さぐりがき

据置ゲーの情熱を取り戻したい男のブログ

騒がしい日常の下にたたずむものこそ愛おしく。『リディー&スールのアトリエ ~不思議な絵画の錬金術士~ DX』レビュー

アトリエの時間だ〜〜〜〜〜。

f:id:sinodakei:20210626040256j:plain というわけでアトリエの時間です。前回と同じ書き出しですが大切なことなので2回言いました。今回で堂々の☆不思議シリーズ完結☆ということで、なんだかんだ追っかけてきただけあって感慨深いものがありますね。
トゥルーエンドまでクリア時間は59時間17分。難易度ノーマル。
※7月3日追記 トロコンしました。

前作のレビューはこちら。 sagurigaki.hatenablog.com

あらすじ

f:id:sinodakei:20210621191027j:plain f:id:sinodakei:20210621191037j:plain f:id:sinodakei:20210621191043j:plain 舞台はアダレット王国の首都メルヴェイユ。ここに建つ一軒のアトリエには双子の姉妹リディースー(スール)、父ロジェ錬金術士一家がつつましく暮らしていました。亡き母に誓った『国一番のアトリエを営む』という夢もむなしく今日もアトリエは閑古鳥。画家でもある父は娘たちの稼いだ食費で勝手に画材を買うアホなのでいつまで経っても貧乏暮らしから抜け出せません。 f:id:sinodakei:20210624111328j:plain f:id:sinodakei:20210624111331j:plain ある日双子たちは父の部屋で見つけた一枚の絵画へと吸い込まれ見たこともない材料を手にしたことで「これがあればアトリエの評判も上がるのでは?」と思いつきます。そしてほどなく始まったアトリエランク制度を駆け上がり自らの夢に邁進するのでした。

目指せ、国一番の大金持ち&アトリエ!!!

システム

f:id:sinodakei:20210624111437j:plain f:id:sinodakei:20210624111440j:plain 今回のゲームシステムはソフィーのアトリエを基本とする日数制限の存在しない形に落ち着いた。アイコンが表示されるおかげでイベント発生場所も一目で分かる。

街やフィールドは草木や花といったオブジェクト数が増え密度が格段に濃くなり色使いも鮮やかになったことで「ソフィーの故郷であるキルヘン・ベルってだいぶ田舎だったんだな」としみじみ思い出してしまうほどには賑やかになった。思えば遠くへ来たもんだ。 f:id:sinodakei:20210624111454j:plain 期限があるのはサブクエのみというのもソフィーと同じだ。街の中央に位置する掲示板の依頼は完全に本筋と独立したお金を集めるためのサブクエでやってもやらなくてもいい。通常版ではDLCだったリフュールパット10個で5000コールという破格の金策エストも最初から解放されているため序盤から富豪になることもたやすい。今回再登場したコルちゃんに格安で複製を頼んでピンハネ搾取を続けるド外道プレイなんかも可能。コルちゃんの背を犠牲にして左うちわで優雅な暮らしをするのは少し良心が痛むがごめんなコルちゃん、これも資本主義ってやつのせいなんだ。

……と思いきやこれが罠。

実は稀にキャラクターの名前が書かれた依頼が張り出されることがあり、これを一定数こなすことでトゥルーエンディングへのフラグが立つ。つまりDLCのクエストばかりやっているといつまで経っても解放されないのだ。 筆者がこれに気付いたのは終盤も終盤、ノーマルエンドを見届けたあとだった。それまでDLCエストに頼りきりだったせいでエンディングを見たにも関わらずいちからセコセコ依頼をこなし続ける羽目になってしまった。我ながら書いててすごいヘマをしたと思うけどこんなアホなことってある!?
これこそDLCが全収録されている完全版だからこそ起きた悲劇と言えるだろう。やっぱり悪いことはできねーな。ごめんなコルちゃん。

キャラクター達

今回の物語は主人公こそふたりだが異なるシナリオがある訳ではない。双子は常にニコイチで行動するので大きなひとつの物語が展開されていく。

本題に入る前にまず最初に言ってしまおう。今回の主人公2人のアニメ声はこれまで以上に慣れるまで時間がかかった。 f:id:sinodakei:20210624111519j:plain 大人しい姉のリディーと活発な妹のスー。方向性は違えどどちらも音域高めな萌え声で過去作以上にコビコビコテコテした演技を見せる。初めて聞いた時は思わずウヒャアと声が出たほどだ。

「基本的にアトリエの主人公なんてアニメ声じゃねーか」というツッコミはちょっと待ってほしい。確かにロロナもソフィーも最初聞いた時はウヒャアってなったが今回はそれを上回るウヒャアで、いくら遊んでるうちに慣れると頭で理解していても少し不安がよぎるほどだった。声ってのはキャラクター性を掴む以前の要素なのでリディーのような大人しい子が出す媚びた声ってのはどうしても本能的に危険信号を感じとってしまうものだし、スーの生意気で舌ったらずな特徴的な演技が最初はどーにも慣れなかった。

まぁこの話はあくまで慣れるまで時間がかかった(ゲーム開始から4〜5時間くらい?)というもので最終的にはいつも通り楽しめたので大した話もないのだが。こればっかりは最初にどーしても書いておきたかった。 f:id:sinodakei:20210626015146j:plain 双子はどちらも根は素直で真面目だが年相応のやんちゃさを持ち合わせており誰彼構わず何かとちょっかいを出す。スーが誰かをからかえばリディーはそれを諌めるでもなく丁寧に乗っかって追撃する息のあったコンビプレーを繰り広げる掛け合いは賑やかで楽しい。

特に最初に感じた声の不安はどこへやら、スーは慣れると舌ったらずな演技のおかげで小生意気さと愛嬌のバランスが調和した可愛さに仕上がっており見れば見るほど癖になってくる。根っからのお調子者ぶりは実の姉リディーに対しても発揮され堪忍袋の尾が切れ手痛いしっぺ返しを食らったり、虫やオバケが苦手な少女らしい一面と相まって憎たらしいけど憎めない、目標に向かって突き進む元気ハツラツさが眩しい少女だ。 3Dモデルの視線がやや上向いてるためか人の話を聞くときにちょっとアホの子っぽく見えるぽけっとした表情が個人的にツボ。 f:id:sinodakei:20210626015224j:plain リディーも根は大人しいが少女マンガ好きな夢みがちでマイペースなところがあり、スーに負けず劣らずの辛辣なツッコミを入れたりとクセの凄さをみせる。二人とも長年貧乏暮らしを続けてきたせいか採取する時には生活費の足しになれとか金目のもの落ちてないかなとか染み付いた貧乏根性を隠せないのがなんとも涙ぐましい。

余談だが今回のイベントシーンは希望に満ちた時にはキラキラエフェクトが散らばり、やる気に満ちた時にはメラメラ炎が燃えたりと演出が強化されたのもポイントだろう。 f:id:sinodakei:20210625005440j:plain そんな双子の父親がロジェだ。演じるのは子安武人氏。見た目こそメガネで一見真面目そうだが何をするにもちゃらんぽらん、娘の稼いだ食費を勝手に使って怒られるマジでどうしようもない男。娘達からは呆れられ構って貰えないことも日常茶飯事だが、子安氏得意の悲壮感を感じさせない必殺の高笑いを聞いているともうそれだけで笑えてくるからズルい。まぁ娘たちから理不尽に「お父さんクサい!」とか邪険に扱われないだけまだマシなのかもしれない。

時にはロジェ様のお題と称して娘と共謀して金のなる木を作るという作中の世界観から考えても普通に犯罪まがいの行いをするが割と全員ノリノリなのがたちが悪い。それにしてもホント賑やかだなこの家族。 f:id:sinodakei:20210624111623j:plain 双子の幼なじみで錬金術士でもあるルーシャは高飛車でツンデレなライバルポジ。基本噛ませ犬的ないじられキャラで双子たちとはなにかと煮え湯を呑ませ合う仲だが、ルーシャの度量と双子達との信頼ありきの素敵な関係だとよく分かる丁寧な描写のおかげで自然と好きになっていった。

張り切り過ぎて軽く裏返るほどのオーホッホッホの高笑いをひっさげ何かとちょっかいをかけてくるのだが、双子と別れた途端に「何であんなこと言っちゃったんだろう」としおらしく反省するのがいじらしい。それもそのはず彼女が何かと突っかかってくる理由は「自分の方がお姉さんなのに双子が頼ってくれないから」というもの。可愛いなオイ。今時好きだからちょっかい出してしまうお姉さんキャラとか尊くないですか!?
双子たちもっとルーシャに優しくしてやれよと感じてしまったくらいには不憫というか片想いが過ぎるというか一途なキャラクターだ。 f:id:sinodakei:20210625005452j:plain マティアスはナンパでビビリでヘタレな王子。序盤こそ双子にからかわれ憤りながら事の成り行きで探索を渋々付き合うも、双子の頑張りを見て次第に騎士として男として王としての自覚を持ち始める好青年だ。

しかしシナリオ自体はビビリを乗り越えて王になる覚悟を決めるというオーソドックスでありきたりなのでもう少しヒネリが欲しかった。良くも悪くも普通にイイヤツ止まりといった印象を強く受けるのがなんとも彼らしい。 f:id:sinodakei:20210626020400j:plain アトリエランク制度の受付を一手に担う美人受付嬢ミレイユは完璧超人にありがちな寒い親父ギャグが好きという欠点こそあるが、褒められるとすぐ赤くなったり双子のことを常にちゃん付けで呼ぶ親しみやすさに加えて、ガチのバリキャリで作中随一の出来る大人として常に一歩引いた視点で陰ながら応援してくれる。この人がいなければ双子は夢を叶えることが出来たかどうか疑問を覚える程には温かな言葉ひとつひとつに励まされた。 f:id:sinodakei:20210626025621j:plain アルトは一応建前こそ謎の美少年だがその正体は十中八九誰もが気付くあの双子。常に冷静沈着で聡明な彼も双子の手にかかればカタナシでドタバタに振り回されるツッコミキャラに変身することになる。

ただその正体を知っていても姿形としては新キャラで声優も別、ポッと出感があるのは事実なので元の姿もちょっとくらい登場したりサービスシーンがあってもよかったかも。

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過去に登場したフリッツ・ドロッセル親子コルネリアも再登場。サブキャラクターということで描写こそ減ったがその情熱ぶりは健在だ。他にも美魔女シスターのグレースは普段の落ち着きとのギャップが面白いし、おなじみのパメラ・ハゲルなども相変わらずの調子で、ひとつ5分ほどのショートアニメめいたサブイベント数は過去最大級と言っていいほどのボリュームを誇る。属性としては日常系だがプロテインスピリタスといった現実の単語が普通に登場するため過去作以上にギャグ色が強くなり、双子たちを台風の目とするドタバタ劇の日常はいつ見ても騒がしく飽きが来ないイベントの連続だ。

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しかし生憎にも合わないギャグもあった。非番で昼間から街をうろつくマティアスを無職呼ばわりするのはちょっとしたからかいとはいえこれまでに無かった下げの目立つお笑いだし、旅好きで常に動き続けるフィリスをマグロ呼びするなど今時使い古されカビすら生えない下ネタをやられるのは流石に閉口した。(無論そういう意味で言ったのではないが下ネタと掛けた笑いになっているのは明らかだろう。)元々下ネタで売ってるようなシリーズならともかく、これまでがゆるゆるで誰も傷付けない日常系だっただけに見た瞬間に強い違和感を覚えてスゥンと盛り下がってしまった。 f:id:sinodakei:20210624122631j:plain リアーネは前作では妹を守る保護者の一面が大きい頼れる姉だったのに対し、フィリスと久しぶりに再開したとはいえ溺愛から来る過剰な暴走が目立つ描き方が増えたのは残念だ。(こうした暴走気味な描き方はフィリスの完全版で追加されたボイス無しのイベントでも存在したので遊ぶ前から悪い予感はあった。) 前作的な優しい一面ももちろんしっかりと描かれているし、フィリスが大人になり手が掛からなくなったおかげで暴走しているとも言えるが、前作と比較して適切な距離感から来る姉妹愛のコクが薄れてしまったのが惜しい。

このような違和感のある描写は極一部で大半は面白いものの、シリーズ完結編なのだからギャグのテイストを変えずこれまでの日常路線を継承してほしかったという気持ちもそこそこある。よく言えば親しみやすく、悪く言えば俗っぽい作りになったと言えるかもしれない。 f:id:sinodakei:20210626035731j:plain f:id:sinodakei:20210626035734j:plain ソフィーは白い衣装を見にまとい神々しさすら漂わせる出で立ちになり、双子たちのピンチに駆けつけるという前作に負けず劣らずの登場を見せる。錬金術の腕前は神がかり的で全てを受け止める慈愛に満ちた性格はもはや菩薩といっていいほどだがお片づけが苦手なのは相変わらず。プラフタも時折見せる茶目っ気が可愛い。なんだかんだ二人してめちゃくちゃイチャイチャするのはもはや伝統芸能というか国宝級といっていいだろう! f:id:sinodakei:20210626030807j:plain f:id:sinodakei:20210626035659j:plain 前作主人公のフィリスは身長が伸び髪型も変わり活動的な見た目になったことで大人びた印象を受ける。でも中身は全く変わらねぇ〜〜〜〜。あいかわらず色気より食い気なお肉大好き天然ボケでぽやぽやしたマイペースを貫いており、すっかり中二的言い回しがクセになりむしろアホの子ぶりが加速した気さえする。そもそもいくら便利とはいえ公園のど真ん中にあのアトリエを建てるのってどう見てもホームレスなんだけど大丈夫なんでしょーか。弓の腕前を褒められてリアーネに弓を教わった……のではなく錬金術で矢を操ってると白状しちゃう素直さなんかは大人になっても変わらないなぁ。 f:id:sinodakei:20210626030747j:plain f:id:sinodakei:20210627070905j:plain f:id:sinodakei:20210626035642j:plain 実は双子の師匠になるのはこの二人ではない。今回師匠として辣腕をふるうのは美少女天才錬金術イルメリアだ。何を隠そうこのイルちゃん、すげー面倒見がいい!!!

双子の家を訪ねる際には何かと高級な手土産を持ってくる気配りに長け、手作りの参考書で分かりやすく指導する。錬金術士としての心構えをいちから丹念に説き、気取らず踊らず名家の出であることを鼻にかけずやんちゃな双子のちょっかいにも丁寧に応対する様はいたずらした双子達が逆に申し訳なさを感じてしまうほど真摯。まぁ結局はからかわれてしまうのだがその姿も可愛いし、正にアメとムチの使い方を熟知した理想の指導者だ。まず間違いなく今作で一番株を上げたと言ってもいいほどの活躍ぶりを見せてくれた。プレイ中はその親しみやすさと尊敬の念をこめてずっとイルちゃん先生って呼んでました。
前作でフィリスと誓い合ったあのぬいぐるみも再登場してふたりの信頼関係を存分に見せつけてくれる姿にはものの見事にオーバーキルされました。

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恒例の保護者会。
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悪い虫がつかないように。
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天然は相変わらず。
3人寄ればかしましいとはよく言ったもので、新旧のメインキャラクターがいりまじり1ミリたりとも落ち着くことのない日常はひたすらに騒がしい。なんていうか日常系の面白さを文章で説明するのってめっちゃ苦労するのだが楽しさが少しでも伝われば幸いだ。

メインシナリオの流れ

本作は章仕立てになっており、野望ノートでアトリエの評判を上げる→ランクアップ試験に挑む→絵画探索を進めるというサイクルで話は進んでいく。 f:id:sinodakei:20210624112133j:plain 野望ノートには複数のタスクが書かれておりどれを達成してもいいのだが、このノート野望というだけあってただの箇条書きではなくリディーとスーの欲望が本人達の視点で書かれており知り合いに頼んで根回ししようだのもっと可愛くなるだの身も蓋もない目標のオンパレードなので読んでるだけでも面白い。
ランクアップ試験自体は達成しやすいお題なのでプレイ時間の多くをこの野望ノートに費やすことになるが、こうしたタスクをこなす達成感の連続こそミニゲーム的な面白さを生んでいると思う。 f:id:sinodakei:20210626041213j:plain f:id:sinodakei:20210626041216j:plain f:id:sinodakei:20210627020431j:plain アトリエランクが上がると双子たちは仲間と協力し国が集めた不思議な絵を調査することになる。展開としてはシンプルなものだ。

双子が人知れず王城の絵の中に忍び込み得た素材でアトリエランクを駆け上がっていく…というような秘密裏なシナリオではなく、国からおおっぴらに絵の調査を依頼されるという構造はちょっぴりロマンに欠ける設定ではあるものの、絵画の世界はおどろおどろしいハロウィンめいた森や火山といったお決まりの地形から天国のような花畑や星空の平原などバリエーション豊か。現実ではありえないオバケや木が喋るなどこれまで以上にメルヘンチックな世界観になりサブタイトルの不思議な絵画の名に恥じぬ出来になったと言えるだろう。 初期からゴロンゴロン様々な種類の素材を拾えるのは探索心に火を付けてくれるし、街の外にも通常のマップがあるので単純計算でボリュームが約2倍になったのも嬉しい。

調合

f:id:sinodakei:20210625045632j:plain 今回の調合ルールは「色のついたパネルの総数で効果が決定される」というシンプルなもの。

  • ひとつの素材が複数のパネルを持つようになった
  • 属性ボーナスのUIがメモリ式になった

このふたつのおかげで視覚的直感的にとてもルールが分かりやすく遊びやすくなった。前作にあったアイテム熟練度は案の定廃止され何度も同じ調合をする必要がなくなったのも嬉しいポイント。
盤面のボーナスや大きさそのものを変える触媒システムも続投。前作は一部の限られたアイテムしか投入出来なかったのに対し今作ではそこらに咲いてる赤い花から砂まで投入できるためより使いやすい基本のシステムとして設定された。触媒を使わないのはもはや縛りプレイでしかない。

一見するとなんかめんどくさそうな天体のマークとかプラスとかマイナスとか調合分かんないよ〜と泣き出してしまいそうだが、1調合中に1度だけ使える活性化によりパネルの色そのものをまるっと変えることも可能。ガチガチの理詰めを要求されることのない柔軟さを持ち合わせた間口の広さと奥深さを両立させたシステムに仕上がっている。 f:id:sinodakei:20210625045852j:plain アイテムの発想条件もレシピノートを見れば一目瞭然で分かりやすい。どうやって効果を発現するか、特性を引き継ぐか考えるのはさながら小さなパズルを解くような軽い頭の捻り具合を要求されるので、新たなアイテムを発想したときの軽い達成感がキモチイイ。

戦闘

f:id:sinodakei:20210625050720j:plain f:id:sinodakei:20210625050717j:plain パーティそのものは前衛3後衛3の計6名で前線に出るメンバーは3人、前後のタッグの組み合わせに応じて特殊効果が発動する。 カゴの中の素材を使いバトル中に調合するバトルミックスもめちゃくちゃ強く頼りになる。しかし性能は申し分ないが事前準備が必要なことに変わりはないので普通に調合できてもよかったとは思う。

惜しい点として、前後の組み合わせそのものは豊富だが全バトルメンバーが8名しかおらず入れ替え甲斐がないのは少々寂しい。プラフタやリアーネ、欲を言えばロジェも錬金術士なのだから戦わせたかった。

現在トロコン目当てに裏ボスに挑戦し始めたところなんだけどなんかめちゃくちゃ強くね?やり込みがいがありそうで楽しみです。

※7月3日追記
トロフィー目当てで裏ボス倒しました。スール&アルトとマティアス&フィリスのスキルをダメージソースに、ソフィー&イルでドナクリ連発という戦法。装備効力ゲーなのでそれ意識して装備整えればどーにか勝てました。

賑やかな日常の根底にたたずむもの

先ほどギャグテイストが変わったと書いたが、今作はシリアスな話の純度が高い。 f:id:sinodakei:20210625041811j:plain 実はオープニングで双子たちは父の部屋の絵画の中で母によく似た人影を見つける。アトリエランクを一定数上げたあとになってそれが物語後半の主題になってくるのだが……もはや言わなくても分かるよな!?詳しくはネタバレになるので割愛するとして─この家族愛をテーマとしたメインシナリオが素晴らしい。 f:id:sinodakei:20210625041933j:plain f:id:sinodakei:20210625041930j:plain ゲーム序盤、家族みんなでお墓参りをした際に墓前で語りかける娘達を遠巻きで見つめるロジェはグレースに「まだあいつらには母親が必要なんですかね」と呟く。するとグレースはこう返すのだ「妻を亡くして誰よりも悲しんでいるのはあなたでしょう」と。

アッッッッ!!!!!

ここでプレイヤーは察するのだ。一見ちゃらんぽらんなロジェの行いも全ては母を失った悲しみを娘たちに感じさせない気遣いから来るということを。

この会話のやりとり自体はよくある普遍的なものだが序盤にこの演出が差し込まれたことでロジェ側から物語を見渡す視点をさりげなく促しており、妻を喪った家族の奮闘記とでも言うべき厚みをもたらしてくれる。そもそも男手ひとつで二人の娘を育てるだけでも大変なことだ。もちろんそんな父の気遣いに娘たちは気付いており母を失った喪失感を互いに埋め合う関係なのは言うまでもない。筆者は察しが悪いのでこの描写が無ければおそらく気付くのが遅れたかもしれないだけに、この芯に響く描写を早々に見せてくれたのは率直に助かった。
f:id:sinodakei:20210625042503j:plain 街に存亡の危機が迫った際、仲間達と協力して解決を図るリディーとスーに対し「お前たちじゃなくてもいいじゃないか」と引き留めようとするロジェ。こういう男のずるさが見え隠れする逃げを打つような言葉って人間臭くて好きなんだけど、妻を亡くした上に娘達まで危険に晒せないのは当然な訳でこの台詞には誰もが共感することだろう。 f:id:sinodakei:20210627030602j:plain f:id:sinodakei:20210627030559j:plain f:id:sinodakei:20210627030556j:plain 双子たちも時折弱気な一面を覗かせる。いつもは賑やかだがまだまだ子供……というか母親がいないのは大人だって辛い。小さくなった母手作りの衣装を少しでも長く着れるように修繕したり、さみしくなった時は互いが互いに寄り添い励ましあいながら心の隙間を埋め合う姿には少しだけホロリときてしまった。むしろスクショ見て思い出してる今の方が少しうるっと来てるくらいだ。(自分でもよく分からない感情の振れ幅。)

こうした双子のシリアスな奮闘を踏まえた上で前述した大量の日常系のギャグを見ることになるのだが、多くのギャグ的なドタバタ劇がこうした切ない愛情の上に成り立っていると理解しながら鑑賞するのはこれまでと趣を異にする情緒に溢れていた気がする。なんていうのかな、確かにギャグはギャグとしてあははと笑いながら見るんだけどこういう下地を踏まえるとやっぱり違うじゃないですか。素直に笑えない訳でなく切なすぎる訳でなく、例えるなら香りが違うというか。 f:id:sinodakei:20210626063301j:plain f:id:sinodakei:20210626063258j:plain そんな双子たちはどんな困難があろうと「お母さんとの約束、やる前から諦めない!」と母との約束を思い出しめげずに立ち向かっていく。一人一人は半人前でも二人なら一人前なのだ。 俗物的だったふたりが先輩達から多くを学び錬金術で人に貢献する喜びを覚え、次第に国一番のアトリエという目標を超え何をしたいか見つめ直す展開は前作の流れを汲む淀みない純粋さに満ちている。

コルちゃんの父親やフリッツ・ドロッセル親子の尋ね人、プラフタの約束など過去作の伏線もしっかりと回収されており、シリーズの締めくくりとなるトゥルーエンディングは未来への希望に満ちた大団円。思わず目頭が熱くなってしまった程には痺れたしシリーズを遊んできて良かったなと思う。
まさしくグランドフィナーレと呼ぶにふさわしい結末だ!!!

気になった点

  • ボリューム自体は申し分ないがもう少し過去作キャラクターを2、3人登場させてもよかったかもしれない。イベントシーンの見返し機能もほしい。
  • マップの総数こそ多いが何故かマップの全体像を見ることは不可能で前作にあったファストトラベルも無い。マップは連結式で前作ほどでは無いにしろそこそこ広いため移動が面倒。
  • ランク試験の評価はエンディング条件に関わってくるので最高評価の花丸を取ることが前提となる。これ自体はチュートリアルでも釘を刺されるので問題ないのだが、こうなると下位評価を取るのはデメリットでしかないので評価分けの存在意義が疑問。
  • モデリングの向上やエフェクト、カメラワークに動きが付いたことでイベントシーンは賑やかになった。しかしまだまだ声優の演技と比較して演出が弱く、何かドタバタした展開が起きるとすぐ暗転してプレイヤーの想像に任せる作りなのがもったいない。
  • アトリエシリーズ恒例のお悩みの種、ゲーム序盤に採取した素材の使い道が無い問題。いちいち売るのもめんどくさいので自動で素材にリサイクルとかしたい。

まとめ

f:id:sinodakei:20210627015445j:plain 不思議シリーズ最終章。システムは挑戦的なフィリスから巻き戻るようにソファーへと形を変えたが、全てがブラッシュアップされ遊びやすくなり調合の分かりやすさ・戦闘の楽しさに長けており小さなタスクをこなす面白さも健在だ。

シナリオは過去二作のぽやぽやした日常系からギャグがメインの日常系へと変化した。極一部合わない描写こそあったものの、いつもより熱量高めで多くのキャラクターを巻き込みつつ進むドタバタ劇は鮮やかで、母を失った辛さを跳ね返すような家族愛を下地として進むことでグッと立体的になった物語は感動的だ。
そして全ての幕引きとなる未来への希望と温かさに包まれた大団円のエンディングにはシリーズを遊んできた人なら誰もが満足することだろう。 f:id:sinodakei:20210627011751j:plain

先ほどネタバレなので割愛すると書きましたがやっぱり我慢できないのでここに書きます。いつものやり方。クリアした人だけ読んでね。

開くとネタバレ。 f:id:sinodakei:20210627054711j:plain だってママン可愛いじゃん。これは書かざるをえないよ。

とにかくロジェが惚れたのが一発で分かるくらい天真爛漫さに満ちてましたね。錬金術やりたい(ドヘタ)とかママさん射撃大会優勝(ナニソレ)とか好奇心旺盛で。声もかわいいし。会いに行けばアイテムくれたり双子に対する愛情たっぷりはもちろんのこと、ルーシャにもお礼を忘れない気配りがいかにも母親って感じで良かった。肝っ玉母ちゃん……というには若すぎますが文字通り太陽のような明るさで家族の中心だったのでしょう。それだけにオネットが亡くなってから3人はよく立ち直った、とも。

トゥルーエンディングで外から双子を呼ぶ声が聞こえるのにアトリエにロジェとオネットが居るってことはあそこは絵の中ではなく現実のアトリエ、つまり生き返ったって解釈でいいんでしょうか。容易に生死が覆るのは基本苦手な僕ですが、こればっかりは良かったなと素直に思います。生き返ったとは言わずとも自宅内を自由にうろつけると考えるだけでも十分すぎますが。まぁ各人の想像に任せた演出なのは明白なんでこれ以上の回答はいらないですけど。 f:id:sinodakei:20210627054716j:plain 何よりもう、このふたりの笑顔を見るだけで泣いてしまうよね。

f:id:sinodakei:20210703131352j:plain 最後にトロコン記念でネルケ&不思議シリーズ主人公たちで一枚。どうもありがとうございました!!!

以上、読んで頂きありがとうございました。