さぐりがき

据置ゲーの情熱を取り戻したい男のブログ

ひとりぼっちだよ。『INSIDE』レビュー

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開発はplaydead。いつだったかLIMBOとのバンドル版買ったにも関わらずこっちはまだプレイしてなかったので遊びました。クリア時間は4時間ほど。これといったジャンルをいうのは難しいけど強いていうならパズルアドベンチャーといったところか。
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物語は赤い服を着たひとりの少年がどこからか逃げ出すところから始まる。なぜ追われているのか、どこへ逃げているのか、少年の名前や目的すらも不明なままゲームは進行していく。

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本作では文字や台詞、UIが一切表示されず操作説明すらもない。おどろおどろしくダークな世界観が映像と音のみで構成されており、基本モノトーン調だがライトに照らされた埃や濁った水といった細部までこだわったグラフィック、光と闇の対比からなるアートが印象的だ。画面は横スクロール形式だが時に奥行きあるアングルに移りかわる丁寧なカメラワークで没入感を深めてくれる。

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メインである謎解きは遠く離れたスイッチをどうやって押すかといった単純なものから、ヘッドセットを被って無気力人間を操作する本作独特の薄気味悪い世界観を表したものなど数多い。ひとたびミスすれば追っ手から銃で撃たれる、猟犬に食い殺される、溺死する、果ては身体が木っ端微塵に四散するなど多彩な死に様が用意されているのも見所のひとつ。しかしその陰欝な世界観に反して少し試行錯誤すればなるほどねーと解ける控えめな難易度で遊びやすい。遊んでる最中は割とサクサク謎を解きつつも「こーゆーの考える人は頭いいんだろーな」と感心させられるギミックばかりでしきりにうなづいていた。主人公の顔はのっぺらぼうにも関わらず細やかに作られたモーションのおかげで次第に感情が伝わってきたのは気のせいではないだろう。


本作の概要はこんな感じ。ここまで書いといてなんだがこれ以上本作を言葉で説明するのも無粋というものだし、ここから先は感想をば。
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結論からいって楽しくないけど面白かったという印象だ。

まずは面白かった点から。謎をまとったダークな雰囲気のなか探り探り進む世界観は斬新で、操作性は良好ロードも皆無、チェックポイントも豊富でストレスフリー。言語を排し感性に訴えかける作りはアート面だけでなくゲームプレイにも及んでおり、ヒントすら出さないプレイヤーの気付きに全て委ねるストロングスタイルは開発者がプレイヤーの知性を信頼している証に他ならない。チュートリアルでいちいち指図されるんじゃなくてお前なら出来んだろって無言で背中押してくれるのって案外嬉しいよね。

一方で気になった点もある。謎解きそのものの難易度は控えめで悩みこそすれ全体的にめちゃくちゃ苦労したという印象は持たなかったし、時折うーんと唸りながらも淡々と謎を解き淡々と先へ進む繰り返しは達成感に欠けどうしても作業感がつきまとう。とはいえ難しすぎても匙投げてただろうし、エンディングまで誰しもたどり着いて欲しいからこそ控えめな難易度なのは承知している。が、さすがにもう少し歯応えがほしかった。
中盤以降ゲームプレイに波を出すためかそれまでよりアクション性の強い謎解きが増え、決して難しくはないのだが面白いというよりめんどくささが勝る調整で少々ダレてしまったのも惜しい。
まぁこの雰囲気からして楽しさとは無縁のゲームだと事前に分かっていたしディストピアめいた世界観も加味すればこの作業感ですら意図的なのだろう。なので特別不満がある訳でもない。たしかに分かりやすい楽しさこそなかったがパズルが面白いのは事実でテンポよく遊び通せたことを考えれば満足だ。


ゲーム終盤はそれまでとガラリと様相を変えあっと驚く要素で気持ちを盛り上げてくれる。しかし最後に待ち受けるエンディングは静かで、呆気なく、驚くほど唐突に終わる。思わずポカーンと口を開けたまま「え、これで終わり……!?」と呟いたほどだった。普段様々なゲームで盛り上がるエンディングを多々見てきただけにこの結末は予想外だったし、知らず知らずのうちに盛り上がる結末を期待していた自分がそこには居た。
筆者自身深く考察や解釈をしないタイプなので乱暴な言い方をすればただのぶん投げっぱなしと呼んでも構わないとすら思う終わり方なのだが、それでもそれまで暗い世界観をずっと辿ってきたおかげで難なく受け入れられたというか、驚きと同時に「こういう結末もこれはこれでアリかもな」と率直に思えたのはひとつの収穫かもしれない。このゲームらしくない渋さが光る渇いたエンディングこそ本作にふさわしい幕引きと言えるだろう。

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なんかいつにも増して締まらない感想だけどそれじゃあ今回はこの辺で。読んで頂きありがとうございました。