さぐりがき

据置ゲーの情熱を取り戻したい男のブログ

お前のいいねが世界を結ぶ 『DEATH STRANDING』 レビュー

いやークリアしました。
小島監督独立後初監督作品 デスストランディング。クリア時間は約40時間。日本語音声で遊びました。


E3 2016で赤ん坊を抱いた全裸のノーマン・リーダスが登場する衝撃的な映像で幕を開けた本作。敵役にマッツ・ミケルセン、なぜかギレルモ・デル・トロ監督まで出演するなど脇を固める俳優女優陣も豪華な顔ぶれ。
その世界観やシステムは長いこと謎に包まれていましたが、ようやく発売となりました。





マッツ・ミケルセン& ギレルモ・デル・トロ



買う前はコジプロ設立1作目だからボリューム少ないんじゃないの〜とか、システム色々面倒で大変そうとか正直ちょっと疑ってたんですよ。

しかしその不安をものの見事に裏切ってくれました。めちゃくちゃ面白かったぜ!!!

本作独自の要素が多いため、説明挟んだほうがいいか悩みつつダラダラ書いたら思いのほか中途半端で長くなりました。ご容赦ください。

はじめに

あらすじ

舞台は近未来のアメリカ大陸。デス・ストランディングと呼ばれる未曾有の大厄災が発生、交通網や生活インフラの大部分が破壊され、人々は生きるためにそれぞれシティやシェルターに籠り生活することを余儀なくされる。


世界は大きく分断された。


そんな大きく隔てられた世界で伝説の運び屋と呼ばれる男がいた。男の名はサム・ポーター・ブリッジズ。

彼に課せられた依頼は、各拠点をカイラル通信と呼ばれる通信網で結びながら最終的に大陸の東と西を繋ぐこと。
この過酷な任務を達成しアメリカ再建の橋渡しとなれ。


ノーマン・リーダス



ゲーム概要

ゲームのポイントは配送・山登り・いいねの3つです。

プレイヤーは配達人サムとして拠点から依頼を受け、地図で移動ルートと地形を確認しながら荷物を目的地まで配送します。フィールドには多くの資材や落とし物が落ちており、依頼のついでに拠点に届けることで資材は様々な装備の作成が、落とし物は評価がもらえます。



サムにはスタミナ、装備や荷物には全て耐久力があり、喉の乾きや靴の劣化に気を配りながら移動します。足場の悪い山や流れの急な川を歩くことも多く、荷物を壊さぬよう傾斜を登るのは大変で下り坂も油断できません。


そこで必要になるのが装備アイテムです。小さな川なら梯子をかければ濡れることなく進めますし、ロープ用パイルを使えば急な崖も降りられます。フィールドに設置し使用することで困難な地形も渡れるようになります。

アイテムを駆使していかに荷物を届けるか
これこそデスストの醍醐味
です。




転ばないように気をつけて



このゲームにはオンライン要素がありますが、他のプレイヤーとマルチプレイはできません。フィールド上に設置したアイテムの共有と、必要資材を共同で投入し橋などの建設物を建てるのみ。看板を立てて励ましたり注意を促すこともできますが、あくまで間接的な繋がりです。

しかし、これらアイテムにはなんといいねができるのです!これがデスストにおける至高のコミュニケーション手段!
この梯子があったおかげで移動がめちゃくちゃ助かった、なんてときはボタン連打でガンガンいいねを送りましょう。きっと喜ばれます。もちろん他のプレイヤーに自分のアイテムがいいねされることもあります。1000いいねとかもらえます。



1600いいねもらいました



単純な話ですけどたくさんいいねもらうとやっぱり嬉しいんですよ。

いいねなんてなんの価値もねーよおめでたい奴だなって達観してるツイッターに疲れ果てた人、もしいたら手を上げなさい。きっとやみつきになるんで遊ぶことをオススメします。

ちなみに、はじめから他のプレイヤーのアイテムを使って楽々移動はできません。自分の足で新たな拠点に赴きカイラル通信を繋げることで、初めてその地域がカバーされ他のプレイヤーの建設物が出現します。

デスストの発売日からだいぶ経って買ってみたけどほとんど開発されててつまんないよ、なんてことにはなりません。思う存分開拓精神が味わえます。だから安心して買いましょう。




サムはひとりで配達をこなしますが、フィールドに設置された様々な装備といいねを通して他のプレイヤーがいた痕跡を感じとれる。
このゆるい繋がりこそデススト最大の特長です。

孤独な他人が孤独な自分を癒してくれる。ひとりだけどひとりじゃない。

そんなゲームです。




一歩一歩確実に

移動

このゲームの移動は特徴的です。特徴的といっても爽快感あるワイヤーアクションでビュンビュン飛ぶわけじゃありません。基本的に歩きがメインです。地味。R1ボタンを押すことでオドラデクという背中のレーダーで足場の良し悪しを視覚化して移動します。川の激流に流されないよう踏ん張りながら進んだり、岩石地帯を転ばぬよう進んだり。R2L2同時押しで体勢を整えれば序盤は派手にコケずに進めると思います。
L1で主観視点にすれば方角と目的地が一目瞭然です。少しでも歩きやすい道を進んでいきましょう。



実はぼく最初は地図上のルートを目的地からサムまで一直線に引いて進んでたんですよ。序盤のうちはそれでもちょっと脇道逸れる程度で行けたんですけど、なんか大きく峠を進むことになってさすがにキツくて移動ルートをしっかり決めようと考えを改めました。


荷物を無事に配達すると経験値となる評価が貰えます。どんな配送をしたかでサムの各ステータスがアップしていきます。ちなみにお金は存在しないので思う存分タダ働きです。やりがいありますね。
評価で最も重要なのが荷物の劣化具合。転んで荷物を傷付けると大きく評価も下がります。

いかに荷物を壊さず安心安全に運べるか

これこそ伝説の配達人に求められる最も大切な掟です。急いで最短距離を進むより、遠回りしても荷物を傷付けずに運ぶことがなにより大切。どんなときも急がば回れの精神を忘れずに。



時雨

しぐれじゃないです、ときうって読みます。触れた物の時間を奪う雨。何その設定カッコイイ。
移動中に時雨が降りだすと、カッパのフードが自動で頭をガードしてくれます。なので急にサムがおじいちゃんになることはありませんが、荷物を包むケースや靴などの装備品はジワジワと劣化します。荷物を運ぶことがメインのこのゲームにとって時雨は大敵。時には雨宿りも必要かもしれません。

え?サムの着ているカッパで荷物を包めばいいじゃねえかって?こまけぇこたぁいいんだよ。





配達準備から全ては始まっている

シティや配送センターなどの各拠点の地下にはプライベートルームが設置されており、サムはここで休憩できます。ここではシャワーを浴びたりトイレに入ったりフィギュアを眺めたりと様々なことができます。



サービスシーン






しかしずっと休んでばかりもいられないので、重い腰を上げて配送依頼を受注しましょう。配達で重要なのがお届けする荷物以外に所持できる装備です。

装備といっても
・サムが実際に身につける靴などのアイテム
・梯子やロープなどの使用できるアイテム
この2つに大別されます。



装備作成


いろんなものが作れます

拠点では資材を使い装備作成ができますが、ストーリーを進めるとだんだん作れる装備が増加します。なんと資材さえあれば車やバイクも作れます。
多くの装備があるのでその一部をご紹介。
荷物運搬に便利な荷台のフローター。体に紐でくくりつけての荷物運びができますが、実は上に乗ることでスケボーみたく使用するのが本命です。
SFらしい強化外骨格のスピードスケルトを装備すれば高速移動が可能になり、助走をつければ大ジャンプも可能です。初めて大ジャンプした時はフォトリアルな見た目で人外な動きするからやべーバグかと思った。
どちらも亀の甲羅に乗ったりBダッシュするマリオみたいですね。あ、そういえばこれSIE発売のゲームだった。




重量制限

アイテムには全て重量があります。重量制限ギリギリまで持つと移動が遅くなりますし、あまりに高く積みすぎるとバランスを取れずにフラフラになります。




明らかに積みすぎ



重量制限なんてただめんどくさいだけの要素じゃんと思ったそこのアナタ。これがけっこう楽しいんです。

・資材集めなら、なるべく多く持ち帰るために必要最低限の装備だけ持とう。
・目的地が山を超えた先なら、ロープや梯子で急な斜面に備えよう。
・身を守る武器も必要。強力な武器ほど重いしデカい。
・靴の予備と荷物ケースの回復スプレーはどんな時でも忘れずに。


装備をたくさん持って準備万端にすればするほど拾える資材は少なくなりますし、かといって少なすぎると敵や地形の不測の事態に対応できません。
円滑な配達には何が必要か持ち物の取捨選択が大切です。持ってないときに限って梯子が必要になったり靴が壊れたり、事前準備の大切さを痛感させられます。



行きと帰りで異なる装備の非対称性を考えた上で、限られたリソースの何を優先するか。
リスクとリターンどちらを取るか。

配達前の準備段階から全ては始まってます。







装備の種類こそ多いですが、整理が極端に煩わしいとはおそらく感じないでしょう。持てる重量に限りがあるため必然的に装備を絞ることになりますので。用途を分けて考えれば分かりやすいですし、必要なものはおのずと限られてくると思います。

・⚪︎ボタン長押しですぐさま決定
・荷物を選ぶ縦スクロールは十字キー左右で項目ごとにジャンプできる

この2点は忘れず覚えてほしい。何度も装備を整えるゲームなので少しでも快適にこなしていきましょう。




これであなたも配達の虜

国道復旧

デスストランディングではチュートリアルを終えると多くのプレイヤーを虜にする要素が待ち構えています。




国道建設マジ楽しい👍👍👍👍👍👍👍👍👍



今はもう荒れ果てた大地に国道を復旧させましょう。復旧予定地のそばには専用ポストがあるのでガンガン資材を投入します。いらない使わない装備は拠点で資材にリサイクル。オンラインで他のプレイヤーも資材を入れてくれるので共同作業がはかどります。
国道を復旧させることで、さっきまで苦労して歩いたデコボコ地面が舗装された立派な路面に早変わり。あくまで復旧なので決められた場所に建設されますが、自らの足で稼いだ資材がついに身を結ぶこの瞬間。




これがすげー楽しいんですよ。今までめんどくせーって地面をチマチマと歩いてきたわけでしょ。それが途端にアスファルト。まず拠点間の移動時間がめちゃくちゃ短縮される。遮るものが何もないので見晴らしが良い。整地されてるからいくら走っても全然コケない。日差しが暑くないからいくらでも走れる。次のオリンピックマラソンはここでやれ。





バイクで飛ばすのも超楽ちん。今まで苦労したぶんその快適さが身に染みる。なにより自分で作った達成感で何度も往復したくなります。

現実でも道路工事に改めて感謝したくなる!公共事業はマジ偉大!!!





ジップライン

そして数多くの装備の中でも建設装置は非常に便利なアイテム。カイラル通信が届く範囲ならこれひとつで装備を保管できるポスト、橋や発電施設など様々な設備が建てられます。さらには拠点となるセーフハウスや移動に便利なジップラインも建てられる。このジップラインが楽しいんです。



ジップラインとは、二箇所に建てることで空中に直線のレーザーが発生し自由に行き来できる機械。レーザーが遮蔽物で遮られると移動不可、有効距離300m。
国道復旧とは異なり新たなルートを開拓する面白さがやみつきになります。特に山の稜線に建てることで真価を発揮する優れもの。これさえあれば車もバイクもいらないんじゃないかってくらい移動が楽になる。







孤立し遠く離れた2つのジップラインを見つけたらチャンス。その中継地点に新たなジップラインを設置して、上手く両方に繋げれば長距離移動が格段に楽になる。
周りにジップラインが見当たらない場合でも、なるべく見晴らしがよく、アクセスの良い場所に建てることで他のプレイヤーのルート開拓に少しでも貢献できます。上手いこと役立ててくれよ〜って他のプレイヤーに託しながら建てるのがおもしろい。
もちろん自分で何本も建てることもできますが過信は禁物。ポンポン建てすぎると通信制に引っかかります。そうですカイラル通信には通信制限があるのです。いつだって俺たちはギガが足りない。



便利な建設物ほどいいねが貰えますが、最初からいいねをもらおうと過度な期待はせず、自分本位で建設して構わないと思います。そうすればきっと必ずだれかの役に立つ。情けは人のためならず。きっと誰かが使ってくれます。


建設中も含めるとこんな近場に4つの橋が。グランバニアもびっくり。



ときには戦うこともある。

ミュール


時折ミュールと呼ばれる配達依存症に陥った者たちに遭遇します。ミュールは依存症よろしくサムの荷物を狙ってきます。一対一ならパンチ連打で簡単に倒せますが、いくら倒しても経験値は貰えないのでスルー推奨です。

じゃあ戦う必要ないじゃん。そもそも戦闘要素いらなくねと思ったでしょ。確かにこのゲームは移動がメインで、敵と戦闘すること自体二の次三の次に作られているのは明白です。

けれど、俺には戦わなければならない理由がある。
なぜなら、ミュールは資材をめちゃくちゃ溜め込んでいるから!!!!






奴らが集まる集落にトラックで乗り込めヒャッハー狩りの時間だぜ!!!!!





世紀末思想で心を満たしミュール達に強奪仕掛けにいきましょう。集団を一度に相手にするのはさすがに面倒なのでトラックで轢くのが効率的。電磁槍を食らうとトラックから投げ出されるので気をつけて。

奪った資材をトラックに限界まで積めたら国道使ってピストン輸送。新たな国道を復旧させたらまた強奪。これぞ強者にのみ許されたループ。

最初に配達依存症と聞いて何言ってんだ訳わからん何この設定と思っていたら、気付けば自分が依存症になっている恐怖が味わえます。


配送するつもりが結局敗走するはめに





BT

ミュールより厄介なのがBTです。

時雨が降る中現れる、姿の見えない異界の怪物。このゲームのホラー要素。こいつらの出現地帯に足を踏み入れると地面の草が一斉に毛羽立つ。まるで地面が鳥肌立てているかのようなおどろおどろしさ。最初こいつらに遭遇したときマジビビった。しゃがみながら息を潜めて、静かに静かに歩かないと気付かれる。

一旦気付かれたら最後。途端に周囲を真っ黒なタールの池に変貌させ、どす黒い手が、上半身が、サムを引き釣り込もうと襲ってくる。これはヤバイ。全力全身で必死に振り払え!




ときには大型BTとも戦わなくてはなりません。こいつは地味に厄介で、下手をすると武器弾薬が0になるほどジリ貧な戦いを強いられます。そんな時はタッチパッドを押して救援要請。どこからともなく仲間が武器を投げて手助けしてくれます。

序盤こそ恐怖の存在で生理的嫌悪感をもよおすほどのBTですが、慣れると立ちションで撃退できる資材収集のカモです。

最初のころはションベンちびるほどビビったのに、そのションベンが弱点とは皮肉なもんですね。




ミュールとBTはこちらの戦闘準備が万全でなくても襲ってきます。特に荷物を運んでいるときに襲われると非常に厄介。隠れてやり過ごすか殲滅するか逃げ切るか。コイツらを倒すこと自体がこのゲームのメイン要素ではありませんが、配達時の良好なスパイスとして機能しています。

BB

ゲーム開始序盤でサムに託される赤ちゃん。レーダー使ってBTを探知できるのはこの子のおかげ。バブバブ言うからBB。いつもサムと一緒。さしづめ子連れ狼



サムがBTに襲われたり転んだりすると、BBはストレス溜めて泣き出すので優しくあやしてあげましょう。あやす操作はコントローラーを振る操作からR2ボタンに設定変更推奨です。

最初は単にキモい怖いあやすのめんどくさいとしか思わなかったんですよ。オレンジ色の液体に満たされた容器に入ってるし、ホラー演出もあるし、すぐ泣くし。
けどゲーム後半になると愛着湧きました。あるイベントで「あ、こいつかわいいかも」って。こういう心境の変化っていいですよね。製作者の意図通りに心動かされてるなぁってうまく術中はめられてる感じ。
仲良くなるとコイツもいいねをくれるので、サムもすっかりにやけ顔。正に血の繋がらない親子って感じです。

過酷な峠が君を待つ

だんだん依頼が面倒に

ゲームをけっこう進めると大変な依頼も増えてきます。制限時間付きの依頼だったり、BTがうようよいる場所からいくつも荷物回収したり。え、これマジで運ぶの?なんか場所すげー遠いんだけどって依頼だったり。100kg超えるような荷物もあってちょっと勘弁してくれよって言いたくなります。


車やバイクを使えば一応楽にはなるとはいえ、意外と油断はできません。




雪山マジでつらいんだけど

そんななかでも雪山は特につらい。ここがすげーつらい。マジでつらい。心がカチカチになる。ちょっとウンザリするくらいつらい。つらいつらいつらい。

お届け先は人里離れた山奥です。車両に乗ってもいいですが峠の斜面が険しくて多くの人は基本徒歩で行くと思います。


見るからにつらい


雪山って聞いただけでつらいのは分かると思うんですけど、一体何がそんなにつらいのか。
まず雪に足が取られることでスタミナの消費が早い。さらに一部の場所はBT地帯のため嫌でもひっそり歩かなけばならない。時雨は時雪となって強烈に吹き付け荷物の耐久力を急速に奪っていく。だからモタモタなんてしていられない。数m先も見えない視界で何度も地図を確認しながら進んでいく。現実だったら100%遭難してる。極寒の雪山はホントのホントに人が踏み入れてはならない領域だった。




どうにかこうにかヘトヘトになって荷物を届けると、今度は休む間もなく届け先で次の依頼を言い渡される。ちょっと待ってよさっきも別のところから運んできたんですけど。さっきからこき使いやがってふざけんなチクショーたらい回しかよ。早くシティに帰りたい。帰ってシャワー浴びてモンエネ飲みたい。せめて、せめてどうか一晩宿を貸してください。とにかく寒くて凍えて死んでしまいそうです。あ、無理ですかはいそうですか。結局荷物を届けるしかないのか。泣き言いっても始まらない。自分に喝を入れてまた新たな目的地へ。


ちなみにレスキューヘリはありません



艱難辛苦を経てカイラル通信を繋げると、他のプレイヤーたちが皆で苦労して建てたセーフハウスやジップラインが雪山でも使えるようになります。格段に移動が楽になるのでマジ天国。もうあの死にそうな峠を歩かなくていいんだイヤッホーウ。1番最初に建設した人に感謝感謝。超いいね。


疲れた〜〜〜〜〜温泉最高!!!







なんかこういう書き方すると「デスストは雪山行ってからクソゲー」みたいな感じに受け止められても困るのでここでひとつ

このゲームのつらさは明らかに意図的である

ということだけはしっかり申し上げておきましょう。




過酷の果てには虹がかかる

このデススト、絶景を満喫しながら大地を踏みしめ大自然謳歌するゲーム、と言いたいところなんですが、正直そこまでカッコイイもんじゃないです。メインクエストでは地味で地道で忍耐と根気が多くを占めます。


コントローラー握ってるだけなのに2、3回配達したらなんか疲れてくるんだよ。過酷な任務だとマジで今日は疲れたし遊ぶのもういいかなってなる。


サムがときどき呟くんですよ。新しい橋を見つけると、はにかみながら道ができてるって。腹に力入れろ、やってやる、俺ならできるって自分を鼓舞したり。
ああそうだよなあ。サムだってつらいよなぁ。この任務を受けたときだって渋々引き受けてたもんなぁ。赤ちゃん抱いて大陸横断なんて正気の沙汰じゃないよなぁ。
頑張れ!!頑張れサム!!応援してるぞ!!!


いかにもシンボリックでSFめいた分かりやすいランドマークなんてこの世界にありはしないんです。*1さぞかし幻想的な景色が待ち望んでいるかと思えば、近未来でもその光景は現代とさして変わらない。
地球は偉大で人間ってちっぽけなんだなぁ。もし仮に未来に人間が滅んでも地球はそのままなのだろうか。なーんて思わずそんな月並みな想いが頭をよぎる。



ただ地面を見つめながら、ただひたすら歩く。草をかき分け、吹き付ける風は強く、打ち付ける雨音と砂利を踏む音が延々と聞こえる。ポケーーと頭半分カラッポになったかのような感覚を覚えながらもひたすら歩き続ける。たまに人の痕跡を見つけると、俺はひとりじゃないまだ頑張ろうって思える。ただ歩いて、歩いて、歩き疲れて、ふと立ち止まり景色を見つめる。


「綺麗だな…。」


そんな言葉がポツリと口をついて出る。

そんなゲームなんです。







それでも足を止めずひたすら歩き続けて目的地まであと少しになると、


ボーカル曲が雰囲気たっぷりに流れてきます。

染みる。



心に染みる。


染みるゥゥォゥァ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜。



これは心に染みますよ。めちゃくちゃいい演出です。疲れたぁ〜〜〜長かったぁ〜〜〜〜〜と深く息を吐くこの感覚が癖になる。




この小島監督渾身の演出、ぜひ自らプレイして味わってもらいたいですね。



まとめ

例えるなら半サンドボックス型とでも言うのでしょうか。ブロックを組み合わせて1から全てを作るのではなく、小さなミニチュアを配置することで広大な世界を開拓する楽しさ。それらを共有しいいねしあう喜び。自身でルートを判断し、地形に適応しながら荷物を配達する達成感。これこそデスストの持つ魅力といっていいでしょう。



フィールド上に足跡や数多くの装備が置かれることで、他のプレイヤーの足取りが分かるのも面白いです。

例えば少し見づらいですがこの画像にはロープがあります。明らかに難しいルート*2で移動した痕跡を発見して皆苦労したんだなぁと少し微笑ましくなりました。



そうした過酷に配達する静かな時間ばかりかと思いきや、ミュールや大型BT相手に大暴れもできる。物理演算でサムや車があらぬ方向に吹っ飛ばされガハハと笑える要素もあったりと、静と動に満ちたアドリブ性ならではの楽しさがあります。





チュートリアルのテンポ感も良かったですね。歩いてばかりでそろそろ飽きたかもーって感じたところに建設装置で橋作り、建設装置もそろそろ飽きたかもーって感じたら車両や国道復旧。
序盤にダレそうなあたりで巧みに新要素が解放される調整が印象的です。そのおかげでゲーム後半まで波に乗れた感じがあります。







オープンワールドゲーはだだっ広いだけでその広さを生かしきれてない。目的地のコンパス追うだけでつまらない』

そんな意見にたいして、移動を遊びにすればいいという強引な手法で突破したのが本作だと思います。FPSRPGなど爽快感が必要なゲームで全く同じ移動方法を使ったら大顰蹙だと思うので、このゲームならではの解決策って感じです。


オープンワールドはその自由度ゆえに、サブイベントをこなすか否かで体験に大きく差ができるという問題点もあります。メインクエストだけをこなすと意外と短かったり。

たいしてデスストではメインクエストだけを追っても移動そのものが大変で体感時間が長かったです。これが満足感に繋がっているのかなと感じました。確かに資材集めに夢中になっている時は辞め時が分からないくらい時間が早く過ぎていくのですが、そのバランスが上手く取れており解消出来てる感じがしました。


ちなみにマジで楽しいって書いた国道復旧を序盤に楽しみすぎるとオープンワールド疲れに襲われると思うので注意してほしいです。ぼくは国道復旧楽しイィィってなってる時に、これ夢中になりすぎると終わらなくてやべーかもって断腸の思いで切り上げました。







そろそろ結果より過程が大事なゲームだとありきたりな締め方したくなるんですが、その言葉はあえて使いません。だってお前それサム本人の前で言えるか?
「じゃあお前俺に変わって徒歩で大陸横断してくれよ」とか怒られそうじゃん。怖くて言えねーよ。そもそもこの世界にヘリがあったらサムだってヘリ使うよ!!!





おわりに


ゲーム内要素の一部とそれにまつわる感想を書きました。まだまだ遊び尽くせてはいませんが、斬新なシステムでこの完成度、遊びやすさ、懐の深さ。デスストはどれをとっても一級品でした。こうした大作ながら変わったゲームが世に出ることに一種のありがたみすら感じます。
DLCが発売決定してこれまでとは全然異なるフィールドや装備が実装されたら嬉しいですね。分かりやすいランドマークのないゲームと言いましたが、もし色々追加されたらそれはそれで嬉しいもんです。


今回メインストーリーには極力触れませんでしたが、その練られた世界観設定と演出、悩み葛藤しながらも世界と向き合う生きたキャラクター達は非常に魅力的です。
以上最後までお読みいただきありがとうございました。


お疲れさまでした








※追記 メインシナリオネタバレ全開の記事も書きました。クリア後に読んでね。

sagurigaki.hatenablog.com







気になった部分


一部演出スキップがめんどくさい。
トイレやシャワーを浴びた時、プライベートルームの出入り時、リサイクルした時など細かなムービーが面倒。リサイクルとプライベートルームはスキップを2回繰り返すのがダルイ。時間にして2、3秒なのが幸いですがアプデで修正してほしい。


BT地帯突入時テンポが悪い
こちらもオドラデクがBTを探知した際恐怖を煽る演出が毎回入る。カメラが強制アップになるので見づらく操作を中断させられる。


大型BTに攻撃を喰らうと一定時間よろける。
画面左下にあるアイテム使用が全て×になり操作不能に陥る。リアルな挙動はいいけどこちらも地味にストレス。



シアタールームが無い。
あの長い長いムービーをまた通しで1から全て見たいかと言われれば答えはNOですが、やはりあったほうがいい。


目的地近くまで来た時に洋楽が流れる渾身の演出だが、日本語字幕が無い。
これは正直歌詞派のぼくにとっては致命的というか、あと一歩及ばなかった感じです。めちゃくちゃ良い演出なだけに悔やまれますね。画面右に字幕縦書き表示してくれるだけでもありがたかったんですけど。もしかして設定で表示可能なのをうっかり忘れてた、なんてことだったら惜しいことをしたな〜。



あとがき

レビューを初めて書いてみました。疲れました。

このデススト、華やかな旅路なんかを期待して遊ぶとちょっと肩透かし食らいそうな気もします。だってどのシティも無機質な見た目で変わらないですからね。NPCも最低限、なるべくコストを抑えた作りでそれを成立させるための世界観設定なのは明らか。それが孤独感を強める綺麗な形に落とし込まれているのは見事です。

ネタバレアリナシどちらにしようか悩みましたが、結局メインストーリーとか混み入った設定に関しては配慮してあまり書きませんでした。なのでちと消化不良感もありますが、いいかげん長いのでとりあえずこのへんで。


※追記

書くの忘れちゃったのでここに追記するんですけど、デスストのことを小島監督が「人に優しくなれるゲーム」って紹介したじゃないですか。正直僕はどうせ数日経ったらFPSで死体撃ちされてブチ切れるし、時事ネタに反応するし、自分はそうそう変わらんもんだと思うんです。
けれど、『このゲームやってる時だけは優しくしよう』という気持ちが芽生えたのも事実なんです。優しくするといってもボタンポチポチいいねするだけなんですけど。ちょっとくらいそうしてみようかなって心の羅針盤が動いたのは記憶しておきたい*3ですね。ボタンポチポチするだけですけど。

*1:トールネックのホログラムなんかはドSFですが、あくまで開発協力したゲリラゲームズとコラボみたいなもんなので除外させて

*2:この逆方向にもっと楽で分かりやすいルートがあるんです。ハートマンのところ。

*3:思い留めるとか大切にしたいとか絶対忘れないとかじゃなくてあくまで記憶したい、ね。