退屈な移動と冗長なカットシーンにプレイ時間の大半が費やされるためテンポが悪い。リメイク作で物語ありきのゲームとはいえあまりにシナリオ至上主義的で半映像作品と言っても差し支えない作り。自ら遊び体験し切り開く感覚は皆無でプレイを押し付けられている感覚が強く伴う。

映像重視のストーリーテリングやシナリオ上の「運命を打ち破る」ための布石として意図したリニア進行なのは明白で理解はできるものの、ゲームを遊ぶ主導権をいくばくか奪われたかのような決して満たされることのない飢えと渇きを抱えたまま遊ぶのは苦しさも伴いました。


そして最後に待ち受けるEDの演出はこれだけで絶賛する人がいてもおかしくない程のサプライズが待ち受けており、本作に対する評価が続編への強固な期待に支えされている面は否定できないものの、分作にした意味と意義をしっかりと感じ取ることができました。


新約新説リブート。その言葉のどれもが当て嵌まる新たなFF7ユニバースの幕開けに期待しつつ、続編の発売を首を長くして待つこととします。

最後になりましたがレノ役をつとめた藤原啓治氏が逝去され本作が遺作となりました。ご冥福をお祈りいたします。

以上、読んで頂きありがとうございました。





sagurigaki.hatenablog.com
ネタバレ感想はこちら。