さぐりがき

据置ゲーの情熱を取り戻したい男のブログ

彼女の正義の鉄槌はいかにして振り下ろされたのか。 『The Last of Us Part II』 レビュー第2弾 ネタバレ感想

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※ネタバレ全開!!画像大量!!!
さあてここからが本番だ。ようやくネタバレ書けるぜぇ〜〜〜。
sagurigaki.hatenablog.com
ネタバレ無し版のレビューはこちら。
それにしてもネタバレ封印して書くのキツかったなぁ。本編の半分以上の要素をほぼ隠す必要があったのでぼかしながらもジョエルの死の衝撃メインで書いたけど全然伝わった気がしない。本作のテーマみたいのを丸々書くのも読む人に先入観植え付けそうで嫌だし。でもちょっとジョエルが生きてるっぽいミスリードなんか入れちゃったりして。わはは。

じゃあさっそく本題いきますか。

賛否両論って言うけどさ

僕のラスアス2に対する絶賛は生涯変わらないと確信を持って言えますが、まあ賛否両論てのは確かに言われりゃそうかもな〜って感じではあります。そこであくまで想像ですが色々予想して書いてみました。受け入れられない理由には大きく3つのポイントがあると思ってます。

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1つめはゲーム開始早々ジョエルが死ぬということ。その描写は生々しく衝撃的なオープニングだ。前作であれほど密にエリーと二人の関係性を描いたにも関わらず序盤で滅多打ちにされ死ぬ。導入からして受け付けず物語の土台にすら乗ることすら出来ないというのは凄く生理的なもので自分じゃどうしようもないからどうしようもない(?)。

この意見の厄介な点はジョエルともっと旅がしたかった強烈な願いが先立つあまり、極稀にではあるがジョエルのことが嫌いだから殺したんだろうと邪推し怒りの矛先を開発者に向ける少々的外れな批判のタイプがいること。いや嘘みたいな話だけどホントにいるんだって。フィクションで描かれるものは全て作者が肯定的に描いていると思ってしまう人種がさ。その怒りを開発者に向けるのではなくエリーの復讐心に重ねることがシナリオを受け入れるための第一歩なのだが、人の感情が乗った話ゆえあながち間違いとも言い切れないのがムツカシイ。
ジョエルが死んで悲しいという気持ちなら僕も同意するが、死=扱いが悪いと捉えるのはあまりに短絡的。ラスアス2の物語上においてジョエルの死の意味は極めて重く登場人物の誰よりも丁寧に描かれているのは明らかだろう。

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2つめは中盤以降操作キャラがアビーに替わる点。これまでエリーが復讐の到達点としてきたアビーに視点がそっくり入れ替わり長く操作しなければならないのは心情的にも切り替えを必要とし労力がいる。ゲームとしてもエリー編以上の盛り上がりを作るべく手の込んだシチュエーションが多く単純に長い。エリーとアビー、まるでコインの裏表のように同じような境遇を持つ2人が相争う重みを感じるため両方を分かりやすく描いてはいるが、その意図を理解して尚受け付けないのはしょうがないよなぁ。エリーの復讐に心を重ねれば重ねる程アビーから遠のくし。

殆どいないとは思いますが、そもそも発売前の告知と違うことに憤る人も中にはいるんでしょうか。いやそれミスリードでサプライズ演出としてやってるんだけどねっていう。本稿執筆中にMGS2でスネークが主人公だと思ったら雷電だったみたいだよねって書こうとしたらマジで開発者がネタバレインタビューで影響受けてるよって答えたらしく。まぁ知ってればアレを連想しますよね。ラスアス1からしてエリーの操作パートが伏せられて裏でほくそ笑んでる感ありましたし。まぁ今MGS2を主人公がスネークじゃなくて雷電だからヤダって言ってる人なんていないし、告知と違うことに憤る人は時間とともに考えを改めるでしょ。

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3つめはポリコレ的な描写が鼻につくという点。
多様な人種が登場し同性愛シーンが描かれたがそんなに気になりました?エリーが同性愛者なのは前作で分かってましたし人種が多いからなんだっつー話で。これ、おそらく同性愛シーンを見た人が条件反射で叩いてたり嫌いなキャラを叩くためにポリコレ配慮だと理論武装してるだけなのでは、と思います。嫌いなものを共感してもらうためにむりやり理論武装してよく分からん方向へ話が逸れることってありますし。
確かに僕も結婚システムがあるゲームに対し同性婚を取り入れろと発売前に騒ぐような輩は嫌いです。ですが同性愛=ポリコレ配慮=鼻に付くからやめろ、と反射的に思考するのはミイラ取りがミイラになってる気がします。僕はこの弱肉強食のラスアス2世界の圧倒的暴力の前には個人の属性などすりこぎでゴリゴリ擦り潰されるほど何の意味もなさないと受け取ったので特に気になりませんでした。むしろそれを強調するためにあえてポリコレ配慮ぽく見せてるのかと思ったほどです。



僕自身の気持ちは純粋に素直に確たる気持ちを持って面白かったと胸を張って言えます。このようなAAAタイトルで賛否両論というと直近ではデスストが思い浮かびますね。僕はどちらも面白かった側の人間ですが、やっぱりこうデスストとラスアスふたつのAAAタイトルに共通するのは信念、届けたいと願った部分を最大限先鋭化しユーザーに突き刺してくるからハマった時のパワーがエグいと言う点。こうすることでしか出せない凄みってのはおそらくありますからね。エリーだけならおそらく成立しなかった、アビーの視点を等価で描くことでしかなし得ない。ここがインタラクティブメディアたるゲームの面白いところ。


しかしこう最近は必ずと言っていいほど大作発売前になるネタバレに気をつけなきゃならないし余計な緊張しますよね。もっと素直にゲーム期待して楽しんだり落胆したりしよーぜ。

場面ごとの感想

えー、では時系列順に印象的だった部分を振り返っていきますか。先に断っておくとフルネタバレです。自分の心情を分かりやすく場面ごとに書いたらめちゃ長くなりました。ゴメン。

彼女の復讐の始まり、または終わり

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OPの時系列は前作終わってすぐ。話を聞くとき腕組む生意気エリー。ギターを受け取り本編時系列まで日々練習してました。

しかしこの最初の時点で違和感というか疑問がありました。
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なんでエリーが主人公と聞いていたのにこんなよく分からんゴツい女でチュートリアル操作せにゃならんの?おそらくこいつがエリーの復讐の動機になるのは分かるがそれを自分で操作するのは流石におかしくないか?と。

今にして思えばここでこりゃなんかあるぞと感じたおかげで中盤に対する免疫、無意識下で心構えがうっすら出来ていたのかも知れません。全てを知った二周目におっそういえばこんなだったなと深い楽しみ方も出来ますし上手い構成です。

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ジョエルとトミーに大量の感染者から命を助けてもらったにも関わらずこのあと殺すことになるんですよねー。しめしめとでも思ってたのかな。

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そんなとき当のエリーはハッパ吸ったりくんずほぐれつしてました。ジョエルの死後にあんなことしていなければ助けられたかもって後悔したんでしょうか。仮にヤッてなかろうが助けられたとは思わないのでエリーにはそういう自罰的な後悔してほしくないよねぇ。

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足を銃で撃たれゴルフクラブで滅多撃ちにされれば流石のジョエルも形なし。元々見るからに白髪増えましたしもう立ち向かう体力なんて無いでしょう。しかしジョエルを嬲り殺しにするのはアビーの残忍性が強く出ており明らかにやり過ぎ。俺は前作でアビーの父をヘッショ一発で綺麗に仕留めたのに。今にして思えば無意識下で相手は無抵抗の医者なのだからせめて苦しまずに逝かせてあげたいと気持ちの表れだったと自分で気付きました。

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急いで駆けつけてみればそれは最悪のタイミング。エリーの頭蓋にぐわんぐわん響く音がエグい。ジョエルは前作主人公だからもっと目立つキラキラした死に方してほしいとは微塵も思いませんでしたね。この時点で既に神ゲー認定してた。

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僕はエリーが復讐する動機を村が焼き討ちされ多くの人が死ぬがジョエルとエリーは生き残ると予想していたため、正直この墓のシーンを見るまで「え、マジで死んだの…⁉︎」と疑わずにはいられませんでした。まぁもしかしたらジョエル死ぬかもなーと心のどこかでは思ってましたが「前作であれだけ密に描いたのだからまさか殺さないだろう。というか頼む死なないでくれ」と否定したい気持ちが強くそれ自体を予想したくなかったのは事実かも。
前作主人公死亡という字面だけ見れば思わずセンチメンタルグラフティかよとツッコみたくなる展開なものの流石にそんな気力はおきなかった。

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部屋に無造作に置かれた遺品の数々がジョエルが亡くなった悲しみをより一層引き立てます。ギターが何本も壁に掛かってるのもポイント。

彼女に何があったのか エリー編

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シアトルに到着しa-haの名曲『take on me』を弾き語るエリー。原曲はアップテンポですがここまでしっとり歌い上げることに驚き。ジョエルが死んだ今となってはこのギターを弾く時だけが唯一の架け橋で昔に立ち返れる。スマホyoutubeも無いのに生まれる前の曲知ってるってことはジョエルから聞いたかレコード貰ったりしたのかな?

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こちらを舐め腐ったアホ男を殺し
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標的アビーの手がかりを見つけ
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シャンブラーを倒したりとまだ序盤にも関わらず色々紆余曲折があったのですが…
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ハァ〜〜〜〜〜〜〜〜????!??!?!!!?!

に、に、に、に、妊娠〜〜〜〜っっっ??!?
何言ってんだコイツわ。
お前よオォ〜〜流石にそりゃ無えだろォ〜〜。

………。

…いや、、、OKOK。この時代ならしゃーない。避妊具も妊娠検査薬も無いだろうし。グラフィックが実写そのものなせいか時折時代設定忘れてのめり込んじゃいますね。

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回想①。恐竜&宇宙博物館で小旅行気分。前作よりさらに仲は深まりもはや親子さながらと呼べるほど距離は縮まった。でも時々ジョエルの実の娘サラの名前が出るとちょっとドキッとするのは俺だけ?

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ディーナと和解しジェシーも合流。車を使った派手な逃走劇を繰り広げました。
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回想②。ジョエルがエリーに「お前の好きなマンガ見つけたぞ」なんて娘の好みをいつまでも昔のままだと思い込んでる親父そのものじゃん!めっちゃ微笑ましい。
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「変えられるものなら変えたい。」前作のジョエルの行動は本人にとっても苦渋の決断だったことが伺えます。

そして舞台は病院へ。PSVITAみっけ。初見では考えが及びませんでしたが電気を遊興に使える余裕の証です。
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ノラを拷問しアビーの居場所を吐き出させるエリー。ここはQTE的な操作でカメラにエリーを映し想像に任せるより実際に操作させてもよかったかもなぁなんて思います。
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他人を生かさず殺さず理性を保ったまま思いっきり鉄パイプでブン殴るってガチで想像したくない。敵と認識した人間を殺すつもりで殴るならもしかしたらイケそうだけど。さすがのエリーも憔悴しきってました。
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回想③。ついに真実を話すジョエルと泣き崩れるエリー。続編として描くなら確かに嘘がバレる瞬間てやってくるよねぇ。

そして舞台は水族館へ。
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オーウェンとメイを殺したエリー。今まで死体の山が積み上がるほど数えきれないくらい殺してきたとはいえ、そのお腹に命が宿り何の罪もない小さな命を奪ってしまったことに愕然とします。まさかここに置き去りにした地図がアビーの手がかりになるとはね。

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手がかりは途切れ復讐の旅路もここまで。トミーとジェシーに諭され渋々ジャクソンへ戻ることに。トミーとジェシーが帰り支度を話すなか諦めきれず上の空のエリーの表情がまたいい。

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「見逃してやったのに。」
この台詞は何度聞いても末恐ろしいというか、アビーにも理由があったと理解しているクリア後の今でさえ「お前が先にやったんだろ」と声を大にして反論したい。
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でもアビーにとっても極めて重い決断だったのは事実。アビーの父が殺されたことに対し義憤を覚えた仲間がエリーを殺そうとするとか行き過ぎた正義感てのはエグいエグい。ここでオーウェンが止めてくれなきゃどうなっていたことか。
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このシーンに入る前にうっすら予想はついてました。「前作でジョエルに恨みを持つものといえばまさか単なるモブの関係者なわけないし、となれば一人しかいない」…単純な消去法ですよね。最初シマウマを助けるシーンを見たときは「もしかして獣医さんか?これは間違えたかな〜〜」と思いましたが杞憂でアビーの父ちゃんはやっぱり医者だった。
アビーの「パパは間違ってない」って台詞は気休め以外の何者でもないので特に怒りは覚えませんでしたね。結局親父さんが「科学ノ発展ニ犠牲ハ付キ物デース」とかダイジョーブ博士みたいなこと言い出すのがよくなかったんだけど、回想②のジョエルと同じく「変えられるものならば変えたい」気持ちは一緒、立場の違いによりほんの少し優先度が違っただけだししょうがないか。いや、、、でもな〜やっぱり先にエリーに殺意向けたのアビーの父ちゃんだしな〜〜。う〜ん。OPの時点でハッキリ「我らの未来のための犠牲だ」って言ってますしねぇ。

マーリーンがやたら善人ぽく描かれてるのは後付け感あって若干の違和感ありましたけど、それすらも立場によって見え方が様変わりするという本作の描き方のひとつなのでしょう。

彼女に何があったのか アビー編

ジョエルの死の真相が分かってもまだまだ物語は続きます。…続くのですが、これがまた長いこと長いこと。

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長い…。
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長い……。
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まだまだ長い…。
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まだまだ…。
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………………。
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まだ続くん!?
もうこの辺で一旦休憩。ちょっちタイムタイム。いや実はアビーがジョエルを殺した動機が父親の復讐だと判明する少し前からこの高層ビルを落下してプールに落ちる時点までノンストップでプレイしていたのですが一向に終わらん!なのでさすがに疲れて一旦休憩!その日はもう寝ました。
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このスタジアムを見たのがひとつの種明かしで「自分達を理不尽に襲撃した正体不明の集団の正体はなんと自分達より遥かに文明は進んでいるもののなんら変わらぬ境遇の者達だった」という。こう書くとなんだが古典SFでも使われてそうな「宇宙人が侵略してきたと思ったら自分達とそう変わらなかった」的な感じでしたがその魅せ方が何より上手かった。

正直この種明かしを見た段階では「あーそういうことだったのね。なるほどなー。うんうん分かった分かった。いいお話だった。」とここからすぐEDに突入するとばかり思っていて、まさかこの時点ではアビー視点で3日間をやり直すことになるとは露ほども考えなかった。結局高速ビルからプールに落下したあたりで「え、これマジで3日間プレイするんかえ?」と目が覚めたものの、しかし多分スタジアムで終わっていたら良くも悪くも普通の良作止まり!ちゃんと等価でエリーと同等に密に描くからこそ価値が産まれるのはいうまでもない。

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ここでアビー編に移るまで敵の事情に全然頭が回らなかったというか、あれほど統制の取れた行動や軍用犬を引き連れている理由が分かり少し虚無感を覚えました。この自分がかつて殺した奴らは何の変哲もない普通の人間だと分かる演出良かったですね〜。この死体袋とかほぼエリーの所業。

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にしてもこうアビー編で3日間をやり直すってのはプレイヤーからしてみたら時間軸的には巻き戻ったわけじゃないですか。言わば回想を見ているような感覚に近い。それに加えてオーウェンとの関係性や復讐の動機がアビーの回想として描かれたのは少々煩わしいかなと思います。描写自体は明瞭で分かりやすくかったものの回想で回想するパターンってのはいくらご飯が美味しくてもちょっと箸が止まる的なところありますし。ここ誤解しないで欲しいから二回言うけどあくまで分かりやすいけど煩わしいってことね。
このシーンのアビーなんて胸板厚くて厚切りジェイソンならぬ厚切りアビー、一瞬男かと思っちゃったよ。

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エリーが来る前にアビーは病院を訪れていました。先程同様自分がかつて殺した奴らは何の変哲もない普通の人間だと分かる演出。言われてみればそりゃそうだけど。ジョエルをクズと罵ったノラもアビーには協力的。

で、
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ほんぎゃあぁああ〜〜!!!
本編イチのホラーシーン。マジでさぁ〜お前やめろよな〜こういうの。俺怖いの嫌いなんよ。救急キットを探し出すという前作DLCのエリーと全く同じことをしてるのも対比的。

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もうこのヤーラ姉ちゃんを救ったあたりでアビー編をプレイし始めてから2日ほど経っていたためだいぶ感情移入できてましたね。ほらゲームって同じプレイ時間でも一気にクリアするのと休憩してほどほどにクリアするのじゃ感じ方がまるで違うじゃないですか。そんな感じで適度に休憩を挟んだからこそアビーの心情を丁寧に咀嚼できました。

ヤーラとレブ、2人は単純に性格的にも落ち着いてるし仲睦まじくて好き。最初にレブを見た時は「なんじゃこのマルコメ君、エアベンダーの主人公かよ」って切れ味鋭いツッコミ入れたんですけどまさかのボクっ娘だとは思わんかった。

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しかしメルは変な誤解してるし(個人的にこういう誤解が1番面倒臭いと思う、そういう邪推を一番考えてるのはオメェー自身だろ)、オーウェンサンタバーバラに行く決意を固めてるしWLF側と言えど一枚岩ではない、むしろ人が多い分意見の相違があるのが当然です。

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前作でも同じようなシチュエーションありましたがスナイパーから隠れながら追い詰めるシーン。こういうの結構好き。
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そして島に上陸しレブを見つけ出しますが、ここでヤーラがレブに諭す「信じてるから死なないわけじゃない」とか宗教観がすげーリアル。教祖が姿を見せなかったのは想定内でしたが、多分頭がイっちゃってるかそもそも死んでそう。
ヤーラは殺されアイザックの命令に反し逃げ出します。アイザックも3秒数える前に少し躊躇ってますし根っからの悪人って訳じゃないですよね。あるのは立場による違い、それだけ。

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血を血で洗うWLFvsセラファイトの全面戦争。もはや何のために戦っているのかすら分からない。戦うために戦う、殺されないために迎え撃つ。これ以上無いほどに人間の愚かさが強調されてました。
アイザックにしろ大男にしろ包容力ある上司的な描かれ方がされた黒人がいないのも結構意外でした。

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そして島を辛くも脱出してみればなんだか様子がおかしい。エリー編の通りふたりは殺されていました。このエリーの隠れ家に到着してアビーを操作している時「俺、もし戦闘になったらエリー撃てるのか?殺さず手加減しようかな。って割と真面目に考えちゃいましたね。2人の時系列が重なり全てが明るみになった時点でも8:2くらいでエリー寄りでしたから。

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そしてアビーを操作して立ち向かうことになるのだがエリーがまた強い!不用意に体を晒せば即射殺。まあ戦闘の難易度自体はレンガ投げて急所攻撃すればいいだけなので簡単なんですけど。

レブ・ディーナ・アビー・エリーとここにいる戦える登場人物全員女性で命がけのキャットファイトだな〜と思いながら観てました。⬜︎ボタン連打するうちにどっちがどっちの操作してるのか分からなくなる演出もミソ。

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「二度と姿を見せないで。」
ディーナが妊娠していることを伝えるとアビーはその言葉だけを残して去っていきます。
『エリーは妊婦のメルを(知らなかったとはいえ)殺してるのに、自分はそれを理由にディーナを助けようなんて虫が良すぎるよなー』とは思ったんですけど、今度は正真正銘ガチで見逃されました。エリーもアビーもあくまで理由があって人殺してるだけで快楽殺人者じゃないですし。

彼女はまた荒野を目指す

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そしておそらく物語は一年近く後に時間が飛びます。ディーナはジェシーとの子供を産みエリーと仲睦まじく暮らしていました。髪下ろしたディーナ素敵。そろそろEDかな〜なんて思いつつ。

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しかし不意に思い出すのは在りし日の記憶。ジョエルが死んだ時の凄惨な姿をフラッシュバックするのは完全にPTSD

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てっきり死んだと思っていたら片目を失うだけで生きていたトミー。ここでこれまで以上にやたら強めにエリーに当たっているのが印象的ですが、おそらく自分が片目を失い戦えないことを口実に無意識にエリーに八つ当たりしてる節があるように見えます。実兄を殺され実際に自分自身もアビーに殺されかけた訳ですし日に日に募る苛立ちを抑えきれないのでしょう。

にしても元ファイアフライだったことが決め手となりトミーから情報が割れてアビーがジョエルに手を下す結果になったというのがなんともやりきれない。トミーからしてみたらただ運が悪かっただけとはいえ半分自分がジョエルの死の原因を作っちゃったようなもんですからね。

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かつてのパーティーシーンがここでようやく登場。ジョエルからしてみりゃ当然のことをしたまでだけど、エリーがウザがる気持ちもよく分かる。それにしてもここでエリーに「父親ヅラしないで」とか言わせないでくれてホントに助かった。そういうキツい言葉遣いしたまま当人が亡くなると言った側は一生背負う羽目になりますからね。エリーの心にこれ以上そういう消せぬ悔恨の種を撒かないでくれてホントによかった。

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エリーは再びアビーを追うことを決意する。一度は諦めたけれどやっぱり諦めきれない。このシーンの何がいいかってディーナに復讐の理由を問われて分かりやすい怒りとか悲しみとかじゃなくて「眠れないし」って言うところ。やっぱりジョエルの死はエリーの日常に深く深く突き刺さってるんですよ。

ジョジョ6部でエルメェスも言ってましたしね。復讐とは自分の運命への決着をつけるためにあるッ!って。

彼女が彼女に関わらないと決めたとき

で、
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まだ続くん!?
まさかまたアビーに操作が戻るとは思わなかった。もう終わってもいいだろうに最後まで操作感たっぷり。やっぱトッポってすげぇよな。

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サンタバーバラにてアビーはレブと共にファイアフライの拠点を探していましたが捕らえられ、数ヶ月遅れてエリーも到着。その体格とグラサンがテレンス・リーに似た男を屠ったあとはラトラーズの拠点をぶっ潰します。ラトラーズは感染者に首輪して楽しむイカれた野郎ども。パンデミックにより国家が解体され、集団そのものが小さな国として機能していると感じるほど多様な描かれ方が最後の最後までされてました。

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あれほど筋骨隆々だったアビーは見るからに痩せ衰え見る影もない。ここでエリーが無言でアビーの縄を切って後をついて行くのがまたいいんですよね。この時助けようとかいう気持ちは一切なくとも言われたままに付き従う、戸惑いの渦中にある感じが。
ジョエルの無残な最後を思い出しエリーは最後の決闘を挑む。「アンタが巻き込んだんでしょ。」
正にその通り。アビーに「私はもう戦わない」と言われようが大切な人を殺しておいてその言い草は虫がよすぎる。やり逃げなんて許さない。

正直俺だったら磔にしたまま眉間に一発ブチ込む「立てよド三流!」っていかにも拳で決着付けるように装って隠したナイフでグサーってやっちゃいますけどね。まぁ真正面から捻じ伏せないと復讐の達成感って得られなそうだしタイマン張る理由も分かります。レブを殺せばアビーに生涯地獄を味わわせることもできますが、さすがにそれはエリーの本意ではないでしょう。レブ自身には何の罪もないですし。

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ここ⬜︎ボタン連打しまくり!エリーの勝ちはもうすぐ、溺死させようとしますが
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瞬間、エリーの脳裏にジョエルの顔が思い浮かぶ。首を絞める手を緩め泣き崩れるエリー。ボートに乗るアビーをよそにただ呆然と海を見つめるのだった。僕がもしこの場にいたらアビー撃ち殺してるかもしれませんがエリーの気持ちはよく分かる。自己投影と感情移入って別物ですし。あの顔が思い浮かんじゃったらもう無理だよ、うん。

アビーを殺さなかった時点で後悔がつきまとうのは分かっていたし、おそらく次の日には自分の選択を後悔したかもしれません。それでも見逃したし、後悔するし、この時許したというのがこの選択の持つ難しさ。

ED

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自宅に帰ったがもはやもぬけの殻。失った指のせいでギターを満足に弾くことも叶わない。

そして最後の回想へ。
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コーヒーを飲むジョエル。前作キリン前あたりでコーヒー飲みてーって言ってた夢がようやく叶いました。
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今も変わらずサバイバーズギルドに苛まれるエリー。
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「もしも神様がもう一度チャンスをくれたとしても…俺はきっと同じことをする。」
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「わかってる。」
「一生そのことは許せないと思う。でも…許したいとは思ってる。」

前作エピローグでジョエルの嘘に気付きながらも分かったと答え言葉を呑み込んだ昔とは違い、同意した後も自分の言葉を紡げたのがあのときと対象的。
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ギターのアップとどこかに去るエリー。完全に過去を断ち切ったとまではいかないにしろこれからジョエルを失った悲しみを少しずつ埋めていけるのでしょうか。復讐と愛、喪失と再生の物語。完。

感想まとめ

ここから感想まとめです。せめてここだけでも読んで頂ければ。

前作の汲み取り方

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えー前作ラスアス1は言わばジョエルというフィルターを通してエリーに父性を感じるゲームと言っても差し支えないと思います。僕も確かにそう感じたもののラスアス1のレビューで限りなく親子に近く、遠い。と書いたように「ジョエルは時として父親同然に振る舞うが、おそらくこの子の父親にはなりきれないしエリーもそれを望んでない。」という気持ちが強かったんですよ。前作時点では。
しかし今作を終えたことで仮にジョエルが生きていればもしかしたら親子になれたかもという思いが強くなりました。 もはや叶わないゆえ多分に願望が入っているのは事実ですが。 2人揃って咎を背負いながらも前作から5年が経過してより関係は深くなり、ラストの回想を見る限りエリーがジョエルを許す親子になるための最後の一線は多分時間をかければ乗り越えられただろうと。仮に許せなかったとしてもむしろ許せないまま生き続けるのもいいじゃないかとすら思いますけどね。

前作ってジョエルがエリーを送り届ける善の物語だったんですよね…あの最後の瞬間までは。医者撃ち殺したせいで一転して悪の物語になっちゃった。結末だけ見れば遠路はるばる医者殺しに行っただけというとんでもない物語。それがジョエル自身は一貫して自らを信じ正義を為しプレイヤーの心情にも一致しているため違和感を持つことなく受け入れられたのは周知の通り。前作ではゲーム的な都合に後押しされるようにジョエルで無双していたのでその心情の深くにまで考えが及びませんでしたが、今作での回想描写を見るにおそらくジョエルは今回のエリー以上に悪夢にうなされ咎を背負い続けてきたのは想像に難くありません。そういう意味では前作では何もジョエルのこと理解してなかったのかもなとすら感じます。
治療を拒んだ時点で世界の全てを敵に回したも同然、罪など償いようがない。前作を罪とするなら今作は罰。あの時以降の地球上の死体はすべてジョエルが積み上げたといっても過言ではなく、圧倒的な暴力描写もそのためだったのかもしれない。物語上の嫌悪感全てがジョエルの罪の上に成り立っていた、と。

アビーについて

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ジョエルを殺した憎き憎きアビーについて。エリーは復讐の過程、アビーは復讐の末路という差こそあれ基本的にはコインの裏表のように対比的に描かれてました。話の進み方はエリー→アビーという流れでしたが、その実エリーはアビーの運命をなぞるが如く行動していた訳です。
ゲーム中盤以降ジョエルを殺したアビーをプレイするという野心的な構造でしたが驚きはすれど嫌悪感はありませんでした。おそらくその罪の重さを見定めるようにどこか遠くから眺めていたような気もするし、その体の内を探るように近くから見つめていた気もする。
結局のところどうかな………いまだに許せません。全ての事情がわかった今もやっぱり許せない。でもエリー側から考えてみたら確かに許せないけど、アビー側から見ると困った人を放っておけないお節介焼きで頼りになる部分もあるし。

けど最後の最後にふとジョエルの顔が浮かんだ瞬間エリーは許した。おそらくあの一瞬はアビーを許した以上にジョエルを許した。 だからこそ思い止まった。実際にあの最後の場面はエリーが序盤のアビーのような復讐者となり、アビーとレブはジョエルとエリーのようなポジションというそっくり同じ対比構図でしたからね。

なんか今あの場面でジョエルを許したんだって気付いたらすげー胸が熱くなった。演出上はアビーを逃したあとに最後の回想が入るからプレイしている時は単純にふと顔が思い浮かんだくらいにしか認識してなかったけど(それでも感動的だった)、言葉にすると今すげー腑に落ちた。マジで今レビューの最後の最後手直ししてる時に気が付いた。やべ、泣きそう。ゲーム中は全然泣かなかったのに。
勘違いしないでほしいのはジョエルが殺されたことでエリーが許せるようになったとは微塵も思っていないってこと。それだけは明確に否定しておきます。


中盤アビーが「二度と姿を見せないで」とエリーに言い放ったのはあくまで復讐を終えた側だからとしても、ラストにエリーが復讐を果たしていないにも関わらずアビーを見逃したのは「他者と理解できず共存は出来なくても併存はできる」その表れですよね。変に和解したり命を断ち切るよりよほど説得力ある終わり方で素晴らしかった。確かに許すことはできないが、あのジョエルの顔を思い返せば奪うのではなく、殺すのでもない、関わらないという第3の選択肢。それくらいは与えてあげてもいいだろう、とは思う。

まあ正直もしpart3があるならゲーム的なギミックとしてなんだかんだアビーと共闘しそうではありますが。その頃にはまた説得力ある物語を見せてくれそうで楽しみですけど。

エリーのジョエルに対する心情

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正直、僕はエリーがジョエルを完全に許せたとも思ってません。 アビーを殺せず数ヶ月かけて家に戻ったあとも、最後にギターを弾きながらジョエルを思い返すエリーの表情は本当に複雑そのもの。完全な想像ですが、許せたあの一瞬を自分でも信じられず「私は本当にジョエルを許せたのか?」と自問自答する日々がこれからも続くのではないかと予想します。許そうが許すまいがジョエルはもういないという事実を認識してさえ思い悩むのが人間だろう、と。

さきほど復讐と愛、喪失と再生の物語と書きましたが、ラスアス2のお話はエリーがこれから再生するかもしれないという希望的観測を持たせる段階で終了しており、おそらく再生そのものはこれから。ギターを置いて出たのは再生の予兆の暗示。ディーナを追いジャクソンに帰ったかどうかはエリーのみぞ知るところですが、ジョエルを失った喪失感をこれからの人生で他の物で少しずつ埋めていく表れのような気がしました。
ギターを置いていったことで完全に迷いを断ち切ったと解釈するのは物語的な決着としても収まりが良くそう考えたいのはやまやまですが、しかし人生は続く。エリーが完全にジョエルを、そして自らを許せる日が来るのはもう少し先のような気がします。

ジョエルとして彼女を守り、エリーとして復讐に身を重ね、アビーとして立ち向かったプレイヤーのひとりとしては、怒りも悲しみも憎しみもエリーのこのさき長い人生で時間と共に風化するからこそ、柔らかな光となるなんらかの存在が現れてほしい。その時こそ救われる瞬間なのだと願ってやまないのです。

最後に

クリア後の心情としてはエリーとアビーどちらにも感情移入しましたが比率で言えば7:3でエリー寄りです。しかし本作の魅力はどちらに感情移入したかではなく徹底的に贅肉を削ぎ落とし鎮座する描写力そのものにある。
人間の善悪の二面性を描ききったのはもちろんですが、ひとつの復讐劇の顛末をW主人公で描いたおかげで同じ登場人物達であっても多様なペルソナに触れることができ、これ以上無いほど立場そのものが人を形作るのだと実感できました。復讐は愚かだからしてはいけないなどと単純な道徳的感想を持つことが冒涜とすら思えるほど重い重い物語だった。
そして今しがた気が付いた最後にジョエルを許したエリー。たとえそれがジョエルの遺した罪の世界で儚く消えゆくものだとしてもあの時だけは確かに許せた。もはや何も言うことはありません。


この物語構成を思いついた時点で新規IPでやった方がずっと安心安全だと分かっていたはず。しかしラスアス1の続編として描いたからこそ評価が大きく二分する程の質量が生まれ深く刺さったのは間違いない。死にゆく世界の圧倒的無慈悲な暴力の中で「人間の感情は複雑で、選択は矛盾まみれ」という人間の持つ割り切れなさをトコトン深く掘り下げた。そのおかげで何度もしょうがないと思わされた。ラスアス2はやはり傑作でした。
改めてノーティドッグにお礼を言いたい。素晴らしい物語をどうもありがとう。
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以上、読んで頂きありがとうございました。