さぐりがき

据置ゲーの情熱を取り戻したい男のブログ

風が運ぶ好奇心は明日の私の夢をみる。『フィリスのアトリエ ~不思議な旅の錬金術士~ DX』レビュー

はじめに

アトリエの時間だ〜〜〜〜〜。

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というわけでアトリエの時間です。大切なことなので2回言いました。案の定出ましたね完全版。その中身に期待しつつも僕の中ではすっかり買い控えが定着してしまったアトリエシリーズですがDLC全部入りの完全版なら安心だぜ。てなわけでクリアしました。初回グランドエンディングまでのクリア時間は31時間55分。オリジナル版は未プレイ。
※5/31追記 2周目遊んでトロコンしました。

前作のレビューはこちら。
sagurigaki.hatenablog.com

目次

あらすじ

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少女の名はフィリス。岩窟の中に造られた町で生まれ育ち、ただの一度も町の外に出たことがない。風も、雨も、草木の緑も知らず毎日鉱石の発掘を手伝っていた。
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岩の隙間から覗くかすかな青空を見上げても、外と街を隔てる開かずの鉄の扉を眺めても、外に出ることは叶わない。外で狩りをしてきた姉リアーネの話を聞いては見知らぬ世界を夢想する日々。彼女の募る思いは次第に大きくなってゆく。

いつか外に出たい。

そう願うばかりだった彼女のもとへ、ある運命的な出会いが訪れる──。

オープニング

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本作において白眉なのがオープニングだ。
ゲーム開始時フィリスは町の外に出たことがない。特別いじめられてるとか囚われの身であるといった訳ではなく、鉱石の声を聞ける特異な才能で採掘を手伝っており町の住人達との関係も良好なのだが、外の世界は危険であるという理由で幽閉に近い暮らしを送っている。仕事の合間に洞窟の隙間から覗く青空を眺めるのが楽しみだったり、町と外を繋ぐ唯一の扉を眺めることで気分転換するという普通では考えられない行いが心の支えになっているだいぶ不遇な境遇の持ち主だ。

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両親に外に出たいとお願いしても駄目の一点張り。いくら外が危険とはいえ年端のいかぬ少女に対する行いとしてはあまりに酷、娘の身を案じているとはいえやりすぎってもんだろう。現代ならDVですよDV。メタ的な視点からみても、最初に狭い場所に閉じ込めて世界の広さを演出する手法は古くから使われてるとはいえこの扱いはさすがに勘弁したってくれと言いたくなるほどだ。

そんななかフィリスがいつものように開かずの扉を眺めて悶々としていると思わぬ僥倖が訪れる。
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ソフィーとプラフタ登場ッ!!!!!!
そう、ここで前作主人公であるソフィーとプラフタが爆弾で扉を破壊して豪快に登場するのだ!!!
勿体ぶらずにゲーム開始直後から登場するのは前作プレイヤーの心を早々に躍らせてくれる粋な演出であり、それまでフィリスにとって絶対的だった扉を難なく壊して登場するのは救いであると同時に希望そのもの。間違いなくソフィーがフィリスの運命そのものを変えたという意味でも前作主人公の見せ場という意味でも申し分ない登場の仕方だ。
こうしてフィリスはソフィーに弟子入りし錬金術を学ぶうち外でやっていこうと思い立ち町を出る決意をするのだ。

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しかしこれで無事外を満喫できるかと思えばそうは問屋が卸さない。外に出られるのは1年間の期限付き。それまでに公認錬金術として充分な実力があると認められなければ穴蔵の中へ逆戻り。こうしてフィリスは姉リアーネとともに公認試験の開かれる街ライゼンベルグへと旅立つことになる。

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親御さんの許可も取らなきゃね。
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慈愛に満ちあふれた説得。
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言ってることはほぼドラえもん

ソフィーはゲーム序盤から前作と比較して大人になったと感じられる行動が随所に見て取れる。錬金術を学ぶ際に危険だからと両親の許可を求めてきたり、フィリスと母が親子喧嘩した際には優しく諭したりと大人になって包容力が出てきたと如実に感じられる成長ぶりには見ているこっちまで嬉しくなってしまう。町に来ていきなり商売を始めるほど商魂たくましいのは前作から年月を経て旅慣れたからだろうし、中が四次元空間のアトリエをやすやすと使いこなす姿はまるで赤いドラえもんだらしない一面やプラフタとの関係性はそのままに誰より頼れる前作主人公という強固な立ち位置を確立しており、この扱いそのものが前作プレイヤーにとって嬉しいファンサービスとなっている。

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知らないもんってプイって拗ねた感じがかわいい。

もちろんでしゃばりすぎてフィリスの出番を食うような真似はしない。母と喧嘩したまま別れの挨拶すらせず旅立とうとするフィリスに対し「本当にいいの……?」と優しく背中を押すような気遣いはあくまでフィリスあってのことだ。
フィリスも両親の陰ながらの応援やあれだけ反対するのは全て子を想う親心だとはっきり気付いており、たまらず両親の元へ駆け出し別れの挨拶をする。このフィリスの持つどれだけ意固地になろうとも最終的には素直になれる優しさこそ錬金術士に一番必要な素質じゃないだろうか。

ここまでの流れは時間にしてわずか2時間にも満たないチュートリアルなのだが、しっかり旅の動機付けと前作主人公の位置付けを両立させる形で説明に成功しており最後にシリーズ恒例となったアバンタイトルムービーがグワッと流れ出す。プレイヤーの心を掴むおなじみの演出だがベタながら旅の幕開けにふさわしい盛り上がりと言えよう。

旅の流れ

こうしてフィリスは外の世界に旅立つのだが…
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マップがデカいッ!!!

本作のテーマは旅。その言葉通り前作の10倍以上もの広々としたマップを駆け回ることができ、一直線にライゼンベルグへ向かうのか隅から隅まで探索し小粒なサブクエをするかも自由なオープンワールドチックな設計になった。同一マップ内であればファストトラベルも瞬時に行える。ポコポコ木を叩いての木の実拾いや爆弾使っての鉱石集め、プチプチ草むしりめいた採取をしたりとこれまでのシリーズとは一味違う大自然を感じながらのフィールドワークが楽しめる。明らかに通れそうなのに歩けない場所があったり天候変化時にカクつくなどツメの甘さも残るが、どんどん新しいことに挑戦するのが何よりも成長への近道。従来のような店売りレシピは最低限で基本的に採取・調合・戦闘をこなすことでアイテムを発想していくのでなんでも果敢に新しいことにチャレンジするのが大切だ。

他にも特筆すべきは日数制限が復活したことだろう。期限内に試験を受けられなければゲームオーバーのためLP制限と日数を常に頭の片隅に置いて探索する程よい緊張感はアトリエシリーズならでは!正直このじわじわ追い立てられるような日数制限のせいでいちいち戦闘するのめんどくせぇと感じながら旅をしていたのだが、シンボルエンカウントの回避が容易なこともあって基本的に逃げ回って採取と調合ばかり繰り返していたにも関わらずそれでもなんとかなったと思うほどに進行の自由度は高い。どうせあとで装備作っても変わらんし強制戦闘の数が最低限という思いきりの良い調整は世界を救わないアトリエシリーズにピッタリだと思う。

調合

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調合はおなじみパズルのようなハメコミ形式。
前作は進行度に応じて新たな釜を入手し回転や作成数増加といったボーナスが発現する仕様だったが、本作ではアイテムそのものに熟練度が設定され調合すればするほど上達し新たなシステム触媒を投入して盤面のボーナスラインを変化させられる。
シナリオ面以外のシステム的な面でも錬金術の成長を実感されられるという意味では熟練度の実装は良かったものの、後述するようにゲーム後半で特に顕著になるバランスの悪さが惜しい。

アトリエのインテリアを自由に変えられるアトリエメイクもいい線いってるが、なにぶん置ける数が少ないのがさみしいので続編ではさらなる拡張性がほしいところだ。

シナリオ

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公認試験を受けるためには錬金術士の推薦状を3枚集める必要があり、風車村に住む優男からいかにも森の魔女といった風体の婆さん、なんだか薄汚い無精髭のおっさんまで様々な先輩錬金術士達を訪ねることになる。複数いるどの錬金術士の課題をこなすかは自由、全部こなしたからといって特別なイベントが見れる訳でもないので好き勝手こなすことが可能だ。まぁ俺は全部の課題をこなしたんですけどね、天才ですから。

過去アーランドや黄昏シリーズでは錬金術士は主人公と師匠くらいしか登場せず基本稀有な存在として描かれていたように記憶しているが、本作では主人公以外にもこうした先輩錬金術士達が数多く登場するためそれとなく錬金術士の職業としての立ち位置が分かり世界の拡がりを感じられるのも新鮮だった。「錬金術士も万能ではなく意外とみんな小間使いみたいなことして大変なんだな。」と身近に感じられる親近感があり、推薦状を渡す暁には人生の先輩だけあってなかなかに含蓄のあるアドバイスをフィリスにしてくれるなどソフィーに続く第二第三の師匠とも呼べる人達ばかり。フィリスがここまで人を惹きつける理由は健気でひたむきな性格あってこそだろう。
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旅をともにするリアーネは常にフィリスの身を案じどんな時も頼りになるお姉ちゃん。口を開けばフィリスちゃんフィリスちゃんと妹の名前が口癖かと思うほどに溺愛しており早い話が過保護でシスコン。いつも仲睦まじく時におちゃめにたまに厳しいああ美しきかな姉妹愛。愛が深すぎてたま〜に暴走したりしなかったりするものの基本そこまでベタベタしてない適切な距離感で交わされるふたりのやりとりは見ていてほっこりするという言葉が一番似合う。それはそうとリアーネだからリア姉ってめっちゃ分かりやすいよね。

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中二病にハマるフィリス。
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さらっと物騒なことを言うフィリス。
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冷静なツッコミもできる器用なタイプ。困り眉がかわいい。

旅先で出会う仲間たちは女性恐怖症の歴史家カルド金にがめつい傭兵アングリフ快活な脚本家ドロッセルなど様々。皆さん揃っていいひとで出会った次の瞬間からめちゃくちゃ軽い理由で同行してくれるので「こんなに軽くて大丈夫か?」と心配してしまうほどだが、豊富に展開される日常系の会話劇はフィリスのぽやっとした雰囲気でやや天然ながら時折辛辣なツッコミが冴え渡る軽妙なやりとりが面白い。
個人的に前作のイベントは既視感が強くどうにも馴染めない印象だったが今作ではすんなり自然に楽しむことができた。ソフィーが性格的に比較的受け身で常識人であるのに対しフィリスは浮世離れした生い立ちのせいか好奇心旺盛かつリアクションも大きめで小動物ちっくなかわいさにあふれており、ゲーム後半になってもその衰えを知らぬボケとツッコミのバリエーションの多さには最後まで楽しませてもらいました。
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仲間のなかでも天才美少女錬金術イルメリアことイルちゃんとは友達としてライバルとして切磋琢磨することになる。天才を自称すれど驕らないひたむきな努力家で嫌味ない性格の彼女と繰り広げられるやりとりは劇中でフィリスが言うとおり友達ってあったかいと感じられるものばかりだ。

そんな彼女とは旅をある程度進めるとトトリのアトリエでも作らされたアレを街のみんなと総出で造ることになるのだが、いつもと異なる質より量を重視した超弩級調合はなんともスケールがデカい。金属足りねぇ木材足りねぇと思いつくもんとにかくかき集めて半泣きになりながら全部ブチ込むことになるので今から遊ぶ人は思う存分苦労してもらいたい。
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他にもどっかで見たことある人形師のおっさんやどっかで見たことある腹の底の読めない双子、どっかで見たことあるけど別人のように痩せた植物好きの青年などめちゃくちゃ同窓会じみた顔ぶれが登場する。登場しないキャラもそれとなく言及されるため前作プレイは必須。せっかくの3部作だしこれくらい強い繋がりがあったほうが色濃い人間関係が感じられて賑わいがあって楽しいね。


そして紆余曲折を経て無事ライゼンベルグに到着し試験を合格してEDムービーが流れめでたしめでたしと思いきや……
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まだまだ旅は終わらない!!!
なんと試験合格後にさらなる旅路を続けられる。時間制限が撤廃され自由な時間の中、今度は「フィリスのやりたいことを探す旅」が始まるのだ。
本作はいわゆる2部構成。多段エンディングの構造であり言わばここまでは壮大なチュートリアル、本編はこれからといっていい。この最初のEDまで16時間かかったがクリア後も地続きでお話がつづくというのはなんともボリュームたっぷりでお得感がある作りだ。目標を達成したあとも自由に物語を続けられる構造そのものが個人的に結構好きなのでこのギミックには◎を上げたい。

空飛ぶほうきにまたがっての快適な移動や気泡に包まれ海底探索、果ては空に浮かぶ島を目指したりと例えるなら宿題を早く終わらせた夏休みのような解放感のなか心ゆくまで自由きままに探索できる。これも日数制限を乗り越えたからこそ味わえる緊張と緩和、抑圧と解放のおかげだろう。錬金術の腕前がメキメキと上達し師匠譲りでだんだんドラえもんじみてくるフィリスの姿が見られるのはクリア後だけ!!!
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マルチエンディングにつながるサブクエストも公認錬金術士になってから。なんやかんやあって最後に出てきたボスを倒してめでたしめでたし…というような普通のRPGのケリの付け方以外にも、ちゃんと調合がメインのシナリオもある幅広い描き方が嬉しい。
単なるハッピーエンドばかりでなく割と過酷な現実を突きつけるようなライターの性癖を疑う展開なども用意されていたりフィリスの成長と自立が感じられるのもグッド。
特にこれまで何かとリアーネから世話を焼かれるばかりだったフィリスが見せる妹として立派な姿はひたすらに尊いのでみんな見ような!!!!!
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前作キャラも割とガッツリ描写されるので物足りなさを感じていた前作の補完という意味でも楽しめるし、天才肌のソフィーは前作の主人公としてもフィリスの師匠としても見応えがあり一粒で二度おいしい。前作キャラは前作キャラとだけ絡むようなありがちなミスも無く、しっかりと前作キャラ今作キャラが交わる形でより膨らんだ人間模様が描写されるので思う存分お腹いっぱいになりました。

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推薦状が集まってもいないのに受付したせいでなんだが肩身の狭い感じに。フィリスちゃんごめん。

余談だが筆者は急いでライゼンベルグに向かったおかげで残り170日で到着したのはいいが推薦状が一枚足りないと追い返され、ならば本腰入れてやったるかと貰える推薦状全部叩きつけて再び受験受付したのが残り106日。ホントなら到着した時点で推薦状が集まってるほうがスマートだけど思い通りにいかないのが旅ってものかもしれない。

それはともかく、受付を済ませるとどれほど残り日数があろうと街から出られなくなる仕様は少々残念だった。筆者が急いで到着したのは受付を済ませて安心した上で気兼ねなく残りの期限を満喫したかったからな訳で、到着したにも関わらず受付せずにちょろちょろ遊ぶのは気分的にちょっと違うのだ。合格後は期限がなくなるためシステム的にはなんら不都合無いとはいえ、受付後も自由に行動出来ていれば探索に夢中になって試験当日スッポかしてバッドエンド……というような結末も出来ただろうし見たかった。

他にもクリア後の欠点として一部のアイテムは発想条件が分かりづらく煮詰まりやすい、発想しても熟練度を上げるために無駄な調合を何度も繰り返す必要があり目当ての調合に無駄な時間がかかるのはアイテムが主役のアトリエシリーズにおいて致命的だ。自発的にトライ&エラーをするのではなくさせられるのはなんとも徒労感が強く、せっかく無期限になったのにやり込みの気力を大きく奪っている。このバランスの悪さは自由度の高さに起因するのではなく単純な調整不足によるもの。完全版として発売したのだからせめてしっかり遊びやすく修正してほしかったのだが……。

戦闘

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戦闘は4人制のターンバトル。画面左のゲージが溜まると繰り出せる大技チェインバーストずっと俺のターンを繰り出し大技チェインストライクをド派手に決められる。サブウェポンが装備可能になり攻撃属性が増えたことでパーティの固定化も防げるようになった。まぁ結局のところ自前で作った装備とアイテムが一番重要なのはいつもと同じ。アイテム補充が簡単なおかげでパーティ全員錬金術士で4人全員爆弾魔なんて編成も自由だ。

難点として戦闘速度が1.5倍、2倍に変更できるが物足りない。2倍、4倍の方がスピーディだろう。電源を入れるたび等倍に戻るのが厄介。

ほかに気になった点

会話のカットシーンで聞き手の後頭部がデカデカと映るのは見栄えが悪くもう少しカメラワークを工夫してほしい。

モデリングの出来不出来にバラつきがありフィリスとリアーネはどちらかといえば悪い方。クリアした今でこそ可愛いと思えるが序盤は「あんまり可愛くないなコレ…。」と思いながらプレイしていたのでもっと純粋にクオリティアップしてほしい。

画面写真を見てもらえば分かるがミニマップがデカくて邪魔。マップが格段に広くなり遠くを見渡すことが増えただけに地味に視界に入ってくるのがうざったい。今作ではマップの設計そのものが前作と変わったのだからUIを使い回すのは控えたほうがよかっただろう。

キャラクターにまつわる一部のクエストはアトリエにいる仲間に話しかけないと発生しないので煩わしく好き勝手探索する今作の仕様と噛み合っていない。せめて発生可能になったらアイコンが表示されるなどの親切さがほしかった。フラグ管理の関係かリアーネのクエストをある程度進めると他のキャラのクエスト発生がストップしてしまう。リアーネのEDを最初に見せるためなのか調整不足なのか判断はつかないがこちらも自由な進行を阻害している。

試験にまつわる唯一の時限トロフィーが存在し取り逃がした場合試験前のデータを残しておかないと2周目確定。このトロフィーのためだけに引き継ぎ要素も少ない2周目を遊ぶのはやり込み要素とはいえめんどくさい。試験自体はミニゲームめいて面白いのでクリア後も試験に再挑戦してトロフィー獲得できるような仕組みがほしかった。

まとめ

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穴蔵のなかに潜むばかりだった少女が錬金術と出会い世界の広さを知ることで自らの中に潜む可能性すらも大きく広げていく本作。姉リアーネや師匠のソフィー、数多くの仲間たちと触れ合いながら好奇心を道標に成長していく物語はまるで穏やかな日差しに包まれたかのような心地よさに満ちている。

一方、システム面ではこれまでカッチリした導線が売りだったところを大きく自由度ある作りへ方向転換したからか諸々チグハグな調整不足感は否めず、最も重視しているはずのアイテム調合に皺寄せが及んでいるのが残念。完全版なのだから磨き上げてほしかった。

とはいえ広々としたフィールドでの探索は何より楽しく、日数制限を逆手に取った二部構成のおかげでメリハリも効いており前作よりも大きくボリュームアップした作りなのは間違いない。最後の最後まで驚きと発見に満ちたにぎやかな旅路を駆けるかわいいフィリスちゃんの姿は見れば見るほど愛おしくいつまでも追いかけたくなるはずだ。
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以上、読んで頂きありがとうございました。


余談

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筆者は本作を発売日に購入したのだがオリジナル版が60fpsだったらしいところをマルチ発売に合わせて30fpsに下方修正されており、ゴールデンウィークを挟んだせいもありアプデが来たのは5月17日、修正には実に3週間近くの時間を要してしまった。どうせ遊ぶならアプデが来るまで待とうとパッチの予告がされてからプレイを中断していたので、いつ来るかも分からないアプデを3週間以上もの間待ち続けやや熱が冷めた状態で再開することになったのは興を削がれる思いだ。DLC全部入りの完全版なら安心かと思いきやこんなことで出鼻を挫かれるとは予想もしなかった。

発売から数日後にツイッターの書き込みで「劣化してるから買うな!!」との購入者の声を見た時は「その可能性は予想してなかった。これはしくじったぞ。」と素直に落ち込んだ。本作の30fps仕様は事前告知されていないのが問題でバグ修正ではなく仕様修正というあたりネットでの指摘が無ければおそらく修正もされなかっただろう。幸運にもアプデで対応してくれたとはいえガスト及びコーエーテクモに対する印象は悪い。

修正された以上ウダウダ書いてもしょうがないのでここらへんのマズさが買い控えする原因なんだよなと最後に一言書き加える形で終わります。空腹は最高の調味料って言葉がありますがことゲームに関していえば期待が最高の調味料、素直に期待させてほしいもんです。