さぐりがき

据置ゲーの情熱を取り戻したい男のブログ

策謀逆巻く脱出デスゲーム。『ZERO ESCAPE 9時間9人9の扉』レビュー

f:id:sinodakei:20210724080948j:plain 今回は『999』をレビュー。開発販売はスパイク・チュンソフトでジャンルはADV。プレイ時間は10時間未満。昔DSで発売されたオリジナルの『極限脱出 9時間9人9の扉』はクリア済。でもEDくらいしか覚えてなかったので割と新鮮な気持ちで楽しめました。ZERO ESCAPEトリロジーとして三作まとめて購入しましたが元はそれぞれ独立してるのでレビューも別々です。

あらすじ

f:id:sinodakei:20210724071120j:plain 「これから君達にはゲームをしてもらう。」

なんの変哲もない大学生である主人公淳平は目覚めると見知らぬ部屋にいた。集められたのは自分を含めて9人の男女。何故ここにいるのか。彼らは一体誰なのか。腕に嵌められた奇妙なバングルはなんなのか。そんないくつもの疑問をよそに首謀者ゼロによって告げられたノナリーゲームの開幕。タイムリミットは9時間。この狂ったデスゲームの謎を解き明かし一刻も早く脱出せよ。

ノナリーゲームとは

f:id:sinodakei:20210724071207j:plain f:id:sinodakei:20210724072207j:plain ノナリーゲームとは数字根をキーワードとする脱出ゲームだ。数字根とはとある正数を一桁になるまで足し続け最後に残った数字のこと。例えば6+7+8なら答えは21。その2と1を足すと3。この3が数字根だ。

登場人物たちの腕に嵌められたバングルにはそれぞれ1から9までの数字が描かれており、ナンバリングドアと呼ばれる扉に記された赤い数字と数字根を等しくすることで入室が可能。しかし3人〜5人の入室制限があるので一人で入室するなどルール違反を犯せば爆死。最終的に9と描かれた部屋をクリアすることがノナリーゲームのゴールとなる。

シナリオ

f:id:sinodakei:20210724075117j:plain f:id:sinodakei:20210724075114j:plain f:id:sinodakei:20210724091030j:plain 本作は脱出ゲームらしく背景をくまなくクリックして調べ上げ入手したアイテムを使って謎解きをしていく。ふたつのアイテムを組み合わせ新たなアイテムを作り出すことも可能なので発想とひらめきが必要だ。

謎解きの中身はちょっと賢い小学校高学年なら割と解けそうなレベルで筆者自身「こんなモン楽勝だろ!そもそも俺一度クリアしてるんだが!?」とナメてかかったらこれが意外と難しい。どの謎も分かってしまえばなるほどなぁ〜と規則性に満ちたものばかりで根気とひらめきが重要なのだが、どうしても堪えきれずヒントを見てしまったことも2回ほどあり正直悔しさで一杯だ。

f:id:sinodakei:20210724082948j:plain f:id:sinodakei:20210724082941j:plain f:id:sinodakei:20210724082944j:plain f:id:sinodakei:20210724100713j:plain 登場人物たちは首謀者ゼロに素性を悟られないため互いをあだ名で呼び合う。大柄なセブンに妖艶な八代、盲目のニルスにその妹四葉など分かりやすいキャラが揃っており、繰り広げられる豊富な雑談とあわせてだいぶ親しみやすいキャラばかり。軽いモーションや口パクでちゃんと動くのはリッチな作りだし、アニメのような見栄えの立ち絵も馴染みやすい。時としていちいち立ち絵を切り替えずワイプで済ませるのもテンポが良い。

今回新たにボイスがついたことでよりキャラクター性を掴みやすく賑やかになったのは嬉しいポイントだ。特に主人公の幼馴染でメインヒロインである沢城みゆき氏が演じているのはオリジナル版を遊んでいた身からするとだいぶ意表をつかれたが、しっかりとハマりきった演技をしていたのはさすがだった。惜しくもフルボイスとはいかず謎解き中のちょっとした会話はポポポ音なものの、実力派が揃って演じているのでオリジナル版以上に物語に浸れることができた。

f:id:sinodakei:20210724084802j:plain f:id:sinodakei:20210724084756j:plain f:id:sinodakei:20210724084759j:plain もちろん、脱出デスゲームだけあって打算や仲間割れは当然のように起こるのでそのあたりも見どころだ。

このノナリーゲーム最大の要はドアに書かれた数字と入室する人間の数字根を一致させなければならない点にある。つまり必然的に入れる組み合わせは限定されるわけで、目の前に二つの扉があれば別れざるを得ないこともあるし、そればかりかどうしたって仲間を置き去りにしなければ進めない展開も出てくる。協力と裏切りを前提としたルールから巻き起こるサスペンスはグイグイ読ませるほど引きが強く、気付けば購入から3日でクリアしてました。

f:id:sinodakei:20210724090754j:plain f:id:sinodakei:20210724090744j:plain 謎解きは分かりやすい脱出ゲームめいたものばかりでなく、見るからに不穏さを感じさせるおどろおどろしいものも存在する。背景のCGは全て3Dで作られておりグラフィックそのものは簡素だが、このチープさが返って無機質な不気味さを演出しているのが少しコワイ。

新要素として地の文をカットしてキャラの台詞だけを表示するADVモードが追加されサクサク進めるので凄くテンポが良いのも助かった。もちろんオリジナル版同様ノベルモードも存在しているので重厚な地の文と併せて読むのも可能。どちらで遊ぶかはお好みで。フローチャートで異なる展開を苦もなく見れたり未読スキップオンオフ可能なのもありがたい。

f:id:sinodakei:20210724090748j:plain f:id:sinodakei:20210724090750j:plain 物語が進むとグリセリンの結晶化のシンクロニシティやアイスナイン、テレパシーといったオカルトに近い与太話が深く関わってくる。こんにち疑似科学や創作であると広く知られた事柄ではあるが、完全な肯定も否定もせず「もしかしたらあるかも?」くらいの扱いに留めているのが上手い。加えてシナリオ面以外にもしっかりと意味がある作りになっているのはうおっと軽く唸らされた。本作はチュンソフトらしくサウンドノベルめいたマルチエンディングを採用しており、バッドエンドを迎えると予告編のムービーが流れ更なる展開を期待させる演出も秀逸だ。

f:id:sinodakei:20210724142722j:plain f:id:sinodakei:20210724142725j:plain f:id:sinodakei:20210724144230j:plain そしてトゥルーエンディングのルートでは二転三転する物語にどんでん返し、息をつかせぬ疾走感に満ちた怒涛の展開が待ち受ける。

ネタバレのため詳しくは伏せるがそれまでなんら疑わなかった常識がぐるりと3回転するかのような展開が続く!脳味噌テンエイティになりそうなエアトリックで揺さぶり続けプレイヤーを驚きと感嘆に染め上げてくるのは見事と言うほかないだろう。極め付きはゲームを締め括る最後の謎解きでDS版とまるで異なるものに変更されているのもとんだサプライズだった。記憶違いでなければDS版は単なる数独だったが、それよりもっと深く物語に根ざした謎に変更されているのでオリジナル版プレイ済みの人でもきっと最後まで楽しめることだろう。

しかしクリアしても事件の全容は宙ぶらりんで核心の多くが明かされず明らかなクリフハンガーで締められるのは残念。DS版プレイ済なのでこのED自体は覚えていたし、こういうのは結末より過程を楽しむものだとわかっていても肩透かしを覚える結末だ。まぁ欠点と理解されているからこそ続編とセットで発売されたのは大きな改善点とも言える。それじゃあさっそく善人シボウデス遊ぶこととしましょうか。

ほかに気になった点

オプションで文章一括表示は不可能でUI非表示も不可、ボボボ音も消すことが出来ないなどオプションが甘い。

まとめ

f:id:sinodakei:20210724142719j:plain 正直軽く再プレイするくらいの気持ちでいたら予想以上に引き込まれた。ノナリーゲームという設定の巧みさの上で巻き起こるサスペンスの数々は元がDSなのでボリューム的には小粒とはいえ、却って引き締まった作りで中弛みせず最後まで突っ走れた。

昔DS版をクリアした時よりも楽しめた気がするというか「こんなに出来が良かったっけ?」と首を傾げたくなるほど面白かった。いまや世にあふれんばかりの脱出ゲームにデスゲーム、そのどちらの要素もお手軽かつ濃縮された面白さとして体験できる本作はおすすめだ。

f:id:sinodakei:20210724090831j:plain 以上、読んで頂きありがとうございました。