さぐりがき

据置ゲーの情熱を取り戻したい男のブログ

恐怖と暴力、そして慈愛。波乱に満ちた二人の旅路を見届けろ。 『The Last of Us Remastered』 レビュー


ジャンルはサバイバルアクション。開発はノーティドッグPS3版は未プレイでずっとやりたいな〜と思っており、昔意気揚々と購入したものの実は今までずっと積んでました。

だってほら…ゾンビって怖いじゃん?

我ながらビビリでヘタレな理由で放置してましたが、ラスアス2の発売が控えているため今回ようやくクリア。いやー面白かった。

難易度は中級。クリア時間はDLC含め18時間くらい。ネタバレ無し。それではどうぞ。



目次

あらすじ


舞台はアメリカ。世界的パンデミックが起きてから20年が経った。街は軍によって隔離され日々の食料配給すら滞る始末。外では菌に侵され理性を失った感染者が徘徊し、時には人間同士で略奪し殺しあう。およそ文明と呼べるものが崩壊した世界で、人々は過酷な生存競争を繰り広げていた。



ブラックマーケットで物資の取引を生業とする主人公ジョエルは、とある依頼によりエリーという少女の配達を引き受ける。年端のいかぬ子供を守り通す困難な仕事に最初は乗り気でないジョエルだったが、実はこの出会いこそ互いの運命が大きく変わる幕開けであった。



今、二人の過酷な旅が始まる。



戦闘



戦闘はステルスアクション&TPS。敵は視覚と聴覚でこちらを索敵してくる。そのため音を立てぬよう中腰で物陰に隠れつつ背後からステルスキルを狙うのが基本で、それは相手が人間でも感染者でも変わらない。
聞き耳を立てることで壁裏の敵の位置まで把握できるため一人一人確実に仕留めていこう。息を殺し、耳を澄まし、静寂に溶け、そろりそろり忍び寄る緊迫感。自らの恐怖心をいかに押し殺すかが鍵だ。



旅の途中で何度も戦う感染者にも菌の進行によって違いがある。発見されると一目散に襲ってくる感染初期のランナーは戦闘力は低いが数が多く囲まれると厄介。
感染中期のクリッカーは目は見えないぶん物音に敏感で、なんと噛まれると一撃死でゲームオーバー。慣れない序盤はこいつに何度も殺されるだろう。その名の由来となったカチカチというクリック音は不気味かつ生理的嫌悪感を催すほどで、その強さと相まって二度と聞きたくないと感じるはず。

言わずもがな大きな音を立てると敵に気付かれるし、乱戦になると同行者のエリーが声で敵の位置を知らせてくれるなど本作は音の重要性が非常に高い。静寂すら恐怖の演出として巧みに機能しており、ジョエルと一心同体になったかのような息を呑む瞬間の連続が味わえる。言わば静の面白さがここにある。






マップ上には様々な物資が落ちており、これらをかき集めいかに利用するかが肝。ビンを投げ敵の注意を引きつけたり、角材を近接攻撃に利用したりと使えるものはなんでも使え。

戦闘中に油断ができないのはもちろんだが、戦闘が終わっても次の戦闘に備え物資集めをする必要がある。家屋の戸棚やロッカー、暗く冷たい地下水路や打ち捨てられた廃墟を隅々まで探索しよう。



かき集めた素材を合成して武器や鍵として使えるナイフや、身を隠す煙幕など有用なアイテムも製作できる。しかし製作メニューを開いてる間も時間は進み続けるため一時も油断はできない。

体力回復に必要な治療キットと、割れた音で注意を引きつけ強力な広範囲攻撃が可能な火炎瓶はどちらも同じ素材を使うためどちらを作るか悩ましい。プレイスタイルに応じてどちらを優先してもいいが、開発者からあからさまな二者択一を迫られるようでちょっとニヤニヤしました。



どれほど不格好でも構わない。目についたもの全てを利用し生き延びることが最優先なのだ。






と、ここまで聞くとステルス・ホラー・一撃死などなどとっつきにくい部分が多いと感じるかもしれないが…



安心しろ。俺たちには銃がある!


落ちている弾薬は少ないため最初こそ躊躇するかもしれないが、感染者が大量に出現するマップではさも使ってくださいと言わんばかりに弾薬が落ちているため割とガンガン使ってもダイジョーブ。猟銃やショットガンなどおなじみの武器でガンガン敵を吹き飛ばせ。先ほどまでとは打って変わって分かりやすい動の面白さが爽快だ。しかし調子に乗りすぎるとショットガンのリロード中にクリッカーに噛まれてゲームオーバーなんてことも頻繁に起こるのであくまで冷静に。

ただひとつ注意点がある。本作では移動しながら銃を構えると照準が大きくブレるのでこれまた当てにくく、焦って撃つと弾薬を無駄に消費しやすい仕様。この不自由さがサバイバルぽさの演出に一役買っており、ホラー映画の登場人物の動きを自分でそのまま再現してると気付いた時には思わず笑ってしまった。


仮に弾薬が尽きてもある程度なら肉弾戦で切り抜けられるのでゴリ押し突破も可能。ジョエルの腰の入った鉄拳は元ボクサーと見紛うほどで感染者のランナーすらボコボコにできる。危なくなったらとりあえず殴っとけ。



戦闘の総評としてマップは幾重ものルート選択が可能で自由度が高く、飽きが来ないようシチュエーションの変化も豊富。割とポンポン死ぬので難易度はやや高めだが、無限沸きや不死身の敵は存在しないため理不尽さは感じない。何度も死ぬと恐怖心よりストレスが上回り没入感が削がれるものだが、チェックポイントも豊富でリトライも容易なのでその辺の配慮も行き届いている。
緊張と緩和、静と動の抑揚の波が交互に押し寄せる没入度の高さが魅力的です。


シナリオ

ジョエルとエリー、移り変わる四季の中でふたりの旅路が刻々と描かれるシナリオが本作の見どころ。




リマスターのためグラフィックこそどうしても現世代機より見劣りするが、ポストアポカリプスものらしく荒廃した文明に自然が生い茂る景色は十分に綺麗で塵や埃が日光に照らされる表現などこだわりも光る出来映え。フォトモードも搭載されており写真撮影も可能。

他のゲームと比較しても環境音がメインで音楽の鳴るシーンは少ないが、それゆえグスターボ・サンタオラヤ氏が作曲した"The Last of Us"や"The Choice"は退廃的な世界観を見事に表現しており心に残る。




長きに渡る旅の中でふたりは様々な人との出会いと別れ、協力と敵対を繰り返すことになる。

『感染者よりも怖いのは人間』

そんなもはやありきたりとも呼べる正道を往くテーマだが、その描写は丁寧かつテンポ良くまとまっている。チャプターを終えるごとにひとつ5分程度のムービーが流れ、極限状態に置かれた人間の葛藤や覚悟が微細な表情の変化を伴って描かれる。やや眼球の動きが硬いものの視線そのものは力強く説得力ある描写には引き込まれた。




街中で軍の目を逃れ生活する者。外で人と関わりを捨て孤独に生きる者。街とは異なる新たなコミュニティを形成し集団で生活する者。それぞれの選択に正解も不正解もない。あるのは明日を生き抜く強い意志だけだ。

しかし運命は時として残酷。絶望に染まった世界で希望を見出したが故に更なる絶望に見舞われる容赦ない現実が襲いかかる。思わず目を覆けてしまうほど生々しい痛みのあるシーンなどドラマの連続です。





ジョエルはいつも厳しい渋みがかったおじさん。その厳しさこそエリーに対する優しさの裏返しなのは言うまでもありません。一般人…というにはやや強すぎる戦闘能力の高さはいつでも頼りになります。山寺宏一氏による演技は「これちょっとカッコつけすぎじゃない?」なんて一周回って笑ってしまうほど低音響くダンディな場面もありましたがしっかりとハマってました。

中腰で移動することが多い彼ですが、その際の腰を支点にしたモーションが中々にシュールなため、プレイ中は勝手に中腰おじさんって呼んでました。中年でこの腰の酷使はヤバくない?マジで腰は大事にしなよ。


エリーはあどけなさを残しつつも利発でたくましい女の子。最初こそジョエルと馬が合わないことも多く、思春期真っ盛りで生意気な態度が目立つ。こうした子供が分かりやすく拗ねたり衝突したりとややテンプレみが強い描き方は通過儀礼とも言うべきマンネリ感が漂うものの、物分かり自体は良く藩めぐみ氏の好演もあってか観ていて不快感を覚える事はなかった。 欲を言えばもっと分かりやすく生意気な演技でもよかったかな。


パンデミック後に生まれた14歳の彼女にとってはこの荒廃した世界こそが日常でありジョエルに荒廃前の世界について質問する場面も多い。プレイヤーとはまるで常識が異なることを踏まえればより彼女の心情が理解しやすくなるだろう。





道中力を合わせ先へ進むことで徐々に強固な信頼関係で結ばれていくが、このふたりはあくまで護衛とその対象者。時として父娘さながらな一面を見せるものの、その線引きは忘れず互いに寄りかかる真似はしない。

親子愛と言い切るのは明確に躊躇われるがどうしてもそう言いたくなる描き方が秀逸で、この絶妙な距離感こそ本作の魅力。限りなく親子に近く、遠い。自らプレイしてみなければ分からないこのふたりの関係、是非見届けて貰いたい。




DLC「Left Behind -残されたもの-」ではエリーが深く掘り下げられ本編とは少し異なる姿を垣間みせる。クリア後推奨のため詳しくは割愛するが、本編と併せてプレイしておくと続編の理解に役立つかもしれない。

気になった点

・戦闘中、時としてエリーが邪魔になる。

・物資作成に使う素材のバランスが若干悪い。

・字幕が大きく見やすいのは評価点だが、極まれに字幕表示が一部遅れる、音声が再生されないなどの不具合に近い挙動が惜しい。


まとめ

グロテスクな表現は最小限。人間ドラマに重点が当てられゲームプレイと物語が分離しない調和した演出は見応えがある。物語のためのゲームではなく、一重にゲームのための物語として描かれているためテンポも良い。

戦闘そのものはよくあるステルスTPSだが、少ない物資をやりくりし数々の困難を突破するサバイバルならではの面白さがありボリュームも十分。GOTYを受賞し名作として名高い本作ですが、自らプレイしてその面白さを十分に味わうことができました。


ラスアス2のPVでは憎しみに染まりきったエリーの表情が象徴的ですが一体なぜそうなったのか気になるところ。発売までもう少し、今から楽しみです。




以上、読んで頂きありがとうございました。