さぐりがき

据置ゲーの情熱を取り戻したい男のブログ

冒険野郎よ永遠に。 『アンチャーテッド 海賊王と最後の秘宝』 レビュー

ジャンルはアクションアドベンチャー。開発はノーティドッグ。過去作はアンチャーテッドコレクションのみプレイ済み。クリア時間15時間58分。難易度は中級。
追加エピソード『古代神の秘宝』もクリアしたので最後に書きました。

ラスアスをクリアしたのはいいけどそういえばこっちも積んでたねとノーティ繋がりで思い出し今更プレイ。特に不満がある訳では無かったが他のゲームに目移りして地味に積んじゃったパターンでした。


目次

あらすじ



舞台は前作から3年後。世界一周を果たしたフランシス・ドレイクの子孫を自称する男ネイサン・ドレイク(通称ネイト)。過去に幾度も大冒険を繰り返した腕利きトレジャーハンターの彼もついに廃業。定職につき妻エレナと結ばれ幸せな結婚生活を送っていた。



そんな彼のもとに15年ぶりに実の兄サミュエル・ドレイク(通称サム)が現れる。かつてもうひとりの共犯者レイフとネイトの3人で海賊エイブリーの遺した莫大な財宝を追い刑務所に潜入したが1人だけ脱獄に失敗、そのまま死んだものと思われていた。


感動の再会もつかの間、サムはとある話を切り出す。自分が脱獄できたのは麻薬王アルカサルのおかげであり、その見返りとして財宝を探し出し分け前を渡さなければ命が無いのだと。



実の兄の命が狙われていると知ったネイトは渋々協力を引き受ける。これで最後と自分に言い聞かせるように。しかしこれこそ最後にして最大の大冒険の幕開けであった。


さあ、冒険の始まりだ。



美麗なグラフィック


風景がヤバい!!


水しぶきがヤバい!


フローリングまでヤバい!!

前作から圧倒的進化を遂げた実写と見間違うほどのグラフィックが凄い。特に闇夜を照らすライトや火の粉舞う炎、警備の赤色灯など光の表現は本物そのもの。現代が舞台でフォトリアル志向の映像美のためアッと驚く非現実な描写こそ少ないがどこを見渡しても素直に綺麗。4年前のゲームでこれなのだからPS5やUE5などにも増々期待できるってもんです。

もはや当たり前となった表現だがちゃんと雪上には足跡が残り車で悪路を走れば泥水が跳ね上がる。人里離れた大自然では鹿や羽虫、洞窟ではコウモリやネズミが生息していたり、その土地の植生までしっかりと分けて描写されているおかげで世界を股にかけ冒険するトレジャーハンター気分にどっぷりと浸れるのが何より楽しい。

俺ゲームでフローリングに目を見張る経験したのって多分初めてじゃないかな。いつも見慣れてるからこそ分かる光の反射具合や質感の作り込み。景色だけでなくキャラクターの肌や服の布地も見事な出来映え。おみそれしました。


この絶景の中ネイトは岩壁や石壁をひたすらよじ登る。

君、フランシス・ドレイクの子孫じゃなくてアサシン教団*1の末裔だよね!?

出演するゲーム間違ってるよと呼びかけたくなるほど驚異的な握力と身体能力でピョンピョン自在に飛び移るのがこれまた楽しい。
これほど映像がリアルだと登れる場所かどうか分かりづらそう、なんて心配は無用。なぜなら掴んで移動するための突起した岩や亀裂は分かりやすくアイコン化されてるといってもいいほどプレイすれば一目瞭然だからだ。スティックを行きたい方向へ傾けるだけで自然とスイスイ登れるのでストレスフリー。こうしたゲームとしての遊びやすさに徹底的に配慮しているからこそ映像美が堪能できるのは言うまでもない。


今作で新しく追加されたロープアクションにより、特定の場所に引っかけての昇降や足場を飛び移る、壁伝いに走るなどよりダイナミックなアクションも可能になった。急斜面を滑り降りて奈落の底に落ちそうなところをロープで命からがら脱出なんていかにもなシチュエーションも味わえる。


シリーズお馴染みの謎解き要素も健在。移動や戦闘の合間の程よい頭の体操として機能しており、海賊の残した秘宝を解き明かす雰囲気作りに一役買っている。

行き詰まると同行キャラクターが助言をくれたり、それらしい場所にさりげなく立ちプレイヤーの視線誘導を促すなど押し付けがましくないヒントの与え方も絶妙だ。



公式にワイドリニアと称される幅のあるマップのおかげで収集要素であるお宝探しも探索しがいが出たのが嬉しい。

かつてPLAYする映画とキャッチコピーが付けられたこともある本シリーズだが、今ではプレイ動画で済ませる人も多いだろう。しかしふと立ち止まり絶景を眺める、落ちてしまいそうな崖下をそっと覗く、そんなネイトを通して世界を見渡すひとつひとつの体験の連続が没入感を深めるのだ。是非自らプレイしてもらいたい。




そして忘れちゃいけないのがダイナミックな演出。
ド級かつド迫力!
掴んだ岩や大抵の橋が崩れるのはもはや序の口でそれ以上にスケールのデカい困難が待ち受ける。特に中盤のカーチェイスは圧巻。逃げ惑う住民をよそに雑多な街中を椅子やテーブル、フェンスなどをバッタバッタと吹き飛ばしなぎ倒しながら突き進むのだ。はた迷惑なことこの上ないがぶっ壊した品物が物理演算でゴロゴロ転がるのがまたキモチイイ。

ゲームプレイ前はいつものようにネイトお決まりの口癖「やべやべやべ」を一緒に叫んで楽しもうと思っていたがド迫力過ぎて開いた口が塞がらず声が出ないのは嬉しい誤算だった。どこまでも映画的な臨場感あふれる演出のおかげで遊べばきっと誰もが虜になるはずだ。


戦闘


戦闘はおなじみのTPS。持てる武器はマシンガンとピストル一丁ずつ。カバー状態で照準を押さなければ身を乗り出す事なく射撃できる。敵の銃撃によってカバーしている柱が削れたり破壊表現もリアル。同行する仲間NPCも賢くヘッドショットを決めると褒めてくれたりステルス中に勝手に敵を倒してくれたり共闘感もバッチリ。

敵のAIもこれまで以上に賢く、気付いたら後ろに回り込まれ被弾してゲームオーバーになる場面も多かった。ゲーム後半になるとスナイパーやグレポンRPG7など重装備で固めた一筋縄じゃいかない敵がわんさか登場し歯応えも十分。

個人的に大勢相手に辛くも切り抜けるシチュエーションってだいぶそそるというか、ついついマシンガンよりピストル片手に戦ってしまう。だってその方が絵的にカッコいいじゃん。


ネイトはその超人的な身体能力にも関わらずペラッペラな低体力で不用意に体を晒せばすぐさまあの世行き。ド派手な演出に気をよくして無双めいた戦闘を期待するとまず間違いなく面食らうだろう。ステルス要素を活用しないと切り抜けられない場面も多いので遮蔽物や草むらに身を隠し敵戦力を一人ずつ無力化していこう。マシンガン系の武器を手にしたままステルスキルを行うと銃を使って敵の首を絞めたり、空中から敵にグーパンで奇襲を仕掛けたり多彩なモーションもボタンひとつでカンタンに出せる。


難易度は5段階、エイムアシストや連打を長押しに変更するユーザビリティに富んだ充実したオプションは◎。個人的にモーションブラーを完全にオフにできるのは嬉しい。中級でも難易度はそこそこ高めなので、映画的演出をスムーズに楽しみたい人は初見を最低難易度で遊ぶのもいいだろう。

シナリオ

ド派手なアクションシーンに定評のあったアンチャーテッドシリーズだが、今作では人間ドラマにも力が注がれている。



これまで持ち前の機転と幸運で数多の死線を潜り抜けてきたネイトも前作のラストでついにエレナと結ばれた。序盤からお熱い抱擁をプレイヤーに見せつける2人は正にベストカップルと呼ぶにふさわしい。
自室にはこれまでの冒険のお宝…というにはちょっと頼りない思い出の品の数々が並ぶ。ゲーム序盤で拝むことになる破天荒な生き方から足を洗い普通の生活に馴染もうと冒険を渋るネイトの姿はこれまでの彼を知っているとちょっぴりさみしい。


そんなネイトを説得したのが実の兄サム。15年もの長きに渡り塀の中に居たため未だにかつて狙った海賊エイブリーのお宝に興味津々。良く言えば考えが若い、悪く言えば成長していない。嬉々として盗みの計画を語る素行はまんま不良中年そのもので紫煙を燻らす姿がやけに様になる男。


はっきり言って完全な後付け設定で作られたキャラクターなのだが、子供時代を操作する回想パートで兄弟の絆をしっかり描いてるおかげですんなりと受け入れることができた。ネイトの幼少期は3作目でスリに励む悪ガキとして描かれたが、今作ではさらに幼い頃のひよわな姿で登場するためサムとの対比が強調されている。


冒険中多くの時間をネイトと行動を共にし兄弟ふたり似た者同士何気ない軽口を叩き合う。崖をよじ登る際には手を貸してくれたり近接戦闘時は協力攻撃したりと息ピッタリ。断崖絶壁をエッサホイサと2人並んで移動している姿を見ていると「何やってんだこの兄弟⁉︎」とツッコまずにはいられないがそれがまた馬鹿馬鹿しくも微笑ましい。落ち着いた信頼関係がゲーム全体を通して余すところなく描かれいくつ歳を重ねても頼れる兄として存在感を発揮する。気付けば今作で一番お気に入りのキャラクターになっていた。


長年の相棒サリーも渋くキメて登場。お決まりのダジャレも健在で時にダンディ時にチャーミングな硬軟入り混じる立ち振る舞いを見せる。過去作に比べ前線に立つことは減ったが心配しつつも助言を与える姿はもはやネイトの親代わり。

余談だが電子説明書内の解説動画で限られた時間の中で最大限笑いを取ろうとするサリー演じる千葉繁氏の演技は必見。


そんな3人いい年こいたオッサン共が盗みの祝杯挙げて次の計画を練るこのシーンなんて男のロマンそのもの。やっぱりこうでなくちゃね。


ネイトは兄の命のために冒険を続けるうち、抑えきれない熱情が湧き出ていつしか兄よりも乗り気になってしまう根っからの冒険野郎。どれほどピンチに陥っても余裕しゃくしゃくでユーモアを忘れない姿勢は立派だが妻エレナに嘘をついて冒険に繰り出すのが始末におえない。ホント馬鹿野郎だよお前は。


その場しのぎの嘘など簡単にバレるもの。欺かれたエレナの胸中たるや察するに余りある。エレナはアンチャーテッド1ではネイトを振り回す好奇心旺盛お転婆ブロンドといった分かりやすいキャラクターだったがシリーズを重ねるごとに成長を遂げた。そして今作ではネイトの身を案じ、怒り、愛する妻としての側面が深く描かれるのでよりキャラクターに厚みが出た。もちろん感情的な面ばかりでなく芯の強い元来の性格は変わっていない。だってネイトの嫁さんだもんね。


敵キャラであるレイフはネイトと別れてからも15年以上同じ財宝を探し続ける執着心の強い男。雇われのナディーンは圧倒的な格闘術でネイトを手玉にとる。どちらも出番が多く悪役として分かりやすくも人間味が感じられた。特にレイフは小賢しい小悪党でありつつも危険な香りを醸し出す雰囲気がどこか癖になるキャラクターに仕上がっているので割とお気に入り。


登場人物達はどれも涙でうるんだ瞳や額ににじむ血と汗、さらには顔の油まで徹底的に表現されており、海賊の財宝に魅せられ一喜一憂する表情は多彩。「もうこれ以上グラフィック進化しなくていいんじゃない?」と思ってしまうほど。
過去作に比べシナリオ自体のB級感は薄め。呪い秘宝パワーといった突飛な展開は無くなったため残念に思う人もいるかもしれないが、そのぶん登場人物の描写は丁寧になりネイトをとりまく家族愛には誰もが共感できるはずだ。


気になった点

後半の展開が間延びしてややダレ気味。あと1チャプターでいいからあいだに違うロケーションが欲しかったかも。

ステルスゲー的な側面が強いにも関わらずサプレッサー付きの銃は存在しない。音でおびき寄せたり注意を逸らすアクションも皆無なためどこか融通が効かない。

息切れや踏ん張った時の声が英語ボイスのまま。これ自体は過去作と同様だが日米で声質が全く異なるキャラクターもいるためやはり気になる。完全吹替してほしかった。しかもなぜかちゃんと日本語吹替されているのに一部字幕は英語のままの翻訳ミスのシーンがある。

こちらも過去作同様だが、戦闘中ピンチに陥ると文字通り画面が色褪せ灰色になるためせっかくの映像美に水を差された気持ちになる。

チャプターを再プレイする際にまた同じ謎解きをするのは煩わしい。


まとめ

一作目からバリバリのB級感が売りでスタートしたシリーズは比類なきAAAへと成長した。臭みない正道の物語をド派手な演出で盛り上げることで常にプレイヤーを飽きさせない。ワイドリニアと呼ばれるリニア進行でありながら幅を持たせたマップのおかげで探索・戦闘ともに自由度が高く楽しめる。全てが高水準にまとまっているがゲームの構成要素に独自で真新しいものはないため単純にスゴいという簡潔な言葉で言い表したくなるが、この出来は紛れもなく本物だ。


本作の唯一にして最大の欠点はこのシリーズが終了してしまうことかもしれない。

惜しまれつつも表舞台を去ったネイサン・ドレイク。引退への花道が最後の最後まで波乱万丈だったのがなんとも彼らしい。これにて終幕、惜しみない拍手を送ろう。


以上、読んで頂きありがとうございました。







DLC 『古代神の秘宝』


こちらはスピンオフ的立ち位置のDLC。舞台は本編終了から半年後のインド。珍しく単品販売もされているので本編が無くても購入可。本編を遊ばずとも楽しめるが遊んでおくともっと楽しいはず。クリア時間8時間8分。難易度は中級。

一部のチャプターで中規模のオープンフィールドが採用されたおかげで目にも鮮やかな美しい大自然を自由に散策でき、インド神話がモチーフの謎解きも地味に難しくなった。
新規武器も追加。特にサプレッサー付きの銃が登場したことでステルスキルが容易になったがそれで簡単に無双できる訳ではない。死体を発見されると警戒モードに移行するし正面の撃ち合いには弱いのでバランスは取れている。


シナリオ面ではアンチャーテッド2に登場したクロエが主人公となり4本編で敵だったナディーンと協力するバディ物。絶景を前にいつでもスマホで写真撮影を忘れない飄々としたクロエと生真面目なナディーンの対照的なふたりが不思議と息の合ったコンビプレーを繰り出すのが面白い。男勝りな彼女達の需要の薄そうなガールズトークも聞いてるうちになんだか楽しくなってくる。

そして最後に本編を超えるほどド派手でスペクタクルな展開が待ちうける!

いくらDLCとはいえさすがにやりすぎだろと思わずにはいられない爆発と破壊の連鎖。主人公が代わってもまだまだ続く冒険の旅路はやはりメチャクチャだった。
ネイトが表舞台を去った寂しさを吹き飛ばすほどド迫力の連続なのでこちらも遊ぶことをオススメします。

*1:アサシンクリードシリーズに出てくる壁をスイスイ登ることに定評があるヤツら。