さぐりがき

据置ゲーの情熱を取り戻したい男のブログ

もう一度澄みわたる青空を 『アライアンス・アライブ HD』レビュー

はじめに


サガシリーズの流れを組むコマンドRPG。 2017年に3DSで発売されたオリジナル版のリマスターです。販売フリュー開発キャトルコール。33時間7分でクリアしました。

この2社の名前を聞くと2015年に3DSで発売されたレジェンドオブレガシーを思い出します。いちから地図を作りあげたり敵味方で精霊を利用する双次元バトルなどRPGとしてのこだわりと革新が随所に見られる意欲作である一方で、シンプルすぎるシナリオや3人パーティによる手札の少なさが物足りませんでした。特に雑魚戦でも一切の油断ができない苛烈な難易度がストレスでクイックセーブ&ロードを駆使してひたすら雑魚から逃げ回ってた記憶しかありません。サガシリーズゆかりの小林智美氏や小泉今日治氏など豪華スタッフを起用し多くの注目を浴びながら結果として万人向けとは言い難い形に終わってしまった印象です。

本作では引き続きキャラデザに平尾リョウ氏、ゲームデザイン小泉今日治氏、ディレクターに松浦正尭氏らが関わってはいますがレジェンドオブレガシーの精神的続編といった印象は受けませんでした。シナリオに村山吉隆氏、音楽に浜渦正志氏などまたもビッグネームを迎えた完全新作です。

果たしてレジェレガのリベンジを果たすことは出来たのか。さっそくレビューしていきます。


目次

世界は広いよどこまでも

あらすじと概要
黒き流れによって世界は分断され気候は荒れ狂い、いつしか青空は失われてしまった。魔界から来た魔族と妖魔に長く支配されながらも、人間たちはたくましく反撃の機を窺っていた。


雨の世界に生きる幼なじみのガリアーシュラは、青空の絵を一目見ようと閉鎖された美術館にひっそりと忍び込む。それが大きな冒険の幕開けになるとも知らずに。


9人の群像劇と銘打たれていますが複数主人公制ではありません。メインシナリオを進めることで各登場人物に視点が移り変わりつつ、最終的に全員が集う形です。


ワールドマップ

近年オープンフィールドの採用により一地方を舞台とするゲームが増えるなか、本作では往年のRPGらしいワールドマップが存在しています。 マップとキャラがちょうどいい縮尺で表現された世界を気ままに見渡しながら冒険しましょう。もちろん物語が進めば海や空をロマンあふれる乗り物で自在に駆け回ることが可能です。

シンボルエンカウント方式による敵の出現頻度はほどよく、逃げるのは簡単かつ戦いたい時にすぐ仕掛けられる絶妙なバランス。地域によって敵の強さは固定で成長しないため思う存分狩りまくりましょう。巨大シンボルや水魔と呼ばれる強敵が徘徊したり、本筋とは無関係の場所にも小さなイベントが仕込まれていたりと細かな探索要素も詰め込まれています。


ギルド

この世界の各地には諜報・鍛冶・図書・印術・戦術の5種類のギルドが存在し、武器防具の開発や戦闘時に役立つ支援効果を得ることができます。
物語中盤になると100人以上いるNPCを自由にリクルートし、大陸各地に自由にタワーを建設しギルドレベルを上げ大きく支援を広げることができます。が、これがまた悩ましい。新たな武器防具を開発するか、図書ギルドで冒険の強力なサポートをするのか。NPCは有限のため、ある程度メインの方向性を見据えるといいかも。



ちなみに戦術ギルドをレベル3にすることで技の封印が行えます。対象の技を封印することで戦闘で使用できなくなるものの、それ以外の技のパワーアップが可能です。封印の解除はいつでも可能な安心設計。技の並べ替えもできますが大量に技を覚えるゲームだけに使わない技を整理しつつ強化も行えるナイスなシステムは覚えておくといいかもしれません。


戦え、戦え、戦え!

武器装備

本作は武器7種のうち2つを装備できます。オーソドックスな剣、範囲攻撃に長けた槍、一撃の重い斧など種類は様々。地味に盾でも攻撃できるのが素敵。加えて術も覚えられるので選択の幅は無限大です。


陣形

本作は5人パーティですが、無鉄砲に戦う前に陣形を決めましょう。おおまかにアタック・ガード・サポートに分かれた3つのポジションと隊列を組み合わせ、9人の中から自由に編成できます。ステータス差は微々たるものなので好きなキャラを使って大丈夫。全員最前線で戦う脳筋プレイをするもよし、守りと回復メインの長期戦に長けたパーティを組むのも自由。

ぼくは長いことガードとサポートを1人ずつ、あとアタッカーのパーティ使ってました。やっぱりガード役がいるかいないかで安定度が段違い。序盤は攻撃もできる盾とかサイキョーじゃんなんて思ってましたが、後半になってくると全体攻撃や状態異常といった搦手が増えたこともあり戦術の見直しを余儀なくされました。やっぱり一筋縄ではいきません。


戦闘

雑魚敵は基本サクサク倒せますが油断していると死にかねない程よい緊張感があり、ボス戦はがっつり手応えのある厳しめなバランスに仕上がっています。戦闘不能に陥ると一時的に最大HPが減少するため、長期戦ではいかに死なせないか気を配りつつ技の消費SPを管理する必要があり戦い抜いたあとの心地よい疲れが気持ちいい。こうした数字のやり取りに一喜一憂するのはコマンドRPGの醍醐味ですね。

サガシリーズよろしく覚醒して新技を覚えるワクワクは健在、技にもレベルが存在し使えば使うほど強くなるやりこみ要素もあります。
バトルスピードを4倍速に設定すれば雑魚をシャシャシャって小気味いい攻撃モーションで瞬殺できるのでテンポが良く、ワールドマップから戦闘に突入しても戦闘BGMに遷移しないので耳が疲れることなく長々と戦闘を繰り返せます。


ファイナルストライク

ファイナルストライクと呼ばれるゲージを溜め武器を破壊して放つ必殺技は正に諸刃の剣。文字通りケタの違うダメージを叩き出します。序盤こそボスすら瞬殺できる一撃必殺レベルに強いのでおおざっぱなバランスに思えるかもしれませんが、ゲーム後半になればなるほど使いどころが肝心。敵の体力をある程度削りながら残り体力を予想しここぞとばかりに使用するが吉。強力だがトドメを刺せないと壊れた武器で攻撃し続けるジリ貧に陥るためリスクとリターンの激しい駆け引きが楽しめます。

敵の体力バーは表示されないので完全にで撃つことになるんですけど、元々のダメージ値が高いとはいえ高体力のボス相手にこれで思いのほか結構トドメ刺せるんですよ。もう後がないギリギリのところで放つ起死回生の必殺技で敵を打ち破れた快感は何物にも代え難い。戦闘バランスが適正だからこそ理不尽を感じることなく没頭できる面白さがたまりません。ちなみに壊れた武器は宿屋でカンタンに修復可能です。

戦闘を続けておこなう連戦ではよりヒリついたシチュエーションが堪能でき、そうした息の詰まる戦闘は物語を大きく盛り上げます。


成長要素

何度も戦闘を繰り返し得たタレントptで地道に成長していきましょう。ステータスを直に上げるものは存在しませんが、技の消費SPを減らしたり敵に気づかれにくくなるなど役立つものがいっぱいです。一朝一夕じゃ身につかない膨大なポイントが必要になるので育成の方向は計画的に。


本作の戦闘は武器・技・陣形の組み合わせだけを取っても格段に自由度が高いです。極端なゴリ押しは通用せず、パーティ全員分の装備なんてとてもじゃないが買えないので財布の紐をキッチリ締めて装備をやりくりする貧乏道中なバランスも面白さに一役買っています。道中何度かゲームオーバーになりながらも、ラスボスは強かったけどどうにか初見でいけたバランスなので詰まることはそう無いでしょう。

王道シナリオ

幻想水滸伝シリーズで有名な村山吉隆氏が描くシナリオでは気候の異なる5つの大陸を舞台に壮大な冒険が待ち受けます。



これ、面白いぞ。


実はあんまり期待してなかったんだけど面白い。しっかりとした王道の物語には世界観の細部に至るまで設定が存在し、過剰に押し付けがましいこともなく物語が進むほど静かに明かされていく丁寧な見せ方が分かりやすい。分かりづらい造語もないですし。


人間は魔族や妖魔に虐げられている設定なので暗い物語が続くと思いきや、魔族の姿はケモ耳尻尾、妖魔の顔は動物なのでさながらアニマル大行進。極端に陰鬱な悲壮感はありません。真面目な場面はしっかりとシリアスに締めつつもところどころにRPGのお約束をうまく捌いたユーモラスなシーンもあり思わずくすりと笑ってしまう温かな温度が印象的です。細かい分岐が非常に多く物語を自分で進めている感覚に浸りやすいのもポイント。
ギルドに加入するさまざまなNPCたちにもそれぞれ細かく台詞が存在し、この大勢が集う感じなどが凄く幻想水滸伝シリーズを彷彿とさせる出来で個人的にニヤリとしました。



本作のキャラクターにはボイスがありません。最近のゲームにしては随分無骨な作りです。まぁボイスがあるとどうしてもイメージが引っ張られちゃいますからね。無くても脳内補正でどうとでもなりますし。

パーティキャラクターたちは皆なんら特別な使命を持たないふつうの人間達でありインチキメガネジーや天然お嬢様ビビアン、天才お子様教授ティギーちゃんなど設定的にはテンプレみが強いもののそれゆえに王道、誰もが前向きで明るく不快感は感じません。個人的に一昔前のRPGみたくバルバローザという亜人が存在しているのも嬉しい。全然使わなかったですけど。気がつくとほぼ女性パーティになってましたハイ。




特に最大の特徴は
女性キャラクターたちが明るくかわいいこと。
皆リアクションが豊富で見ていて飽きることなく男性陣、引いては物語そのものグイグイ引っ張っていく力強さがあり、シナリオ運びが王道なぶんキャラクターのかけあいの賑やかさが引きたちます。おそらくボイスがあったらくどくなり過ぎてた気がするのでいい塩梅です。ティギーちゃんかわいい。
ローポリと侮るなかれ、しっかりと乳揺れが存在するなど開発陣の漢気を感じるこだわりも!ホントのホントにありがとう。

ムービー
ボイスの無いムービーはさすがに少し違和感がありますね。カットの移り変わりが早く文字が読みづらいのが気にかかります。

取り返しのつかない要素について

本作は技の取得やアイテム収集、シナリオの簡素な分岐など序盤から取り返しのつかない要素が非常に多く、敢えてやっているのは明白。僕自身そういうものだと割り切って遊んだのである程度楽しめたものの、ギルド関連はだいぶ窮屈に感じました。タワーは立て直せずギルドレベルを全てMAXにするのは不可能なため、新要素の解放がしづらいのでもっと自由に楽しみたかったです。周回ありきのバランスとはいえ、これら制限要素をRPGの懐かしき美徳と取るか朽ちた遊びづらさと取るかはその人次第でしょう。
これ以外にもモブを助けるか見捨てるかの分かりきった機能していない選択肢もしばしば存在するなど詰めの甘さも残ります。

ほかに気になったところ

本作の移動距離と敵エンカウントはなかなかどうして冒険している気にさせられる絶妙なバランスなのだが、何度も往復しているとさすがに移動速度がトロくさく思えてくるので倍速移動がほしかった。カメラには判定があり岩肌などの地形に触れると押されるような形で視点が下向くのがやや残念。

街の建物の入口に△アイコンが表示されるたびにピロピロ音が鳴るのはうるさい。

仲間との簡素な会話が画面左下に表示されるが、話者が変わるたびに会話ウィンドウがSE付きで開閉するのはやや鬱陶しい。会話自体は楽しいのだかバックログ無し、短文を何度もボタン送りする必要がある。

元が3DSの2画面をひとつに圧縮したもののどこか調整の甘さが目立つ。画面下にボタン説明がずらっと並ぶのは煩雑で見栄えが悪く、戦闘では技選択と詳細が一画面に収まっていないので詳細を開くと黒地と説明文が画面全体を覆うことに。リザルト画面も同様に黒地で味気ないのでもっと見栄えよくしてほしかった。連戦ボーナスはもう少し豪華でよかったかも。ドロップ率upとか。

ヘイト管理系のスキルはやり直しが効かないのが不便。技の封印同様切り替えがほしかった。陣形作成もメニューで出来てもよかったかも。

分量をそこそこ書きましたが、明確な不満と言うほどのレベルではなく多少気になったレベルです念のため。

まとめ

数多くの時限要素など一部遊びづらいといえるほど先祖返りをしてしまい個人的に反りが合わない部分もあったものの、今の時代こういうRPGがひとつくらいあってもいいじゃないかと開発者のこだわりが光る丁寧な出来栄え。なにより戦闘が面白いコマンドRPGの醍醐味が詰まった快作です。個人的にはあえて意図した隙を入れて「コレもしかして開発者の調整ミス見つけちゃったんじゃね?」とプレイヤーに勘違いさせてくれるようなボーナス狩場のあるRPGも好みですが、この見事な調整の前にそれを言うのはお門違いでしょう。



序盤こそチュートリアル的な意味合いが強く少々の野暮ったさを覚えるものの中盤を迎えるとガッと大きくシナリオ・システムともに自由度が広がります。街の数は最低限、ギルドタワーや高難易度ダンジョンはコピペでボリューム的には腹六分目といったところですが、最大限世界を広く見せようとするこの久しく忘れていた感覚が懐かしい。

グラフィックは粗くボイスも存在しないので派手さはありませんが、RPGのお約束を臭みなくユーモアに昇華しているのでキャラクター達はいきいきと動きます。戦闘の歯ごたえと物語の山場の調和したバランスが演出として巧みに機能しており、盛り上がる王道のシナリオをこれでもかというほど味わえます。

久しぶりに王道RPGをやりたいなら迷わずこれを遊べ!!!

と断言できるくらい本作はオススメです。




それでは今回はこのへんで。以上読んで頂きありがとうございました。