さぐりがき

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幻想立体万華鏡。『マニフォールド ガーデン』レビュー

f:id:sinodakei:20210810184415j:plain 今回は『マニフォールド ガーデン』をレビュー。ZERO ESCAPEシリーズを遊んだら意外とパズルゲーって面白いなと軽く目覚めたのを理由に流れでプレイ。プレイ時間は8時間30分ほど。

f:id:sinodakei:20210810184550j:plain f:id:sinodakei:20210810184553j:plain 本作は一人称視点のパズルゲームだ。序盤は狭い室内に閉じ込められており壁に向かってR2ボタンを押すとクルッと90度回転してその方向が床になり、壁だった面を床として歩くことが可能になる。こうして通常では届くはずのなかった場所にブロックを運んだりスイッチを押すことで先に進んで行く。

f:id:sinodakei:20210810184507j:plain f:id:sinodakei:20210810185113j:plain ブロックには色と矢印が書かれており矢印と重力の向きが揃った場合のみ落下する。向きが揃わなければ空中に静止する。この特性を利用して矢印の異なる複数のブロックを通常では届かない箇所に積み上げたり移動させたりとゲーム開始1時間からだいぶ頭を悩ませる謎解きを紐解いていく。操作説明は最低限でヒントすらないプレイヤーの気付きに全てを委ねたストレートな作りなので歯応えは十分だ。

重力の落下する方向を指定してどんな場所にも立てるシステムはグラビティデイズを彷彿とさせるがあちらの地形がなだらかな斜面や建物など角度が様々で自由度が高かったのに対し、本作の建築物は全て90度のカクカクした四角の集合体で構成されているので都合前後左右上下の6方向のみ考えれば良いというシンプルさ。ジャンプすら出来ないのでちょっとした段差ですらいちいち重力の向きを変え乗り越える必要があるのは面倒だが、この愚直なまでに一貫したルールのおかげで早々に謎解きに没頭することができた。まぁ没頭しても解けるかどうかは別問題なのだが。

f:id:sinodakei:20210810211718j:plain f:id:sinodakei:20210810211914j:plain f:id:sinodakei:20210810233819j:plain f:id:sinodakei:20210810233942j:plain 序盤の狭い建物内を抜けると一転して広大なフィールドに降り立つ。周囲を色鮮やかな幾何学模様に彩られた景色は壮観だ。この世界はひとつのステージを無限に繋げた構造になっており 、一度空中に浮かぶ建造物から飛び降りればそのステージの真上から降って元の場所に着地が出来る。その気になれば永遠と落下し続け永遠と階段を登り続けられる狂った世界はなんとも言えぬ非常識に満ちており新鮮だった。とはいえ結局は一つのステージを繋げているので無限だが有限という一見何を言ってるか分からない範疇の出来事に収まっていることこそ本作のキモだと思う。一見無限に思えて案外手がかりは近くにあるのがなんとも小憎たらしい。

この無限ループによる無限落下を駆使して何度も何度も挑戦する謎解きは手強いが落下死のストレスから完全に解放されているおかげで理不尽さを覚えることはない。無機質な風景ばかりですぐに飽きると思いきや木からブロックをもぎったり水流の流れを変えたりステージクリアすると鳥が飛んだりと適度な有機物で飽きさせないのも嬉しい。

f:id:sinodakei:20210810212134j:plain f:id:sinodakei:20210810213924j:plain f:id:sinodakei:20210810213920j:plain ステージを追うごとに謎解きは段々と難しくなる。そもそも同じ風景が延々続く騙し絵のような構造上大変迷いやすいので移動するだけでも一苦労。シンメトリーがどこまでも続く理路整然とした圧巻の風景はちょっと上を眺めるだけで今自分がどこに立ってるか分からなくなる。筆者はゲーム開始から2時間くらいは軽い胸焼けのような酔いを覚えたがやたらと視点を振り回さなければすぐに慣れたので幸運なほうかもしれない。酔わないポイントとしてはなるべく背景を見ず目の前に集中することでいくらか緩和できるかも。

酔いの話を抜きにすればFPSとしてオーソドックスな作りであるおかげか操作性が良好という点も見逃せない。視点移動はなめらかで変な引っ掛かりもないし、ブロックを持ったまま階段を駆け上がればカカカカカッとブロックが階段のヘリに当たる音と振動が規則的に伝わるのがなんとも小気味良い。アート的な感性だけでなく実を伴った手触りの良さで魅了してくるのも優れたポイントだろう。

f:id:sinodakei:20210810220333j:plain f:id:sinodakei:20210810220339j:plain f:id:sinodakei:20210810220336j:plain 本作はヒントが提示されないので悩むとっかかりすら掴めない分からん殺しに近い謎も頻発する。

  • ブロックで水流の流れを変えられる初歩的なことに気付かなかった。
  • 黄色い木と大量のドアがある箇所の謎解きで立ち往生した。
  • オレンジステージの最後に黒いボックスを嵌めるための道筋が分からなくて完全な迷子になった。

筆者はこの3点がどうしても分からずネットでヒントを調べてしまった。パズルゲーを遊んでいるのに攻略に頼るのは御法度だし、いい加減この根気の無さは自分でもなんとかしなきゃなと毎回思う。分かってしまえば基本的なことばかりで毎回後悔するのだが、まぁps5に搭載されてるらしいヒント機能がps4には実装されていないしちょっとくらい良かんべ、という言い訳を自分にすることで良しとさせてほしい。

それ以外の謎は自力で解けたのは良かった。重力を利用してボールや足場を動かしたり、ブロックの色を変ええっちらおっちらあーでもないこーでもないと考え続ける地道な思考は疲れるが楽しい。思考の密度が詰まっているぶん色々悩んで考えたのに意外なほど時計が進んでおらず濃密な時間を過ごせたのは有意義な体験だった。

f:id:sinodakei:20210810220306j:plain 以上、読んで頂きありがとうございました。